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リチウムイオン電池・全固体電池の材料技術-プロセス・評価技術まで- 櫻井 庸司(著/文 | 編集) - 科学情報出版
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リチウムイオン電池・全固体電池の材料技術-プロセス・評価技術まで- (リチウムイオンデンチゼンコタイデンチノザイリョウギジュツプロセスヒョウカギジュツマデ)

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A5判
315ページ
定価 4,500円+税
ISBN
978-4-910558-06-6   COPY
ISBN 13
9784910558066   COPY
ISBN 10h
4-910558-06-3   COPY
ISBN 10
4910558063   COPY
出版者記号
910558   COPY
Cコード
C3054  
3:専門 0:単行本 54:電気
出版社在庫情報
不明
書店発売日
登録日
2021年11月16日
最終更新日
2021年11月16日
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紹介

 リチウムイオン電池の研究・開発・実用化・利用に携わっている多くの研究者・技術者にとっての最近の朗報は、リチウムイオン電池の開発に貢献したJ.B. Goodenough、M.S. Whittingham、吉野 彰の3 氏が2019 年
にノーベル化学賞を受賞したことであろう。その受賞理由は一般的に、携帯電話やスマートフォン・ノートパソコンなどの電源として必要不可欠なリチウムイオン電池の開発に成功し、利便性の高い世の中にした貢献に対して授与された、と報道されている。一方ノーベル賞選考委員会の公式発表にはこれに加えて、「彼らの仕事を通して、彼らはワイヤレスで化石燃料に頼らない社会になる状況を作り出し、人類に大きな恩恵をもたらした。」という表現で、その真意がしっかりと刻まれている。つまり、化石エネルギー消費社会からの脱却・地球環境問題解決に資する有効な手段としてリチウムイオン電池を捉え、今後の更なる寄与に対する期待も込めてのノーベル化学賞授与とも言えよう。
 リチウムイオン電池は1991 年に実用化されて以降、その高いエネルギー密度を背景にして、モバイル端末を皮切りに電動工具や自動車用電源などに適用領域を広げ、現在の社会になくてはならない二次電池として確固たる地位を築いている。今後はさらに、全世界的な課題となっている地球温暖化防止に必要とされている太陽光・風力などの再生可能エネルギーの普及・促進を加速するエネルギー貯蔵デバイスとしての活躍が期待されている。
 本書は、上記のように今後ますます利用シーンが拡大するであろうリチウムイオン電池に興味がある方はもとより、これからリチウムイオン電池や全固体電池の研究・開発に携わる、ないし、手掛け始めた方々を主な読者として想定し、執筆している。発刊の狙いとしては、様々な合成手法で実際に電池材料を合成し、多様なプロセスで電極を作製して電極材料の物理化学特性・電気化学特性を評価するにあたり、これら一連の項目をまとめて平易に書かれた本がほとんどないのが現状と思われたため、この状況に対応した技術書の発刊を目指した。そのため、数ある電池の中でのリチウムイオン電池の位置付けやその開発経緯に加えて、作動原理や構成材料・プロセス技術・評価技術の基礎を概説している。単なる技術的説明にとどまらず、筆者らが研究現場で実際に利用している無料データベース・ソフトウェア情報や実験ノウハウなどの有用情報も盛り込んでいる。特に、電池特性の主な決定要素である電池材料の説明においては、その材料が開発された学術的背景や他の材料との相互関連性についても触れた。本書では、電池の専門家が求めるかなり高度な技術情報はあえて掲載していないが、より深い内容を知りたい読者に向けては、総説を含む数多くの参考文献情報を載せている。
 本書がリチウムイオン電池や全固体電池関連の研究・開発業務に携わる方々になんらかの新たな知見を提供し、あるいは、一般読者の知的好奇心を満たす一助になるようであれば、筆者らの望外の喜びである。

目次

目次

第1章 リチウムイオン電池とは
1.1 各種電池の種類と特徴
1.2 二次電池の種類と特徴
1.3 リチウムイオン電池の基本構成と動作原理
1.4 リチウムイオン電池の課題

第2章 リチウムイオン電池の開発経緯と動向
2.1 リチウムイオン電池誕生までの歴史
2.2 リチウムイオン電池の最近の研究開発動向

第3章 リチウムイオン電池の主な構成材料
3.1 はじめに
3.2 負極材料
3.2.1 負極材料の反応機構による分類
3.2.2 挿入脱離反応
3.2.3 合金化/脱合金化反応
3.2.4 可逆的コンバージョン反応
3.2.5 不可逆的コンバージョン反応を経由した可逆的合金化/脱合金化反応
3.2.6 挿入反応を経由した可逆的コンバージョン反応
3.2.7 不可逆容量補償用リチウム源添加方法
3.3 正極材料
3.3.1 層状酸化物系正極
3.3.2 スピネル系正極
3.3.3 ポリアニオン系正極
3.3.4 Li過剰カチオン不規則配列岩塩型正極
3.4 電解質材料
3.4.1 有機溶媒系電解液(有機電解液)
3.4.2 イオン液体系電解液
3.4.3 無機固体電解質

