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もの想うこころ 村井 雅美(著) - 木立の文庫
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もの想うこころ 生きづらさと共感 四つの物語

発行:木立の文庫
四六変型判
縦188mm 横116mm 厚さ12mm
重さ 160g
144ページ
上製
価格 2,200円+税
ISBN
978-4-909862-07-5
Cコード
C0011
一般 単行本 心理(学)
出版社在庫情報
在庫あり
初版年月日
2019年10月31日
書店発売日
登録日
2019年8月11日
最終更新日
2019年10月10日
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書評掲載情報

2019-12-22 読売新聞  朝刊
評者: 山内志朗(慶應義塾大学教授、倫理学者)

紹介

「奥歯の小さな穴ひとつにこころが詰まっている」

病気になると私たちは、そのことでこころが一杯になってしまいます。
そんな“からだの傷み”に溢れてしまった時、私たちは、
その現実を受け入れて立ち向かおうとするこころを、どこに得ることができるでしょう?

からだの傷みから沁み出る“こころの痛み”。
その苦悩をいっしょに理解しようとしてくれる人がどこかに居てくれると、
奥歯の穴という「とてつもない不幸」が、なんとか抱えられる不幸になる。
そんな経験を私たちは皆、もっているのではないでしょうか?

   ***   ***

それでは、目の前に「こんがらがった苦しみ」にさいなまれている人が居るとき、
私たちには何ができるでしょう? 
苦しみへの寄り添い方として、巷ではいろいろなアプローチが紹介されていますが、
この本では、新しい《共感》の可能性を、読者とともに捜します。

“記憶のはるか彼方にある情景”が浮かびあがり、その情景が二人のあいだで共有されるとき、
《生きづらさ》を生きる力が得られる。
――そうしたテーマをめぐって紡がれた
『からだの病いとこころの痛み』〔木立の文庫, 2019年〕のエッセンスを、
「四人」とのあいだの“内なるドキュメンタリー”として物語るのが、この本です。

目次

プロローグ:記憶の彼方に秘められた……


第一話 明日香 
    名づけられなかった声

第二話 みちる 
    絶たれた声

第三話 真 紀 
    出てこない声

第四話 理 香 
    寄る辺ない声


エピローグ:秘められた体験に耳を傾ける

前書きなど

〈まえがき〉より...


 みなさんも、病気になられたことがあるでしょう。病気を抱えながら懸命に日々を暮らしておられる方もいらっしゃるでしょう。
 病気になると、こころも元気がなくなります。身体の痛みやしびれ、倦怠感、その他さまざまな不調が続くと、こころも、そのことばかりを考えるようになり、不安に押しつぶされそうになります。自分の身体の状態にばかり関心が向いて、他の人や他のことについては、ほとんど考えられなくなるのです。
そのようななかでも、他の人が自分の病苦や痛みや恐怖に対して関心を向けてくれる時には、少しばかりその人に応じることができますが、そうでない時には、「自分の苦しみを誰もわかってくれない」と、こころを閉ざしてしまうことになります

 かつてW・ブッシュという人が、歯痛を患った自分の姿について、こう言ったそうです。「奥歯の小さな穴ひとつに心が詰まっている」〔Freud, S., 1914, p.128〕。
 そんな風に、病気になると私たちは病気のことでこころが一杯になってしまうのです。
 不思議なことに、何かのきっかけでこころが元気になってくると、病気も少し良くなったりします。自分の病気について知り、治すための工夫や努力をしようと思えたりするでしょう。完全には治らない病気であれば、どうすればそれを抱えつつ人生を有意義に過ごせるかを考えるでしょう。

   ***   ***

 こころと身体はそれだけ密接に関わっているといえます。
 病気に罹った時にこころを平静に保つのは、とても難しいことです。瞬時にその現実を受けとめ、自分や家族のそれから後のことを冷静に考えられる人は、稀なのではないでしょうか。病気になったとき、絶望や不安や恐怖がこころを襲います。どうなっていくんだろう。信じられない。なかったことにしたい。どうして自分がこんなに苦しまなくてはならないのか。死んでしまうんじゃないか。こんな状態で生きていけない。
そう思います。

 家族もそうです。
 たいてい医師は、患者を前に淡々と検査の結果を示し、診断し、病状と予後を説明し、治療方針や、代替治療を示します。そして、これから患者が受けようとする医療行為について、その目的・方法・結果・危険性などを説明して、患者の同意を得ます。その時、患者やその家族は、説明する医師の声を聞きながら、こころのなかでさまざまな思いを抱くでしょう。その後も、病気を抱え闘病しながら日々こころが揺らぎます。

   ***   ***

 では、病気があるとわかった時、その現実を受け入れ、立ち向かおうとするこころはどのように得られるものなのでしょうか。
 そこには何が必要なのでしょうか。

 それは、一緒になって、病気を抱え苦悩する自分を理解しようとしてくれる、そんな人が一人でもいてくれることだと私は思うのです。そうすれば、病気を抱える人は、自分の状態を正しく理解し、病気に立ち向かうこころをもつことができるのではないか。病気を得るという不幸が、とてつもない不幸にならないで、抱えやすくなるのではないか。そんな風に思うのです。
 言い換えれば、病気をもつ人やその家族にとってのいちばんの苦しみは、その不安や苦悩を「理解されない」ことにあるのではないだろうか……。

版元から一言

本書は、こころとからだが絡まりながら《生きづらさ》のなかを歩む四人の生きざまを活写します。
そして、その生きづらさを共にしようと傍らに居ること=《共感》のダイナミズムを描いています。
この「四つの物語」の背景には、じつに機微に富んだ人間学・心理臨床の領域での思索や体験が積み重なっています。
そうした先達の知恵と著者の呻吟が紡ぎあわされた書籍が、本書と同時に刊行されます。

『からだの病いとこころの痛み ―― 苦しみをめぐる精神分析的アプローチ』 〔木立の文庫, 2019年〕

本書の【四つの物語】にいくつかの補助線を引くことで、
「こんがらがった不幸」はどのようにしてこんがらがるのか? 
どのようにして「もつれ」を「ほぐす」ことができるのか? 
という難しい問いへのヒントがもたらされるかも知れません...。


そうしたことから本書の後半では、脚註欄の随所で、
そこでの記述が “同胞の書『からだの病いとこころの痛み』ではどのように描かれているか”
の一端が、案内されています。

著者プロフィール

村井 雅美  (ムライ マサミ)  (

村井雅美(むらい まさみ)

1993年、ニューハンプシャー大学大学院心理学部博士課程中途退学。
帰国後、奈良県立奈良病院こども心療科・NICU科など新生児科・小児科での心理臨床に携わる。
2018年、京都大学大学院教育学研究科博士後期課程(臨床実践指導学講座)単位取得退学。
博士(教育学)。
臨床心理士。
日本精神分析学会認定心理療法士スーパーバイザー。

上記内容は本書刊行時のものです。