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香港 あなたはどこへ向かうのか
- 出版社在庫情報
- 在庫あり
- 初版年月日
- 2020年9月30日
- 書店発売日
- 2020年9月30日
- 登録日
- 2020年8月15日
- 最終更新日
- 2020年9月30日
紹介
英国植民地支配で生まれた自由なビジネス空間は、中国返還後50年間の「高度な自治」の約束のもと、自律をのぞむ「香港人」を育んできた。しかし近年、あからさまな暴力や司法を超えた法が、つぎつぎと言論や参加を抑えつけている。抗議や抵抗が激しさを増すと同時に、分断と格差もよりあらわになっていく――香港のさまざまな立ち位置にいる人たちは、未来をどう展望しているのだろう。主婦、ソーシャルワーカー、非常勤警察署員、大学院生、香港っ子日本人高校生、親中派年金生活者。中国で農村フィールドワークや人権派弁護士の支援を重ねてきた著者は、香港で暮らした日々を振り返り、旧友や師と再会した。暴力を、沈黙を、抵抗をどう思っているのか? 「敵」は誰なのか? 経済、政治、人的交流のエネルギーのせめぎあう東アジアで、台湾や日本の現在と重ね、問いの共有と対話を模索する、やわらかで熱い知性の省察。
目次
はじめに
1 スターリー・シスターズ
寮生活一九九六/再会ランチ二〇一九/WhatsAppでの告白/香港人を誇りに思う/世代を超えた動き/移民の街の新移民/警察署の内側で/教育・福祉・格差
2 暴力と非暴力の間
暴力の拡散とエスカレート/自由か売国か/禍港四人幫/アップルデイリーの創業者/黒ずくめの中学生/大学籠城/生卵攻撃とモラル
3 マスクとメディアと言論
マスクは違憲か合憲か/緊急事態/SNS上の攻防/河童くんの政治力/ウイルス制圧と権力/赤と緑の選挙戦
4 「敵」はどこにいるのか
政権批判と「社会秩序/『風傳媒』編集長の話/反浸透法と「帯風向」/境界を越えて書くこと/台湾海峡、両岸の家族/沈黙という不誠実/家族の物語、戦争の記憶を分かち合う
5 批判的思考と教育の中立性
白色テロの事態と移行期正義/景美と緑島の人権文化園区/野晒しの墓石/台湾の歴史教育「政治的中立規定があります」/台湾の高校で学ぶ「中国史」/ダーク・ヘリテージ/ガイドの力 共感と対話の場をひらく/暮らしの足元で 旧豊多摩監獄の門/問いに応えるには/対抗の知恵 主戦場はSNS/ライブ配信される暴力/全否定を避ける/通識教育は何を育むか/批判的分析の力量/香港っ子日本人
6 分断される社会
「香港人」とは誰か/格差と貧困/住宅難の中の新移民/アイデンティティ言説の政治/外国人家政婦たち/「民主はないが自由はある」/天安門事件の「暴徒」
7 つながっていたい
ある家族のホームステイ/「国家安全」の名の下に/削除、解散、解雇、亡命/恐怖とどう向き合うのか/動き続ける香港/人生の実践として/つながるために
おわりに
主要参考文献
注
著者紹介
前書きなど
ロンドンにいると明かした羅冠聰のフェイスブックの投稿を見て、私は思わず涙が出てしまった。
「私の罪が一体何なのかわからないし、そんなことは重要だとは思わない。おそらく私は香港を愛しすぎているのです」
*
周庭は国家安全維持法の施行に怯える心境をこのように話していた。
「私たちは命をかけて闘っています。将来には不安しかありません。来年私は生きているのでしょうか。人権、民主主義、自由を空気のように思っていてよいのでしょうか。なくなるとわかるのです。その価値が」
*
皮肉なことに、私は民主主義の国に生まれ育ったにもかかわらず、言論の自由の価値について深く考えるようになったのは、不屈の精神で表現の自由や法の支配を守ろうとする中国の友人たちと付き合うようになってからのことだ。
(本文より)
版元から一言
主婦、ソーシャルワーカー、非常勤警察署員、大学院生、香港っ子日本人高校生、親中派年金生活者。著者の人的なネットワークで、香港留学時代に交流した人々、その後の中国社会研究や人権派弁護士支援活動で培った人々の繋がりで、香港の今を考える。現代中国の政治文化や人々のリアリティを知る著者ならではの、生活者として、隣人としての目線で捉えた、さまざまな立場の苦悩や不安、抵抗の気概や知恵を通じて香港の今を知る一冊。香港と同じように大国中国や米国との政治かけひきを生きぬいてきた台湾の政治文化や、歴史を忘却する日本社会の課題をふまえることも、香港と出会い考えるために欠かせない。誠実で熱い著者の考察が、大文字の政治や歴史を、ちいさな主語・自分自身の生き方として捉え直す方法を教えてくれる。高校生にもぜひよんでほしい。
上記内容は本書刊行時のものです。