第4章 プロセス技術
4.1 各種電池材料合成法
4.1.1 固相プロセスによる材料合成法
4.1.2 液相プロセスによる材料合成法
4.1.3 気相プロセスによる材料合成法
4.2 電極材料改質技術
4.2.1 他元素置換
4.2.2 イオン交換
4.2.3 異種材料表面被覆
4.2.4 コンポジット化
4.2.5 静電相互作用による粒子集積技術
4.2.6 中空球状化
4.2.7 異種材料内包
4.3 電極作製法(乾式プロセス)
4.3.1 結着材を用いた合剤電極作製
4.3.2 パルスレーザー蒸着法による電極作製
4.3.3 スパッタリング法による電極作製
4.3.4 エアロゾルデポジション法による電極作製
4.4 電極作製法(湿式プロセス)
4.4.1 ゾル-ゲル法
4.4.2 電気泳動堆積(EPD)法
4.4.3 塗布法
4.5 全固体電池用固体電解質合成法
4.5.1 固相反応法
4.5.2 メカノケミカル合成法
4.5.3 融液急冷法
4.5.4 ゾル-ゲル法
4.5.5 ソルボサーマル法・水熱合成法
4.5.6 硫化物系に対する溶液・懸濁液法
4.5.7 気相法
4.6 全固体電池用固体電解質・電極複合体形成法
4.6.1 薄膜形成技術による固体電解質の薄膜化
4.6.2 粉末加圧成形および焼結による固体電解質試料の作製
4.6.3 粉末加圧成形および一括焼結による電極複合体の作製
4.6.4 テープキャスティング法による固体電解質シートの成形
4.6.5 エアロゾルデポジション法を用いた電極複合体厚膜作製

第5章 評価技術
5.1 電極材料の電気化学的反応性スクリーニング(化学的Li化・脱Li化)
5.1.1 有機溶媒中での化学的Li化・脱Li化に使われる代表的反応試薬
5.1.2 有機溶媒中での一般的な化学的Li化・脱Li化プロセス
5.1.3 有機溶媒中での化学的Li化・脱Li化の反応条件依存性
5.1.4 水溶液中での化学的脱Li化
5.2 物理化学特性
5.2.1 回折法
5.2.2 顕微鏡法
5.2.3 分光法
5.2.4 熱分析法
5.2.5 粉体の評価法
5.3 電気的特性
5.3.1 電子伝導率
5.3.2 イオン伝導率
5.4 機械的特性
5.4.1 要素材料の力学的特性評価
5.4.2 インデンテーション試験による物性測定
5.4.3 球形圧子を用いたインデンテーション試験
5.4.4 鋭角圧子を用いたインデンテーション試験
5.4.5 破壊挙動
5.4.6 まとめ
5.5 電気化学特性
5.5.1 テストセルの作製方法
5.5.2 電気化学窓(電位窓)測定
5.5.3 定電流(CC)充放電試験、レート特性試験
5.5.4 定電流-定電圧(CC-CV)充放電試験
5.5.5 サイクリックボルタンメトリー(CV)
5.5.6 電気化学インピーダンス測定(EIS)
5.5.7 定電流間欠滴定測定法(GITT)
5.5.8 定電位間欠滴定測定法(PITT)
5.5.9 単一粒子測定法
5.5.10 各種in situ(operando)測定

著者プロフィール

櫻井 庸司  (サクライ ヨウジ)  (著/文 | 編集

豊橋技術科学大学 名誉教授
1978 年 電気通信大学応用電子工学科卒業、1980 年 同大学院修士課程修了。同年 日本電信電話公社(現NTT)に入社し、2007 年まで研究所にてさまざまな電気化学エネルギー変換デバイスの研究開発に従事。この間、1989 年 工学博士(京都大学)、1989 ~ 1992 年 Advanced Energy Technologies, Inc.(Canada), Research Scientist(出向)、1992 年 主幹研究員、2005 ~ 2007 年 東京工業大学 連携教授(兼任)。2007 年 豊橋技術科学大学電気・電子工学系(現 電気・電子情報工学系)教授に就任し、2021 年定年退職まで、リチウムイオン電池等各種電池の研究に従事。現在、豊橋技術科学大学 名誉教授、NEDO 技術委員、JST 共創の場形成支援プログラム(COI-NEXT)政策重点分野/ 環境エネルギー分野 アドバイザー、など。

上記内容は本書刊行時のものです。