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量子力学 Ⅱ
波動力学入門
- 出版社在庫情報
- 在庫あり
- 初版年月日
- 2024年6月30日
- 書店発売日
- 2024年6月30日
- 登録日
- 2024年4月24日
- 最終更新日
- 2024年10月19日
紹介
「量子力学Ⅰ 行列力学入門」に続く第2弾
電子が波であるという発想をもとに、シュレーディンガーが提唱した波動方程式
その解を求めると謎に包まれていた原子内の電子軌道が次第に明らかになっていく
行列力学では難解を極めた水素原子の電子軌道が、見事に解明されていく、
その過程を本書でじっくり学んでほしい。
目次
はじめに ···················································· 3
第1章 電子の波動性 ·········································· 9
第2章 電子波の方程式 シュレーディンガー方程式の登場 ········· 16
2. 1. 波の方程式 17
2. 2. オイラーの公式と波の方程式 18
2. 3. シュレーディンガー方程式の導出 21
2. 4. 指数関数のべきは無次元数 25
2. 5. シュレーディンガー方程式の飛躍 27
補遺2-1 べき級数展開とオイラーの公式 28
A2. 1. 指数関数の展開 29
A2. 2. 三角関数 29
A2. 3. オイラーの公式 30
A2. 4. 複素平面と極形式 31
第3章 シュレーディンガー方程式による解法 無限井戸 ··········· 34
3. 1. 空間に閉じ込められた電子の運動 34
3. 2. エネルギーの量子化 37
3. 3. 波動関数の導出 40
3. 4. 確率解釈 42
3. 5. 波動関数の規格化 46
3. 6. 波動関数の直交性 47
3. 7. 重ね合わせの原理 51
第4章 シュレーディンガー方程式の解法 有限井戸 ··············· 54
4. 1. 有限井戸に閉じ込められた電子の運動 54
4. 2. 超越方程式 60
4. 2. 1. 超越方程式 β= k tan(ka) の解 61
4. 2. 2. 超越方程式 β=‐k / tan(ka) の解 64
4. 3. 固有関数 65
4. 3. 1. β= k tan (ka)の場合の波動関数 67
4. 3. 2. β=‐k / tan (ka)の場合の波動関数 71
4. 3. 3. エネルギー準位の高い波動関数 74
4. 4. 波動関数の規格化 76
補遺4-1 余因子展開 85
第5章 トンネル効果 ·········································· 90
第6章 演算子 ················································ 101
6. 1. 量子力学における演算子 102
6. 2. 運動量演算子 103
6. 3. 位置演算子 104
6. 4. 正準交換関係 106
6. 5. エネルギー演算子 108
6. 6. 固有値と期待値 109
6. 7. 期待値 112
6. 8. エルミート演算子 116
第7章 不確定性原理 ·········································· 119
7. 1. 無限井戸による考察 120
7. 2. 期待値による考察 122
7. 3. シュワルツの不等式と不確定性関係 126
7. 4. 演算子の可換性と不確定性 132
第8章 調和振動子 ············································ 134
8. 1. 調和振動子のシュレーディンガー方程式 134
8. 2. エルミートの微分方程式 137
8. 3. 波動関数の規格化 143
補遺8-1 エルミート多項式 152
A8. 1. 母関数 152
A8. 2. エルミートの微分方程式の導出 154
A8. 3. エルミート多項式の規格化因子 158
A8. 4. エルミート多項式の直交性 160
第9章 極座標のラプラシアン ·································· 162
第10章 水素原子のシュレーディンガー方程式Ⅰ──変数分離 ····· 173
10. 1. ポテンシャルエネルギーの導出 173
10. 2. 変数分離 174
10. 3. 角度関数の分離 177
10. 4. 変数分離した方程式 181
第11章 水素原子のシュレーディンガー方程式 Ⅱ──動径方向の方程式
····························· 183
11. 1. 動径方向のシュレーディンガー方程式 183
11. 2. ラゲールの陪微分方程式 190
11. 3. ラゲール陪多項式 192
11. 4. 波動関数の規格化 196
11. 5. 動径方向の波動関数 201
11. 6. 動径分布関数 206
補遺11-1 ラゲール陪多項式 210
1A11. 1. ラゲールの微分方程式の解 210
1A11. 2. ラゲールの陪微分方程式 213
補遺11-2 ラゲール陪多項式の直交性 216
