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10年目の手記  瀬尾 夏美(著) - 生きのびるブックス
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10年目の手記  (ジュウネンメノシュキ) 震災体験を書く、よむ、編みなおす (シンサイタイケンヲカク ヨム アミナオス)

社会一般
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四六判
縦188mm 横128mm 厚さ15mm
208ページ
並製
価格 1,900円+税
ISBN
978-4-910790-02-2   COPY
ISBN 13
9784910790022   COPY
ISBN 10h
4-910790-02-0   COPY
ISBN 10
4910790020   COPY
出版者記号
910790   COPY
Cコード
C0095  
0:一般 0:単行本 95:日本文学、評論、随筆、その他
出版社在庫情報
在庫あり
初版年月日
2022年4月8日
書店発売日
登録日
2022年1月27日
最終更新日
2022年5月16日
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書評掲載情報

2022-06-14 週刊SPA!  6月21日・28日合併号
評者: 黒田義隆(on reading)
2022-06-04 東京新聞/中日新聞  夕刊
評者: 世古紘子
2022-05-21 西日本新聞    朝刊
評者: 【カリスマ書店員の激オシ本】城下康明(長崎市・ひとやすみ書店)
2022-04-08 中日新聞  
評者: 中日新聞・著者インタビュー(高森順子)
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紹介

東日本大震災から10年。これまで言葉にしてこなかった「震災」にまつわるエピソードを教えてください―ー。
そんな問いかけから「10年目の手記」プロジェクトは始まった。
本書は、暮らす土地も被災体験も様々な人々の手記をもとに、東北と縁を結んだアーティストと演出家、阪神大震災の手記を研究する社会心理学者、文化支援事業のプログラムオフィサーが語り合い、自身を重ね、手記の背景に思いを巡らせた記録である。他者の声に耳をすます実践がここにある。

目次

はじめに

【第一部 よむ 10年目の手記と往復エッセイ】

あなたは、いつ、どこで、どうやって書いたのですか 高森順子 
 ・先生とハムスター ハム太郎 
秘密とわからなさ 瀬尾夏美 
 ・空に聞く H・A
 ・あの日 海仙人 
読み手に〝秘密〞を託す 高森順子 
 ・二〇一一年三月十二日から、現在へ はっぱとおつきさま
〝子ども〞だった彼らが語り出すまで 瀬尾夏美 
 ・この先通行止め コンノユウキ 
過去を辿る 高森順子 
 ・消えた故郷 ほでなす
 ・もとちゃんへ 島津信子 
手向けの花と、手記 瀬尾夏美 
 ・スタート 西條成美
 ・兄の思い出 吉田健太 
ともに生きる 高森順子 
 ・祖母の日記 八木まどか
 ・こぼれていく時間を集めて 柳澤マサ
 ・東北の伴走者 echelon 
物語という火 瀬尾夏美 
 ・海から離れず生きた十年 小野春雄 

10年目の手記 全タイトル

【第二部 編みなおす 10年目をこえにする】

「10年目の手記」をつくる 繰り返し、かたちを変えて、読み返す 佐藤李青 
わたしが話しているような声 中村大地 
10年目をきくラジオ モノノーク
最終回 10年目の手記スペシャル 抄録 
配信記録
「とある窓」の写真について 

おわりに 声が声を呼ぶ 瀬尾夏美

前書きなど

はじめに



 あなたのなかに、誰かに伝えるには大切すぎたり、どのように語っても足りなかったり、反対に、人に話すにはささやかすぎたりして、これまで言葉にしてこなかった「震災」にまつわるエピソードはありませんか。

 二〇二〇年六月。わたしたちは東日本大震災の経験にまつわる「10年目の手記」の募集を始めた。字数は千二百字。名前は実名でも、ペンネームでも構わない。連絡先や年齢とともに、三百字の自己紹介や手記の背景を記したエピソードを添えること。ほかに求める応募資格はない。震災から十年の間で、「忘れられない」「忘れたくない」「覚えていたい」出来事について書いてほしい。募集の文面では、あえて「震災で直接的な体験をした人」も、「そうではないと感じている人」も応募してほしいと呼びかけた。

