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古今和歌集の論
- 出版社在庫情報
- 在庫あり
- 初版年月日
- 2022年1月31日
- 書店発売日
- 2022年2月10日
- 登録日
- 2022年1月17日
- 最終更新日
- 2022年2月1日
紹介
古今集、拾遺集、源氏物語研究等におおきな影響をあたえた、著者の単行本未収録論集・全3冊。
王朝文学全般にわたる、刺激に満ちた数々の論考は、縦横無尽に古典作品の魅力と問題点を伝える。
河添房江氏(東京学芸大学名誉教授)、渡部泰明氏(国文学研究資料館館長)推薦!
本書は、あらゆる切り口から「和歌史」「歌ことば」に迫る。
巻末に「歌語辞典」を付載。
目次
凡例
Ⅰ●古今和歌集成立の論
1 王朝和歌の成立
2 古今和歌集の成立
3 この歌の文字あるをや―古今集撰者の時代
4 勅撰集序の和歌史意識
5 古筆の本文的意義―古今和歌集の異文の位相
6 古今的なるもの
7 平安朝文学における自然観
Ⅱ●歌ことばの論
1 『古今集』的表現の特質とその展開
2 歌ことばをめぐって―「蓬が杣」考
3 古今集のことば
4 古今的自然の表現性
5 『古今集』の〈ことばかざり〉
6 秋草の歌
7 古典に舞う鳥―歌の世界の中から
8 誰が袖―古今集歌の享受の一位相
9 平安時代の月の色
10 花もみじ
Ⅲ●歌枕の論
1 古今集の歌枕―和歌表現論序説
2 三代集の名所歌枕―古今的美学の一考察
3 歌枕
4 作品にみる風土―古今集
5 吉野山―よき人がよしとよく見て
Ⅳ●古今集歌人の論
1 古今集の歌風と展開
2 在原業平―旅の思想
3 小野小町―古今集
4 小野小町における〝うつろひ〟
5 伊勢集と人生―心憂き身
6 紀貫之―作家の謎
7 紀貫之の歌心
8 古今集と貫之の歌
9 貫之、心と詞
10 屛風歌作者としての紀貫之―拾遺集四季歌を媒介として
11 紀貫之要語集
秋の雪/恋忘れ草/難波の葦/波の花/初雁の/花なき里/べらなり/松風/山下風/吉野の山の桜花/夜の錦
Ⅴ●歌語辞典
秋(あき)/朝顔(あさがほ)/あぢきなし/石(いし)/夢(いめ)/色(いろ)/憂し(うし)/歌ことば・枕詞(うたことば・まくらことば)/歌枕(うたまくら)/浦(うら)/面
影(おもかげ)/蚊(か)/蟋蟀(きりぎりす)/蟋蟀(こほろぎ)/衣(ころも)/嵯峨(さが)/鷺(さぎ)/桜(さくら)/鈴虫・松虫(すずむし・まつむし)/民(たみ)/常(つね)/夏(なつ)/撫子(なでしこ)/庭(には)/春(はる)/羊(ひつじ)/藤(ふぢ)/藤袴(ふぢばかま)/冬(ふゆ)/鳳凰(ほうわう)/禊(みそぎ)/物合(ものあはせ)/百敷(ももしき)/山藍(やまあい)/山里(やまざと)/世(よ)/侘ぶ・詫ぶ(わぶ)
初出一覧
解説 倉田実
引用和歌初句索引
前書きなど
和歌集の史的な把握がある一方で、個々の歌ことばに対する丁寧で博覧的な言及があるところに著者の学風があろう。……中略……本セレクション第二冊の『拾遺和歌集』、第一冊の『古今和歌集』というように、有力な二つの勅撰集を領略したところに著者のすごさも窺われるのである。(倉田実「解説」より)
版元から一言
推薦のことば
「歌ことば表現」の魅⼒
河添 房江 東京学芸⼤学名誉教授
⼩町⾕照彦先⽣は、卒業論⽂を藤原公任、修⼠論⽂を『拾遺集』でまとめられるという、平安和歌研究の王道を歩まれた⽅である。また秋⼭虔先⽣の愛弟⼦として、『源⽒物語』の論考も多く、物語と和歌の関係という、トレンドの研究テーマのパイオニア的存在であった。源⽒研究や和歌研究の画期をなす論⽂は、『源⽒物語の歌ことば表現』『古今集と歌ことば表現』『王朝⽂学の歌ことば表現』という、いわゆる「歌ことば表現」三部作に収められている。その先⾒性と実証的⽅法、明晰な表現分析により、多くの研究者が先⽣の学恩にあずかったのである。
「歌ことば表現」は先⽣のオリジナルな造語で、その題を決められた時、編集者から「歌ことば表現」とは⻑々しいと⼀度はクレームがついたものの、次回の打合せではかえってインパクトがあると⾔われて、決まったという。「歌ことば表現」とは、「和歌を形成する基盤としての歌語」ばかりでなく、「和歌を構成する⽅法としての修辞技法」、さらに「和歌が導き出した⽂学的時空」を包括する概念であり、その後の歌語・歌ことば研究を⽬ざましく進展させていった。
先⽣のそうした和歌や物語の研究のエッセンスが、いま花⿃社から『⼩町⾕照彦セレクション』の三冊として刊⾏されると聞いて、喜びに堪えない。若い研究者の⽅々にもぜひ読んでいただき、和歌と物語の関係性という永遠のテーマについて、『源⽒物語』やそれ以降の物語も掘り下げていただければと切に願うのである。
表現の母胎へのまなざし
渡部 泰明 国文学研究資料館館長
直接に指導を受けたというわけではなくとも、ひたすら感謝の意を捧げたい研究者が、誰にでも存在するだろう。私の場合、小町谷照彦氏はそのお一人である。自分の研究の根幹となる発想へと導いていただいた。「歌ことば」への着目がそれである。『源氏物語の歌ことば表現』『古今和歌集と歌ことば表現』『王朝文学の歌ことば表現』の著書があり、本セレクション第一冊にも「歌ことばの論」と題する一章があるように、「歌ことば」は氏の学問の核となる概念である。私なりの文脈で述べることをお許しいただくなら、歌ことばへの着目は、表現の母胎を解析する方法を導く、といえる。様式的な表現に枠づけられた和歌に、どうして人の心が託しうるのか。韻文である和歌と物語や随筆などの散文には、どこに接点があるのか。あるいはまた、作品の詩的達成を、客観的な指標によって明示することは可能なのかどうか。迷路に入り込むたびに、「歌ことば」という視点は、たしかな道筋を示してくれた。言葉が言葉を紡ぎ出し、広がりゆき、結び合う、そのような言語の動態こそ、詩的表現を生み出す原動力なのだと、行きなずむ背中を押していただいた。厳正でありながら、柔軟な思考に支えられたその論考の、大きな射程のゆえである。
上記内容は本書刊行時のものです。