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哀しむことができない
社会と深層のダイナミクス
- 出版社在庫情報
- 在庫あり
- 初版年月日
- 2022年3月30日
- 書店発売日
- 2022年4月8日
- 登録日
- 2022年2月21日
- 最終更新日
- 2022年4月8日
書評掲載情報
2022-12-24 |
東京新聞/中日新聞
朝刊 評者: 磯前大地(くまざわ書店八王子店) |
2022-10-13 |
心理臨床学研究
Vol.40 No.3 評者: 平井正三 |
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紹介
また「あの国」は… また「あの人物」が… といった絶望的な“繰り返し”は決してよそ事ではなく、他ならぬ「この社会」そして「この私」が胸に手をあてて顧みるべき振舞かもしれません。――本書では破壊的な反復の渦に注目することで、身近な「スケープゴート/同調圧力」の連鎖の問題から、絶えない戦争まで、“社会の心”を精神分析します。――そして、社会の心が「自らの傷を無かったことにする」危険に警鐘を鳴らし、個の心が「傷」に気づき“哀しむ”ため、声なき声に耳を傾けてもらうことの大切さを説きます。
目次
プロローグ
――境界が閉じること、開かれること
第一章 哀しむ、ということ
――フロイトの「喪の作業」
再体験の場にいること
もののけの成仏
第二章 哀しむ、ことができない
――ミッチャーリヒの「喪の不能」
思いどおりにしたい
集合的な心理的努力
過去の否認と反復
第三章 日本の中心に浮かぶ、緑の島へ
――現人神の喪失
精神構造を推し量って
神の人間宣言――三島由紀夫の『英霊の聲』
罪悪感について
第四章 罪の感覚、「すまない」物語
――北山修の「見るなの禁止」
神話的思考と社会的/内的構造
ジェンダー役割の固定化
いまもある「根の国」――村上春樹の『騎士団長殺し』
組織や社会のダイナミクス
第五章 思い起こすこと、そして哀しみ
――戦中世代の女性とのサイコセラピー
第六章 加害と被害、両方を生きる
――批判的思考にむけて
両方を生きる場
喪失の否認と躁的な防衛
精神分析的な戦後
エピローグ
――アジア・太平洋の精神分析
前書きなど
この本が、社会と深層のダイナミクスのなかで言葉が失われてしまった方々にとって、「あのときに何が起きていたのか?」を考えるきっかけとなり、言葉を回復し生き残っていくことを目指す一助になればと……。
また、大切な人を失って、時間が止まったように思われる日々を過ごしている方々、誰にも言えない傷つきを抱えて生きづらさを感じておられる方々と、ご一緒できればと願っています。
版元から一言
★
著者から ひと言
〇精神分析の創始者であるジグムント・フロイトは、人が自分にとって大切な人を失くしたときには、それを受け入れ、こなし、その人がいない世界で生きていくことを認めていく過程を経ると指摘し、それを“喪の作業”と名づけました。喪の作業を経ることで初めて、人はその人に対する情緒や感情を認め、“哀しむこと”ができる、と考えたのです。
〇そして、哀しみへと至る路が困難であることも彼は指摘しました。“哀しむこと”が不能となった場合、あるいはその作業を放棄した場合には、メランコリーという空虚へと落ち込むことを示したのです。
★★
著者から もうひと言
〇どうか、生きづらさを感じておられるときに、過度に自分のせいだと思わないでいただきたいのです。そこには、本書で述べてきたように、社会と深層のダイナミクスの渦があるかもしれないからです。
〇サイコセラピーは、その渦を無かったことにするわけでも、落ち込んでしまうわけでもなく、そこからご自身の心の深いところにある言葉を見つけ、声を発するためのお手伝いをすることができます。それは、ご自身の心の変化へとつながっていくかもしれませんし、ご自身の言葉で何かを社会に向けて発信していくきっかけとなるかもしれません。
関連リンク
https://kodachino.co.jp/books/978-4-909862-18-1-2/
上記内容は本書刊行時のものです。