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「ある女工記」DVD BOOK
葉山嘉樹『淫売婦』、小説から映画へ
- 出版社在庫情報
- 在庫あり
- 初版年月日
- 2020年9月10日
- 書店発売日
- 2020年9月18日
- 登録日
- 2020年9月14日
- 最終更新日
- 2020年9月25日
紹介
葉山嘉樹「淫売婦」初の映画化。コルカタ国際短編映画祭特別賞,ニース国際映画祭主要5部門ノミネートなど国際映画祭で高い評価を受けた福岡発の映画が,遂にDVD化! 初回,限定700部発売。映画鑑賞の手引きともなる解説・論考及び原作「淫売婦」,「セメント樽の中の手紙」を収録したブックレット。
■DVD制作・著作:球フィルムス/映画「淫売婦(仮)」製作委員会
■協力:三人の会/福岡県人権研究所
「ある女工記」の舞台は明治・大正・昭和にかけて,日本最大の産炭地と工業地帯を有する北九州。さまざまな製品が,人が,門司港より世界へ出航していった。人々がめまぐるしく往来する港町の淫売宿で南洋船員は瀕死の淫売婦に出会った。持てる者と持たざる者,餓えや貧しさや境遇に抗い,女工は労働者はゴロツキはいかに時代を生きるのか?
葉山嘉樹の故郷・福岡県みやこ町をはじめ築上町,北九州市,行橋市,田川郡赤村,九州大学でオールロケを敢行。
主演は『独裁者、古賀。』,『死んだ目をした少年』,舞台『惡の華』の清水尚弥。『あの娘、早くババアになればいいのに』,『キネマ純情』ノーメイクスの中村朝佳。『恋の渦』,『下衆の愛』北九州出身の後藤ユウミ。『めんたいぴりり』の神田朝香。行橋の劇団風雷望から門田大輔,尾形公,劇団ショーマンシップから仲谷一志。14+の村上差斗志。山本由貴ら福岡のスタッフ・キャストによる福岡発の映画を世界へ発信する。公式ホームページ > http://jyokoki.com
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■執筆者紹介
西谷 郁(にしたに・かおる)……映画『ある女工記』・『葉山嘉樹「セメント樽の中の手紙」』プロデューサー。アジア映画研究。日本映像学会理事。福岡インディペンデント映画祭を設立(現顧問)。天神アピチャッポン・プロジェクト プロデューサー、『福岡』(チャン・リュル監督)共同プロデューサー。
児玉公広(こだま・きみひろ)……映画『ある女工記』・『葉山嘉樹「セメント樽の中の手紙」』脚本・監督。映像ディレクター。福岡県行橋市生まれ。西南学院大学経済学部卒業後、ドキュメンタリー映画制作会社、株式会社イワプロに助監督として入社。有明海・諫早湾干拓の自主ドキュメンタリー映画ほか各種記録映画の制作・配給を行う。一九九八年イワプロを独立、現在は球フィルムス代表。
秦 重雄(はた・しげお)……日本文学研究者。大阪府立高等学校教員。著書に『挑発ある文学史─誤読され続ける部落/ハンセン病文芸』(かもがわ出版)など。
坂口 博(さかぐち・ひろし)……火野葦平資料館館長。第四二回福岡市文学賞受賞。著書に『校書掃塵─坂口博の仕事』(二〇一六年、花書院)など。
浦田義和(うらた・よしかず)……佐賀大学名誉教授、久留米大学客員教授。日本近代文学。著書に『太宰治』(一九八六年、法政大学出版局)、『近代文学と〈南〉』(一九九二年、ロマン書房)、『占領と文学』(二〇〇七年、法政大学出版局)。詩人名「うら いちら」として詩集『いろはうた』(一九八八年、海風社)、詩集『日々割れ』(二〇一七年、あすら舎)など。
小正路淑泰(こしょうじ・としやす)……映画『ある女工記』・『葉山嘉樹「セメント樽の中の手紙」』共同プロデューサー。地域史研究者。編著に『堺利彦─初期社会主義の思想圏』(二〇一六、論創社)、『葉山嘉樹・真実を語る文学』(二〇一二、花乱社)など。
目次
架 橋 地域で映画を作る[西谷 郁]
「ある女工記」制作と活動のあゆみ
プロレタリア文学を映画化する:葉山嘉樹「淫売婦」から「ある女工記」へ[児玉公広]
姉の力、兄の力、そして妹の力:映画「ある女工記」批評[秦 重雄]
文芸映画の命運[坂口 博]
映画「ある女工記」を観て[浦田義和]
映画「ある女工記」に反映された史実[小正路淑泰]
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淫売婦 葉山嘉樹
セメント樽の中の手紙 葉山嘉樹
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執筆者紹介/初出一覧
前書きなど
京築(福岡県京都郡と築上郡の総称)で初めて本格的にロケーション撮影された『ある女工記』は、地元の有志に支えられ二〇一六年に完成した。小説を映画化することは“受難”のようなもので、読者が思い描く小説の世界に分け入ろうとする無謀な賭けかもしれない。しかし私たちは、小説で描かれている世界を映像で見てみたいという欲求が勝っていた。誰も映画化しないのなら、まずは自分たち地元の人間が映像化するしかない。この一念が映画化の原動力にもなった。
地元の俳優が劇場を飛び出しスクリーンで活躍できるきっかけを作りたかった。『ある女工記』は、地域に根づきこだわって活動を続けている俳優や劇団に協力を仰ぎ、快諾された。/
「淫売婦」の原作は横浜が舞台になっているが、ロケーションを葉山の故郷の京築や、葉山が闊歩したであろう北九州と門司港にこだわった。なぜなら、撮影地を探すロケハンで、北九州や京築を訪れる度に、葉山の望郷への思いや京築での足跡を感じ、北九州の人々にも葉山とその作品を知ってほしいと思ったからだ。
堺利彦は、一九三一年(昭和六)行橋市で農民労働学校を開校し、その校長に就任した。堺や鶴田と交流が深かった葉山は、農民労働学校のアドバイザーとして参加している。農民労働学校は当時の若者にとても人気があり、この時の地元の熱気を再現したいと思い農民労働学校が開校するシーンを描写した。/
二〇代の女性がなぜ肺病と癌になったのか。現在、日本の非正規雇用は二〇〇〇万人を超え、外国人労働者も一〇〇万人を越えている。「淫売婦」が書かれた一〇〇年前の状況と比べると、貧富の格差や地域の過疎化は悪化している。
今こそ葉山文学を読み語らうべきではないだろうか。葉山文学とこれからの生活を議論する架け橋として「ある女工記」があれば幸甚である。 (西谷郁「架橋 地域で映画を作る」より抜粋)
上記内容は本書刊行時のものです。