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ボランティア解体新書
戸惑いの社会から新しい公共への道
- 出版社在庫情報
- 在庫あり
- 初版年月日
- 2019年4月1日
- 書店発売日
- 2019年4月10日
- 登録日
- 2019年1月29日
- 最終更新日
- 2024年11月6日
重版情報
5刷 | 出来予定日: 2023-11-10 |
4刷 | 出来予定日: 2022-07-10 |
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紹介
人間は家族・学校・職場などの集団に属し、そこでの習慣、規範に従って行動している。しかし一方で、個人として社会に影響を与え、社会を変化させることができる。……どのような生き方をするかは、人間の意志によるのである。……21世紀の明暗は、社会貢献活動が活発におこなわれるか否かにかかっているといってよい。なぜならば、グローバル化のなか、自分だけ、自分の国だけがよければ良い、という世界は成立しなくなっているからである。そして、この社会貢献のなかで、その中核をなすのが、ボランティア精神であり、ボランティア活動である。
目次
時代をつくる新しい生き方と社会
ボランティアとは
時代と社会のなかで
シティズンシップを身につけて
人間と社会のこころの基盤
保障された自発的な活動
内的報酬をめぐって
スキル・資格・学び
顔のみえる関係性のなかで
これからの活躍の場:事例集
ボランティアと学校
ボランティアと福祉
ボランティアと地域社会
ボランティアと防犯
ボランティアと防災
ボランティアと災害
ボランティアと地球環境
ボランティアと国際協力
ボランティアとスポーツ
ボランティアと文化芸術
ボランティアと観光
ボランティアの事前事後
前書きなど
日本は1945年の敗戦後、1956年には「もはや戦後ではない」と言われ、瞬く間に高度経済成長を遂げた。1980年代後半には日本中がバブル景気で沸いたが、1991年以降バブルがはじけ、その後に残ったのは、景気の低迷に加え、将来への不安や社会に対する“不信感”、生き方そのものへの“戸惑い”であった。そんな折に起きた阪神・淡路大震災は、死者6,434人、負傷者4万3,792人にのぼり、かけがえのない命や家や財産を多くの人々から奪い、その事の大きさに日本中がショックを受けた。
しかし、失うものと同時に得られたことがあった。それは、ボランティアという生き方である。震災直後の1年間で138万人という人たちがボランティアとして神戸で活動をし、多い時で1日2万人が活動したのである。この阪神淡路大震災のボランティア活動がきっかけとなり、1995年がボランティア元年と呼ばれるようになった。それ以降、ボランティア活動は市民権を得て、さまざまなところで広がりを見せてきた。災害復興ボランティア、国際協力ボランティア、地域振興ボランティア、街づくりボランティアなど挙げればきりがないが、その活動内容は多種多様となってきた。それと同時に「やりがい搾取」や「ブラックボランティア」と言われるような、善意につけ込むかのようなボランティアも出現してきている。ボランティア活動はたくさんあるのに、自分に合った活動がわからない、どのように選んでよいのかわからない、といった声も聞こえる。ボランティアに対する疑念や戸惑いも少なくない。
本書は、このような今だからこそ“ボランティアとはいったい何なのか”ということを立ち止まって考え、そこから自分なりのボランティアの在り方を作り上げるきっかけにしてもらいたい、という思いから『ボランティア解体新書』とした。
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本書の前半では、ボランティアの概念として、ボランティアとは何か、歴史的にどのようにとらえられてきて現在どのような現状なのか、ボランティアをするための準備やボランティアそのものの教育意義について、ボランティア活動が私たちの生き方や生活にどのような影響を及ぼしているのか、そして、ボランティアに求められるものは何かなど、ボランティアそのものについて深く掘り下げて議論をする内容とした。
後半では、私たちの社会のなかのボランティア活動を学校、福祉、地域社会、防犯、防災、災害、地球環境、国際協力、スポーツ、文化芸術、観光の分野で取り上げ、各分野のなかで何が問題となっていて、どのようなボランティア活動があるのか、そこにある課題は何かなど、ボランティア活動の事前事後の取組を含めて実践的な内容をまとめた。
各章では、テーマに合わせた問いを設けた。そこで学んだ内容をもっともっと掘り下げて学んでいく指針にしたり、授業で扱うときの個人またはグループのワークにしたりするなどして、活用してもらいたい。
もちろん、本書で取り上げていないボランティア活動や、ボランティアに対する考え方はこれらの他にも多様にあり、限られたボリュームのなかですべてのボランティア活動についてカバーすることはできなかった。それでも、ボランティア活動に初めて参加する方や、ボランティアとは何か知りたい方などには、ボランティアの入門編としてはとっつきやすい内容になっていると自負している。
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「百聞は一見に如かず」とは、聞くだけでなく、実際に見てみないとわからないということを指すが、これには続きがある。「百聞は一見に如かず 百見は一考に如かず 百考は一行に如かず 百行は一果に如かず……〔略〕」。これは、聞くだけでなく、実際に見てみないとわからない。見るだけでなく考えないと意味がない、考えるだけでなく行動をするべき、行動するだけでなく、成果を出さないと意味がないということを指している。ボランティア活動は、聞いたり見たりするだけではなく、実際に行動に移さないと意味がない。ボランティア活動の成果は何かと言われると各人によって異なるが、例えば、支援をした相手が助かったり、喜んだり、あるいはそのことで感謝されることであったり、自分が満足することであったりするだろう。実践することこそがボランティアであるが、そのなかで「なぜ?」といった疑問にぶつかることもあるだろう。そのときにこそ、ボランティアとは一体何なのかといった理論に立ち返ることで、後の活動が格段に意味のあるものになる。
上記内容は本書刊行時のものです。