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古代政治史の死角
- 出版社在庫情報
- 在庫あり
- 初版年月日
- 2022年4月30日
- 書店発売日
- 2022年5月16日
- 登録日
- 2022年4月16日
- 最終更新日
- 2022年5月10日
紹介
政治は誰のためにするものか。
律令制定に尽力した藤原不比等、政権に叛旗を翻した藤原広嗣、天然痘に苦しむ人民を見過ごした聖武天皇――皇族・貴族など支配者層の目に、国家・社会・民衆はどう映っていたのか。
為政者たちの視点からこぼれ落ちた事実をすくいあげ、歴史を再評価する。
目次
はじめに
Ⅰ●国家・施策
近江大津宮の遷都理由と選地
一 なぜ遷都が必要になったのか
二 なぜ遷都先に大津が選ばれたのか
三 大津宮は恒久施設か臨時施設か
四 大津宮跡はどんなものか
五 大津宮の古歌の解釈の誤りとは
日本書紀編纂の材料と経緯
一 『日本書紀』編纂の企画
二 『日本書紀』編纂の材料
三 『日本書紀』の編纂過程
疫病の流行──律令国家の天然痘への対処法
一 天然痘の蔓延
二 天平の大流行
赤裳瘡流行後の風景──天平の世に教わるもの
一 変わり果てた農村
二 天平の「偉業」
国分寺建立の詔への疑義
一 国分二寺の建立はいつからはじまったのか
二 国分寺は、計画通り全国に建てられたのか
三 尼寺はだれが運営していたのか
上皇時代の明と暗
一 創出された上皇の役割
二 対立・対抗する上皇
三 「治天の君」となる上皇
Ⅱ●氏族・人物
神武東征譚成立の理由をさぐる
一 記紀の記す神武東征譚
二 史実とされる神武東征譚
三 観念としての東征譚
葛城一族滅亡のシナリオ
一 葛城氏の滅亡
二 葛城氏の本拠地
三 葛城氏と大王家
四 葛城氏の勢力基盤
物部氏の神話と職掌
一 饒速日命は、なぜ神武東征前に降臨していたのか
二 物部の職掌と氏名の意味は
三 尾輿・守屋は仏教導入反対の急先鋒だったか
四 物部氏の分布とその後
祖先を神として守り抜く信念に生きた物部守屋──侠の歴史①
一 丁未の変の顚末
二 仏教公伝をめぐる対立
覚えのない容疑にあえて身を捧げた長屋王──侠の歴史②
一 期待されて登場した長屋王
二 長屋王排斥の理由
大忠臣の誇りを胸に無念の最期を遂げた藤原広嗣──侠の歴史③
一 大宰府での挙兵
二 我は大忠臣なりという誇り
行基の伝記と評価
一 行基の伝記
二 行基と聖武天皇の関係
三 『日本霊異記』と行基の教え
橘一族の栄枯盛衰
一 創氏と諸兄政権
二 実現間近だった橘氏の栄華
三 橘一族のその後
政治は誰のためにするものかを心に問い続けた橘諸兄──侠の歴史④
一 橘諸兄の登場
二 諸兄のめざした政治
三 聖武天皇の迷走と光明皇后の豪腕
Ⅲ●社会・慣習など
コトバを創り、話したように記す──古代びとの挑戦
一 コトバを創る
二 文に書き記す
日本古代の高齢者
一 「老」の年齢
二 老年人口の実情
三 老の光と影
牛と古代びと
一 牛と宮廷
二 民間における牛
吉成勇さんのご逝去を悼む
古代天皇系図
あとがき
前書きなど
「歴史上の事柄は、幸いなことに、たった一人でも、その見る位置を自在に変えながら観察することが可能だ。かれらが当時死角に置いたであろうものを、何年かかるかはわからないが落ち着いて描き出すことができる。死角だらけの人たちが残した史料からでも、その死角の共通性をかいくぐれれば、死角に入ったものに近付けるのではないか。(中略)あえていえば時代を導いてきた人たちの輝かしい政績を並べて記述するよりも、「死角に入ってしまう事実を、この手で摑み取りたい」と日ごろ願って書いてきた。」(「はじめに」より)
上記内容は本書刊行時のものです。