2A11. 1. 母関数 216
2A11. 2. ロドリーグの公式 219
2A11. 3. 漸化式 221
2A11. 4. ラゲール微分方程式 226
2A11. 5. ラゲール多項式の直交性 227
2A11. 6. ラゲール陪多項式と母関数 231
2A11. 7. ラゲール陪多項式の漸化式 233
2A11. 8. ラゲール陪多項式の直交性 234
補遺11-3 極座標の体積要素 242
第12章 水素原子のシュレーディンガー方程式 Ⅲ──角度分布関数
··································· 244
12. 1. 方位角 Φに関する波動方程式 244
12. 2. 天頂角 θに関する波動方程式 248
12. 2. 1. ルジャンドル微分方程式 250
12. 2. 2 ルジャンドルの陪微分方程式の解法 254
12. 2. 3. ルジャンドル陪多項式 259
12. 3. 規格化 259
12. 4. 球面調和関数 269
補遺12-1 ルジャンドルの微分方程式 277
A12. 1. 級数解法 277
A12. 2. ロドリーグの公式 279
A12. 3. ルジャンドル多項式の母関数と漸化式 281
第13章 水素原子の電子軌道のまとめ ··························· 285
13. 1. 波動関数と電子分布 285
13. 2. 水素原子の電子軌道 287
13. 3. s 軌道 289
13. 4. m=0 に対応した p 軌道 290
13. 5. m=±1 に対応したp 軌道 293
13. 6. d 軌道 296
13. 6. 1. m= 0 に対応したd 軌道 296
13. 6. 2. m=±1 に対応したd 軌道 297
13. 6. 3. m=±2 に対応したd 軌道 299
13. 7. 一般への拡張 302
おわりに ···················································· 303
前書きなど
はじめに
ハイゼンベルクらによって建設された行列力学は、原子内の電子の運動を記
述する学問として大成功を収めた。しかし、行列計算は多くの物理学者にとっ
て不慣れであっただけでなく、取り扱いが困難であった。
行列力学の誕生からまもなく、シュレーディンガーが微分方程式によって、
電子の運動が解析できるということを提唱する。
その手法が、行列力学とまったく異なっていたことから、当初は、懐疑の目
にさらされたが、すぐに、その手法が行列力学を凌駕するものであることが認
識されるようになるのである。これが、本書の主題の波動力学である。
波動力学が多くの物理学者に受け入れられた理由は、なじみのある微分方程
式を基本としているうえ、行列力学では解くことのできなかった水素原子の電
子軌道を見事に描き出すことができたからである。
ただし、これには背景がある。それは、シュレーディンガー方程式を解法す
るためには、かなり面倒な数学的操作が必要となるが、これら微分方程式は、
数多くの数学者によって、すでに解法されていたのである。この数学的所産の
おかげで、波動力学は確固たる地位を確立することになる。
量子力学は、現在、半導体工学や超伝導工学など、数多くの分野に波及効果
を及ぼしている。しかし、科学の基礎という観点から、その最も大きな貢献は、
原子構造を明らかにしたことであろう。しかも、その電子軌道は、ボーアが予
想した太陽系惑星のように、電子が原子核のまわりを周回するという描像とは、
まったく異なるものであった。
本書では、いかに水素原子の電子軌道が明らかにされたかの過程をできるだ
け詳細にたどることを目的とした。その理解のためには、数学の基礎として、
ラゲールの陪微分方程式やルジャンドルの陪微分方程式、その解であるラゲー
ル陪関数、ルジャンドル陪関数などの性質を知る必要がある。よって、かなり
のページ数を割いて、これら関数の説明を行った。
ただし、シュレーディンガー方程式によって、電子軌道の厳密解が得られる
のは水素原子のみである。これは、電子数が2 個以上になると、多体問題とな
り、解析解が得られなくなるためである。したがって、ヘリウムよりも重い元
素で提唱されている電子軌道は、水素原子の励起状態のp 軌道やd 軌道が多電
子原子にも適用できるとして提案されたものである。これを水素様原子と称す
る。
量子力学は、その限界を理解したうえで応用すれば、その利用価値は計り知
れない。また、ミクロの世界が直接デバイスの性質を左右するナノテクノロジ
ーが進展している現在、その重要性は、さらに増すであろう。
2024 年 夏 著者
村上雅人、飯田和昌、小林忍
版元から一言
電子軌道を明らかにした量子力学の威力がわかる!
本書では、シュレーディンガー方程式によって水素原子の電子軌道が
解明されていく過程をていねいに追った。
これらの微分方程式の解は、周期律表の原子すべての電子軌道を明ら
かにしていくのである
その理解に必要な数学の基礎として、ラゲール陪微分方程式やルジャン
ドル陪微分方程式などの性質をかなりのページ数を割いて説明
紙と鉛筆さえあれば、人類の至宝である量子力学の真髄が理解できる!
さあ、挑戦してみよう
関連リンク
上記内容は本書刊行時のものです。