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レクチュア こころを使う
日常臨床のための逆転移入門
- 出版社在庫情報
- 在庫あり
- 初版年月日
- 2022年6月20日
- 書店発売日
- 2022年6月30日
- 登録日
- 2022年5月11日
- 最終更新日
- 2022年6月29日
書評掲載情報
2022-10-19 |
こころの科学
2022年11月号 評者: 堀川聡司 |
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紹介
こころの援助者も、こころをもった人間なので、相手に対してネガティブな気持や、ポジティブすぎる気持も抱いたりします。そうした“生きたこころ”を基本としていないならば、援助者のこころはバーンアウトしかねませんし“死んだ援助”にもなりかねません。ただし、生きたこころは取扱注意の“生もの”なので、それを《逆転移》として認識し、クライエントの益に供する営みが必要とされるのです。――本書では、対人援助職の誰もが扱いに戸惑う「みずからのこころ」の使い方を、5つの自験例をめぐって提案します。
目次
序 章 ことのはじまり
ケースA 耐え難いうんざり感――自閉スペクトラム症の成人女性
ケースB 言うわけにはいかない異様さ――不登校の思春期男子
ケースC 可憐な少女のもたらす苛立ち感――摂食障害の青年期女子
ケースD どうしようもない薄幸さ――買い物依存の主婦
ケースE 気圧される佇まい――抑うつ状態の青年実業家
○プロローグ
●第I部 逆転移とは何か――総論
第一章 逆転移論の始まり――克服されるべきものとして
第二章 コペルニクス的転換――無意識を探索する道具として
第三章 グループにおける発見――逆転移の臨床的意義
第四章 セラピストの基本姿勢――正常な逆転移
第五章 その後の逆転移論の流れ――認識的活用/表出的使用
●第II部 逆転移を使う実際――各論
第一章 こころを使う その壱――日本における多様な〈逆転移〉観
第二章 こころを使う その弐――諸外国のクラシカルな〈逆転移〉観をたどって
第三章 こころを使う その参――諸外国のより新しい〈逆転移〉観の展開
終 章 ことの顛末――臨床素材の行く末
ケースA 他者性の存在しない世界――分離を許されぬ怒りの逆転移
ケースB 迫害的相貌の世界――怖れおののいた逆転移
ケースC 可憐さの裏に潜むマゾヒズム――苛立ち焦らされた逆転移
ケースD 隠された自己愛――無力さとあっけにとられた逆転移
ケースE 子宮内回帰願望という死の本能――恥のうわ塗りの逆転移
○エピローグ
前書きなど
私は、これまで背景に控えていた「臨床感覚」をより前面に出した入門書を書こうと思うに至りました。そろそろ、陰の主役を表舞台に登場させたくなったからです。
そのことによって、理論や技術に留まらない臨床の“ライブさ”を、とりわけ若い人たちにお届けしたくなったからです。
――その臨床のライブさの肝となるのが、精神分析でいう《逆転移》のテーマです。
今回は逆転移が主役として躍り出ます。
版元から一言
【著者から ひと言】
私は今回、サポーティブな関わりの、その先の境域、すなわち、人と人が関わる本質を通しての「自己を知る」境域に、歩を進めたくなりました。
そのためには、“こころを使う“こととしての《逆転移》のテーマが、召喚される必要があったのです。
【著者から もうひと言】
援助者とて、こころをもった人間です。ですから、ネガティブな気持ももてば、逆にポジティブすぎる気持も抱いたりもします。
そうした“生きたこころ”を基本としていないならば、援助者のこころはバーンアウトしかねませんし、死んだ援助にもなりかねません。
ただし、生きたこころは、取扱注意の“生もの”ですので、きちんと《逆転移》として認識し、クライエントの益に供する営みが必要とされるのです。
【著者から さらにひと言】
お伝えしたかったのは、「逆転移の活かし方とは、それを通して患者の理解に供するばかりでなく、その理解が彼らのこの世での生き方に、いかに寄与しうるか」である、という点です。
……“こころの使い方”の射程は広くなっています。……いずれにせよ、私たちのこころは、「禍根群」の病理的世界の理解とともに、ささやかながらも、この世での“棲み処”を見出すためにも使われたいものだと思うのです。
上記内容は本書刊行時のものです。