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シュテファン・バチウ 阪本 佳郎(著/文) - コトニ社
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シュテファン・バチウ (シュテファン バチウ) ある亡命詩人の生涯と海を越えた歌 (アルボウメイシジンノショウガイトウミヲコエタウタ)

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発行:コトニ社
四六判
縦194mm 横134mm 厚さ38mm
654ページ
上製
価格 4,500円+税
ISBN
978-4-910108-16-2   COPY
ISBN 13
9784910108162   COPY
ISBN 10h
4-910108-16-5   COPY
ISBN 10
4910108165   COPY
出版者記号
910108   COPY
Cコード
C0098  
0:一般 0:単行本 98:外国文学、その他
出版社在庫情報
在庫あり
初版年月日
2024年4月14日
書店発売日
登録日
2024年2月1日
最終更新日
2024年4月21日
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書評掲載情報

2024-09-01 現代詩手帖    2024年9月号
評者: 福島亮
2024-08-31 図書新聞    3654号
評者: みやこうせい
2024-07-01 地平    7月号/創刊号
評者: 今福龍太
2024-06-21 週刊読書人    3544号
評者: 管啓次郎
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紹介

世界をさまよう宿命を背負った詩人バチウの生涯と、大洋を越えてひろがる詩の連帯の〈世界文学〉をあきらかにする、本格評伝!

ルーマニアからスイス、ブラジルはリオデジャネイロ、ラテンアメリカをへて、シアトル、そしてハワイはホノルルへ――。

そのときどきの政治状況によって生を危ぶまれ、自由と真実をもとめ闘いながら、生涯を誠実な言葉とともに旅すること(亡命)を選んだ詩人バチウ。太平洋の離れにある群島から、海と大陸をこえて世界のあらゆる土地の詩人や作家、芸術家たちを結び、詩にもとづく連帯のネットワークを織りあげた。

詩誌「MELE」(ハワイ語で「詩や歌、祈り」)は、国家や民族の境界に隔てられるはるか手前で、一人ひとりがその生を凝集した言葉を交わしあってできたもの。詩の贈与交換をもとにした小さき〈世界文学〉が、知られざる海にひろがっていた。

世界の周縁に生きた彼を知るものはもはや数少ない。日本に数名、世界を見渡してもごくわずか。しかし彼の成し遂げた仕事の数々は、分断と衝突に満ちた私たちの時代へ、忘れてはならないことを教えている。

本書は、詩人の生きた土地々々へ実際に足を運び、散逸した資料を集め、知人や友人への聞き取りを合わせて研究した成果である。温かみある詩的文体でその生涯と広大にひろがる詩のネットワークを精緻にたどった、世界で初めてのシュテファン・バチウ評伝。

第一部は、ルーマニアからハワイにいたる道行きのなかで失われた時、土地、人々への〈郷愁〉”Dor, Saudade, Aloha”を描きながら、つねに詩とともにあったその生涯を緻密に追った心にせまる伝記。

第二部は、バチウの膨大な業績のなかでもとりわけ重要な詩誌「MELE International Poetry Letter」に焦点をあてる。
その世界大の詩の連帯のネットワークに参加した詩人たちの作品を具体的に取り上げ、それぞれの土地の文学や政治にいかなる価値をもったのかあきらかにする。多なる世界の言葉がひとところに響く複数性の場としてMELEを描きだす。

〈MELE、太平洋は蒼海の彼方に浮かぶ群島から、世界へむけて差し出された手紙――その差出人にも宛名にも、詩が自由と真実、行動、そして革命であることを信じて疑わない、すべてのものたちの名が記されてゆくであろう手紙。そして銘々の渚に立ち、我々は歌う〉(「MELE」のマニフェストより)

目次

手紙Ⅰ



第一部 追想的評伝――シュテファン・バチウの詩の生涯とその〈郷愁〉
 第一章 追想的評伝――「潮の泡はここにたたずみ」Aquí yace la espuma
 第二章 ルーマニア――ブラショフ一九一八―一九三七
 第三章 ルーマニア――ブクレシュティ一九三七―一九四六
 第四章 スイス――ベルン一九四六―一九四九
 第五章 ブラジル――リオデジャネイロ一九四九―一九六二
 第六章 アメリカ――シアトル一九六二―一九六四
 第七章 ハワイ――ホノルル一九六四―一九九三

手紙Ⅱ

第二部 「MELE 詩の国際便」とシュテファン・バチウの「詩の親密圏」
 第一章 自由・真実・行動・革命のうた
 第二章 オウィディウスの末裔たち――ヴィンティラ・ホリア、アンドレイ・コドレスク
 第三章 ウルムズの「寓話」のもとで――ミラ・シミアン・バチウ、ヴィクトル・ヴァレリウ・マルティネスク
 第四章 シャルロ父子のハワイ 島と海と人への憧憬、交感の記憶――ジャン・シャルロ、ドロシー・カハナヌイ、ダリル・ケオラ・カバクンガン、ジョン・シャルロ
 第五章 再び言語が芽吹くための種 ラリー・カウアノエ・キムラのハワイ語詩――ラリー・カウアノエ・キムラ
 第六章 抗う詩、交わされる霊性――トマス・マートン、パブロ・アントニオ・クアドラ
 第七章 リオデジャネイロへのアロハ、路上の石に秘めたサウダージ――カルロス・ドゥルモン・ジ・アンドラージ、バッハ・マイ・ファム・ラーション
 第八章 群島を行き交う希求の手紙

手紙Ⅲ

結びに代えて

〈付録〉『千を超える四行詩』序文 イオアナ・マルジネアヌ・バチウ

謝辞

シュテファン・バチウ著作一覧
主要引用・参考文献リスト

前書きなど

(本書「序」の冒頭)