 震災から十年――時間が経ったいまだからこそ、言葉にできることがある。あの日から〝被災者〞と名指された人たちは多かれ少なかれ、〝被災者〞としての言葉を求められてきた。それによって生まれた言葉はかけがえがない。ただ、〝被災者〞という枠組みから、こぼれ落ち、無かったことにされた言葉もあったはずだ。一方で、震災に距離を感じていた人たちは、〝被災者〞という語り手を大切にしようと思うあまりに、口をつぐんできたかもしれない。「10年目の手記」という場を用意することで、きっと語り出してくれる人たちがいる。わたしたちはそう確信をしつつも、どれほどの手記が集まるかは、誰も予想しえなかった。

 結果的には呼びかけた側が驚くほどに、暮らす土地も被災体験も異なる手記が集まった。
届いた手記は、定期的にプロジェクトメンバーで読み合った。震災後に東北を拠点として創作を続けているアーティストの瀬尾夏美、「阪神大震災を記録しつづける会」の事務局長として震災の手記を実践的に研究してきた高森順子、仙台で設立された劇団「屋根裏ハイツ」を主宰する中村大地、東京から芸術文化を通した被災地支援事業に携わってきた佐藤李青。このメンバーに加え、五十年にわたって東北の民話を訪ね歩いてきた民話採訪者の小野和子さんを特別選考委員にお迎えした。

「10年目の手記」は二〇二一年五月までに七十五本をウェブサイトで公開した。その一部は、オンラインラジオ「10年目をきくラジオ モノノーク」で俳優による朗読も行った。手記を読んで、声にする。その声に触発されたように次の手記が届く。「10年目の手記」は書き手と読み手が応答し合うような活動となっていった。


 当然のように、集まった手記は一つとして同じものはない。手記を通して書き手の体験を想像し、追体験する。自分の体験に重ねて得られた共感から、想像を巡らせる。自分の体験との違いに圧倒され、想像の不可能性に触れる。手記に書かれた言葉を読むこと、そして、手記に書かれなかった言葉を想像するという営みには、誰かの経験を〝わたしたち〞で分かちもつためのヒントがあった。わたしたちが「10年目の手記」で実感したのは、誰かの体験を記した手記を〝読む〞ことの豊かさだった。この本の出発点は、ここにある。

 本書は、「よむ」と「編みなおす」の二部構成になっている。第一部「よむ」は、手記を読むことを巡る高森と瀬尾の往復エッセイから始まる。二人がどのように「10年目の手記」を読んだのか。緩やかな応答から、それぞれの経験を重ね合わせ、語っていく。そして、二人の語りに織り込まれた十三本の「10年目の手記」が続く。

「10年目の手記」は、「阪神大震災を記録しつづける会」の活動様式をなぞりながら、プロジェクトメンバーそれぞれの経験を重ねることで、立ち上げていった。震災の体験を記録に残し、より広く、より深く、共有することを目指す〝活動〞だった。第二部「編みなおす」では、「10年目の手記」という試みのありようを紐解いていく。

「10年目の手記」の企画の立ち上げからマネジメントを担当してきた佐藤が、どのように「10年目の手記」がつくられ、変化したのかを語る。そして、実践手法の特異点となった、ラジオでの手記朗読を演出してきた中村が、俳優との〝いい声〞をつくるプロセスを振り返る。併せて、「10年目の手記スペシャル」となったラジオ最終回の抄録も掲載した。

