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殉義の星と輝かん
百年生きる「解放歌」と柴田啓蔵
- 出版社在庫情報
- 在庫あり
- 初版年月日
- 2022年5月20日
- 書店発売日
- 2022年5月20日
- 登録日
- 2022年5月2日
- 最終更新日
- 2022年6月7日
紹介
「殉義の星」とは、正義のために死した人間が生まれ変わる天空の星のこと。柴田啓蔵(1901~88年)の造語であり、彼が作詞した「解放歌」(1923年)の最後を飾る詞である。作詞に影響を与えた「全国水平社宣言」(1922年)は、ユネスコ世界記憶遺産(アジア太平洋地域)に登録されている。
柴田は明治34年、九州・筑豊の被差別部落に生まれ、稀有の才能を幼少期から発揮した。島崎藤村『破戒』時代の差別の中、九州を逃れて旧制松山高等学校に進学。文学をめざしていたが、大正11年、全国水平社創立大会の開催(京都)を知った後、人間の自由・平等・博愛をめざして水平社運動に飛び込む──。
その後、数々の挫折、数奇な運命を経て、70歳を過ぎて以降の記憶・記録・資料をもとに、本書は纏められた。次の地球百年への希望を求め、人間解放をめざす人々に向けた書である。
≪全国水平社・全九州水平社創立百周年記念出版≫
目次
序 文
第一章 「解放歌」に込めた思い:柴田啓蔵自身による文章
第二章 柴田啓蔵の生活史
第三章 柴田啓蔵作詞「解放歌」の移り変わり
:柴田資料・「水平新聞」・「水平月報」・「解放新聞」などを中心として
第四章 全国・全九州水平社、「解放歌」の授業・啓発教材
第五章 柴田啓蔵の年譜・事蹟目録
付録資料/編集後記
前書きなど
【序文より抜粋】
九州の福岡県・筑豊で生を受け、その地に眠った柴田啓蔵。彼の名は、「解放歌」(水平歌)作詞者として被差別部落解放運動関係者に知られる。そしてこの歌は、今も全国の部落解放運動や革命歌で歌い続けられている。さらに、柴田は百年前の一九二二(大正十一)年三月三日、全国水平社創立(京都府岡崎公会堂)を新聞報道で知り、その一年後、九州での全九州水平社設立を主導した人物としても知られる。全国水平社は関西や関東の被差別部落出身者たちによって結成され、燎原の火の如く、中国・四国や九州にも広がっていく。そして九州・福岡は運動を推進する多くのリーダーを産んだ。
戦前・全国水平社の時代、そして戦後・民主主義の時代、差別にあらがい、おのれの解放を実現させることがいかに困難であるかを、柴田啓蔵の生き様は私たちに教えてくれる。
「解放歌」の曲は、当時東京大学新人会の影響で広がっていた第一高等学校の「ああ玉杯に花受けて」。歌詞は当時二十一歳の若き柴田がそれまでの知的教養による渾身の力を集中させ、一年間かけ、凝縮・作詞したものである。
上記内容は本書刊行時のものです。