詩人シュテファン・バチウと詩誌MELE: International Poetry Letter

 今日、私たちの下へ毎日のように災厄を告げる報せが届く。戦火に蹂躙され逃げ惑う人々、紛争や政治的暴力を逃れ国境へ押し寄せる難民たち、大火に消えゆく森林、大潮とともに海へ呑まれようとする島々、滅びゆく夥しい種の生きものたち、人の命を脅かし社会に分断をもたらし機能不全に陥らせるウイルス。雪崩のように「世界」へと襲いかかる災厄は、世界同時的に中継・シェア・拡散されて、ある臨界へ、終末へと、ともに向かっているかのような予感すら私たちに抱かせる。現代は、黙示録的な時代として思考されうるのかもしれない。
 しかし「世界」とは、ある単一の総体であるはずはなく、個別の時間・場所・存在の関係性から開かれる無数の世界の響きあいであり、それぞれが「他者」の物語に対して想いを添えねば――あるいは、添えたとしても――理解しえない混沌でもある。いかに細やかなものでも、私たち一人ひとりに日々生きることの物語があり、同じく、この世界をともにしている無数の「他者」にも物語がある。いま見知らぬ遠くに――あるいは近くに――いる「他者」へ、想い致すことがいかにしてできるのだろうか。



 シュテファン・バチウŞtefan Baciu(一九一八―一九九三)は、歴史の災厄に追い立てられ、ひろく世界を旅した、知られざる流謫の詩人である。
 ルーマニアというヨーロッパの辺境に息づく民話・伝承世界の霊性を抱いて旅立ち、ブラジル・ラテンアメリカの土着の祝祭的感性とそれを呼応させ、ハワイでは豊穣の海と火山、島の大地へと祈る神話宇宙をくぐり抜け、詩を紡いだバチウ。苦難に翻弄され、事毎に移動を余儀なくされながらも、断ち切られる土地や人々との関係性を、〈郷愁〉とともに言葉にして蘇らせつつ、それを新たに出遭う世界へと結びつけ詩とすることで、歴史の災厄を生き延びた。その営みは、詩人ひとりに依るものではなく、亡命の旅の各地で友情を結んだ朋友たちとの詩の連帯に基づくものでもあった。彼は遍歴において出遇った「他者」の物語のひとつひとつに心を傾け、魂をかけてそれらを自らの詩世界に震わせ、響かせた。そうすることで拓かれる未来をもとめようとした希求の人だった。

 バチウの肩書きは多岐にわたる。詩人、批評家、ジャーナリスト、アンソロジスト、翻訳家、外交官。東欧の辺境国ルーマニアはトランシルヴァニアの文化都市ブラショフに生まれ、若くして周囲の戦間期を代表する詩人となった。しかし、第二次世界大戦後台頭した共産主義政権から追われるようにスイスへと逃れ、その後ブラジルへ亡命した。
 リオデジャネイロでも翻訳家、詩人として精力的に執筆する傍ら、ジャーナリストとして職を得てラテン・アメリカ諸国を歴訪。各国の有力紙にて軍事政権や抑圧的体制を糾弾、政治難民や亡命者の保護のためにペンを振るった。中南米での十数年を経たのちシアトルにて大学の教授職に請われた。リオへ戻るつもりであったものの、ブラジルにてクーデタが勃発、カステロ・ブランコ将軍による軍事独裁がしかれる。愛するリオへの帰還を断念し、ハワイはホノルルへと移り住んだ。ハワイ大学マノア校でラテンアメリカ文学の教授となる。ハワイから、ラテンアメリカの数々のメディアのためにスペイン語で、夥しい記事を執筆・寄稿した。ヨーロッパへはドイツ語やルーマニア語、イタリア語で書くこともあった。詩は、ルーマニア語、ドイツ語、ポルトガル語、スペイン
語、時に英語で書き、数々の翻訳もおこなった。一九九三年、祖国のルーマニア、遍歴の途上で出会った土地々々、友人たちのことを想いつつ、ハワイ群島にて客死した。
 生涯をつうじて六カ国語で一〇〇冊以上にわたって詩、評論、伝記、自伝、詞花集を世に出すなど、浩瀚な仕事を為したバチウ。政治的にもルーマニアのみならず中南米諸国の軍政や独裁政権などの抑圧的機構に対して、言論において自由を求め果敢に闘った経歴をもつ。書かれた新聞記事は五〇〇〇とも七〇〇〇ともいう正確な数字が分からないほど膨大な数にのぼる。にもかかわらず、この人物は今日祖国ルーマニアを含めて世界のどこにおいても十分に顧みられているとは言い難い、忘却の淵にある詩人である。

著者プロフィール

阪本 佳郎  (サカモト ヨシロウ)  (著/文

1984年、大阪生まれ。2020年、東京外国語大学大学院博士後期課程修了(学術博士 PhD.)。詩人シュテファン・バチウの足跡を追って、ルーマニア(バベシュ・ボヤイ大学文学部客員研究員[2015年3月-9月])、スイス(チューリッヒ大学ロマンス語圏研究所客員研究員[2015年10月-2016年3月)、ハワイ(ハワイ大学マノア校伝記文学研究所客員研究員/皇太子明仁親王奨学生[2017-2019])と移動を続けて調査。バチウと親交を結んだ人々、詩人の愛した土地を訪ね歩き、「MELE:International Poetry Letter」をはじめ散逸した資料を収集。2018年バチウ生誕100周年の記念祭をホノルルと京都にて主催。バチウの足跡を辿る中で出遭った各地の詩人や作家、芸術家たちより作品を募ってできた詩誌「 MELE:ARCHIPELAGO」をバチウへのオマージュとして2019年に刊行した。2024年4月より立命館大学非常勤講師

上記内容は本書刊行時のものです。