書店員向け情報 HELP
出版者情報
書店注文情報
在庫ステータス
取引情報
東京情緒
はぐれがちなうつろいたちの三十六月
- 出版社在庫情報
- 在庫あり
- 初版年月日
- 2025年10月7日
- 書店発売日
- 2025年10月7日
- 登録日
- 2025年7月23日
- 最終更新日
- 2025年10月21日
書評掲載情報
| 2025-10-20 | 品川経済新聞 |
| MORE | |
| LESS | |
紹介
★書評&紹介掲載情報★
2025-10-20「品川経済新聞」
田中優子さん推薦!(江戸文化研究者、元法政大学総長)
「これは、私の日々だ。あなたの日々かも知れない。
今まで言葉にもしなかった風景、人、通り過ぎる気持ち。
この本を手に取って、何人もがつぶやくだろう。
私も、書いて、みようか、と。世界が変わるから。」
通勤路で目にする草花、オフィスで交わす何気ない言葉、リモートワーク中のふとした仕草。
夕立にけぶるビル街、駅に満ちる人波、ふと胸をかすめるあの日の記憶――。
ビジネスの現場で日々奮闘しながら、都市に生きる私たちが見落としがちな日常のかけら。
その一つひとつを、掌編小説のように、あるいは散文詩のように、優しく、繊細にすくい取った、36の物語。
静かに心に灯をともす、都会の日常への小さなオマージュ。
第1詩集。
目次
まえがき
第一章 そよぐ年
卯月 新緑の桜
皐月 街中華の複雑系
水無月 公園の異空
文月 閉まりかけのスーパー
葉月 入道雲を呑む
長月 滑空する香煙
神無月 萎縮と期待のはざまで
霜月 自転車の平熱
師走 十二月二十五日二十一時半 恵比寿駅
睦月 楕円球の臆病
如月 二月の暁
弥生 〇・七ミリのボールペン
第二章 にじむ年
卯月 四月の雪
皐月 カフェで孤独
水無月 朽ち濡れる紫陽花
文月 ラジオに懐く
葉月 夕立の胎内
長月 目黒駅のニュアンス
神無月 踏切でままならない
霜月 月蝕と飴
師走 工事現場の呆然
睦月 東京タワーの抱擁
如月 ホワイトボードの痕跡
弥生 夜更かしの人々
第三章 うつろう年
卯月 流浪の黄砂
皐月 ゴールデンウィークの重力
水無月 朝のシャワーで眠る
文月 七月の臨界
葉月 箸置きの結界
長月 郵便受けと猥雑と
神無月 空港の星座
霜月 リモートワークの稠密
師走 マンションとバーボンボトル
睦月 なすがままで坂道
如月 馴染みの店の懐味
弥生 アーケードで遊歩
あとがき
前書きなど
まえがき
ここに収められた三十六の小品には、非凡な個性で魅了する主人公も、涙腺が決壊するドラマチックな展開も、思わず息をのむスペクタクルも登場しない。
語られるのはむしろ、都市に生きていく中で、誰もがごく普通に体験する日常の些細な断片である。
通勤の途中でいつも目にする草花。オフィスでの他愛のない会話。リモートワークの仕草。ビル街に降る夕立。駅の雑踏。あるいは不意によぎる記憶。
私たちの生活は、一生は、そうした何気ないひとときが、無数に織り重なってできている。
せわしい日々の中で、つい見過ごされがちな小さな出来事。私たちはただ、そのひとつひとつに、いつもかすかなゆらめきが見え隠れしているのを、それとなく気づいている。そして、それが、とてもかけがえのないことにも。
ちょっとしたままならなさやつまずき。束の間の充足や安息。ふと湧き出ては消える期待や希望。
この大きな都市のそこかしこで、うつろう情緒。そのおぼろげな気配をそのまま掬い取れる言葉。それを探し求め、綴っているうちに、季節と旧暦のうつろいと重なっていった。そして、時には掌編小説のように、あるいは散文詩のように、はぐれがちなうつろいたちを素描する詩となった。随想を詩う、随想詩、とでも言えばいいのか。
都市の情緒。それは、そよいだり、滲んだりしながら、さらにその先へとうつろいゆく。その消息に緩やかに沿って連なる三年、三十六月。気ままに遊歩してほしい。
きっと、日々の暮らしのどこかと重なって響き合う一節が、隠れているはずだから。
上記内容は本書刊行時のものです。