 手記を読むことは、他者の経験を知ることである。そこには喜びがあれば、悲しみがある。わかることがあれば、わかりえないことがある。過去を振り返ってみれば、さまざまな災禍を経験した人たちの語りが残されてきた。過去の語りは、いまも読まれることを待っている。そして、語りは日々新たに生み出され、これからも積み重なっていくだろう。本書を手にとったみなさんにとって、わたしたちの経験が、災禍を体験した他者の声に耳を傾けるレッスンとなれば幸いである。


二〇二二年三月
「10年目の手記」プロジェクトメンバー

版元から一言

大切なものを失った人へ。
そして、彼らの傍らにいたいと願う人へ――。

災害時代を生きる私たちにとって、いま最も大切な一冊。

著者プロフィール

瀬尾 夏美  (セオ ナツミ)  (

瀬尾夏美(アーティスト/一般社団法人NOOK)
1988年東京都生まれ。土地の人びとのことばと風景の記録を考えながら、絵や文章をつくっている。2012年より3年間、岩手県陸前高田市を拠点にし、対話の場づくりや作品制作を行う。2015年仙台市で、土地との協働を通した記録活動を行う一般社団法人NOOKを立ち上げる。ダンサーや映像作家との共同制作や、記録や福祉に関わる公共施設やNPOとの協働による展覧会やワークショップの企画も行っている。著書に『あわいゆくころ 陸前高田、震災後を生きる』(晶文社、2019年)、『二重のまち/交代地のうた』(書肆侃侃房、2021年)。

高森 順子  (タカモリ ジュンコ)  (

高森順子(社会心理学者/阪神大震災を記録しつづける会)
1984年兵庫県神戸市生まれ。大阪大学大学院人間科学研究科単位修得退学。博士(人間科学)。愛知淑徳大学コミュニティ・コラボレーションセンター助教。グループ・ダイナミックスの見地から阪神・淡路大震災の経験を表現する人々とともに実践的研究を行い、被災体験の分有のあり方について研究している。2014年に井植文化賞(報道出版部門)受賞。近著に「声なき被災者の経験を未災者に伝える」(岡部美香・青山太郎との共著『シリーズ人間科学6 越える・超える』、大阪大学出版会、2021年)。

佐藤 李青  (サトウ リセイ)  (

佐藤李青(アーツカウンシル東京 プログラムオフィサー)
1982年宮城県塩竈市生まれ。東京大学大学院人文社会系研究科博士課程満期退学。2011年6月より現職。都内事業の東京アートポイント計画、Tokyo Art Research Labに加えて、Art Support Tohoku-Tokyo(東京都による芸術文化を活用した被災地支援事業)を立ち上げから事業終了まで担当。ジャーナル『東北の風景をきく FIELD RECORDING』編集長(2017~2021年)。著書に『震災後、地図を片手に歩きはじめる』(アーツカウンシル東京、2021年)。

中村 大地  (ナカムラ ダイチ)  (

中村大地(作家、演出家/屋根裏ハイツ主宰)
1991年東京都生まれ。東北大学文学部卒。在学中に劇団「屋根裏ハイツ」を旗揚げし、8年間仙台を拠点に活動。2018年より東京在住。人が生き抜くために必要な「役立つ演劇」を志向する。『ここは出口ではない』で第2回人間座「田畑実戯曲賞」を受賞。「利賀演劇人コンクール2019」ではチェーホフ『桜の園』を上演し、観客賞受賞、優秀演出家賞一席となる。近年は小説の執筆など活動の幅を広げている。一般社団法人NOOKのメンバーとしても活動。2020年度ACY-U39アーティストフェローシップ。

13人の手記執筆者  (ジュウサンニンノシュキシッピツシャ)  (

13人の手記執筆者 
Art Support Tohoku-Tokyoの企画として実施したプロジェクト「10年目の手記」(企画運営:一般社団法人NOOK、主催:東京都、公益財団法人東京都歴史文化財団 アーツカウンシル東京)のために、東日本大震災の経験にまつわる手記を執筆。

上記内容は本書刊行時のものです。