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上代日本語表記論の構想 尾山 慎(著) - 花鳥社
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上代日本語表記論の構想 (ジョウダイニホンゴヒョウキロンノコウソウ)

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発行:花鳥社
A5判
356ページ
並製
定価 9,000円+税
ISBN
978-4-909832-30-6   COPY
ISBN 13
9784909832306   COPY
ISBN 10h
4-909832-30-0   COPY
ISBN 10
4909832300   COPY
出版者記号
909832   COPY
Cコード
C3081  
3:専門 0:単行本 81:日本語
出版社在庫情報
在庫あり
初版年月日
2021年2月28日
書店発売日
登録日
2021年2月10日
最終更新日
2021年2月25日
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紹介

表記論はいかに可能か、そこから何を知ることができるか。

〝上代の人々が書いたことば〟と〝私たちがよめたもの〟の峻別が曖昧となっている現状を見つめ直し、表記研究の新たな方法論を提示する。

・「表記体」という用語定義の再検討。
・漢字とはどういう文字で、表語、表意という位置づけはどのような場合に、どう有効なのか。
・万葉集を対象に「歌」の表記論を構想。
・「漢語」を上代の文体論、表記論にどう措定するか。
・「歌」表記と「散文」表記の位置づけと機能を検証し、文章と表記、そして文体について考える。

目次

 緒言
 本書の構成と概要
序章
 導言
第1節 続・術語説明にかえて
 1,はじめに
 2,表記と書記
 3,前著から引き継ぐ術語
第2節 理論的設定に滲みだす〝現実〟―研究方法への思惟―
 1,はじめに
 2,個人と生み出されることば
 2.1 書かれたものから辿る書き手
 2.2 作者と「作者」
 2.3 作品の研究か,作者の研究か
 2.4 作者が表に出ない研究へ
 2.5 抽象的な「人」
 3,文字・表記・書記論とラング・パロール
 3.1 ラング・パロール・ランガージュ
 3.2 一般言語学のラング
 3.3 上代日本語表記論において
 3.4 見出される傾向と個別事情
 4,通時的観点と共時態
 4.1 反歴史と上代
 4.2 作品論的研究と捨象される時間
 4.3 構造主義的な共時態から,通時態論へ
 4.4 作品論的共時論
 4.5 作品論的共時論と通時論
 4.6 作品論的共時論と通時論との交錯
 4.7 通時論的研究への模索
 5,データベースの目的と扱い
 5.1 計数とデータの再現性
 5.2 漢字の総数は数えられるか
 5.3 データの扱い
 6,演繹と帰納
 7,おわりに
 小括

第1章 表記論における諸問題
 導言
第1節 「表記体」
 1,はじめに
 2,「表記体」の指す概念の定位を巡って
 3,3つを措定
 4,それぞれの表記体を措定するに当たっての補足的事項
 4.1 小さな単位での差異は,連続性の中に措く
 4.2 訓字主体表記・仮名主体表記という既存術語は
 5,表記体の成立論的記述を巡って
 5.1 理論上考えられること
 5.2 実証的な成立論の困難性
 6,おわりに
第2節 我々は何を知りたいのか―土左日記表記論を例に―
 1,はじめに
 2,考察の眼目
 3,書かれている「理由」を探る
 3.1 漢字表記漢語の例について―小松英雄『日本語書記史原論 補訂版』 (新装版 笠間書院)主に第2章の見解
 3.2 仮名表記字音語の例との関係性―再び小松前掲論文
 3.3 仮名表記字音語の例と漢字表記漢語の例とで,何が違いとして見いだされたのか
 3.4 読み手,書き手そして分析者
 4,「方針」「システム」の見いだしを巡って
 4.1 小林芳規説の見解
 4.2 表記の「方針」や「システム」を見いだすこと
 4.2.1 ほとんどを占める仮名表記和語に見いだされる傾向はあるか
 4.2.2 「こ」の一例から
 4.2.3 仮説的前提と,帰納的分析
 5,「方針」「システム」を見いだすこと
 6,おわりに
 小括

第2章 漢字の「表意」と「表語」
 導言
第1節 漢字という文字とその素性
 1,はじめに
 2,文字の黎明と,「語」―そして表語文字
 3,「字義」「字音」という言い方と言語学的解釈
 4,おわりに
第2節 「古事記は よめるか」再び
 1,はじめに
 2,シニフィアンとシニフィエに分解
 3,漢字が意味と音とを表すのか,語を漢字が表すのか
 4,おわりに
第3節 漢字の「表意的用法」による表記とその解釈
 1,はじめに
 2,「読まない」漢字―熟字訓,当て読み
 3,二字熟語の個々の文字
 4,省略語のたぐい
 5,表音表記で二次的に意味が読みとれる場合
 6,漢文助字を「読まない」という場合
 7,同音で文字の違いがそれを分ける場合
 8,ひとつの読みに定めがたいという場合
 9,表音用法が意味を帯びる時 附:留学生日本語教育の現場から
 10,まとめ
 小括

第3章 「歌」表記論の構想
 導言
第1節 万葉集の「正訓」考
 1,はじめに
 2,正訓の定義とその揺れ
 2.1 辞書や概説書の説明から
 2.2 諸論における「正訓」の概念と,使われ方
 2.3 歴史的経緯―『万葉用字格』
 3,よく結びついていること―はどのように知ることができるか
 3.1 〝揺れ〟と〝定着〟
 3.2 数の論理
 4,おわりに
第2節 孤立する訓字―仮名主体表記の対立の中で―
 1,はじめに
 2,文字と訓の関係,そして訓字の性質
 2.1 「訓仮名性」という見なし
 2.2 訓字か訓仮名か
 2.3 考察にあたって
 3,用例の整理と解析
 3.1 検証作業の方法
 3.2 用例分析とその結果
 3.3 検証結果の整理
 4,考察結果のまとめ
 4.1 再び「訓仮名性」を巡って
 4.2 文字と読みとの繋がりをどう測るか
 4.3 結論
 5,おわりに
第3節 異字同訓を巡る問題―「道」「路」「俓」を例に―
 1,はじめに
 2,「道」「路」のあらわすミチとチ(ヂ)―地理的に存在するもの
 2.1 用例分布(全体)
 2.2 地理的に存在するミチおよびチ
 2.2.1 地理的に存在するミチ/チの用例
 2.2.2 同義とみられる用例
 2.2.3 「道」「路」それぞれの注目すべき例
 2.3 「道」がもっとも無標的
 3,抽象的,メタファとしてのミチ/チ
 4,「俓」表記の例
 4.1 集中に3例―212番から
 4.2 977番
 4.3 3881番
 4.4 「俓」字まとめ
 5,結論
 5.1 考察結果のまとめ
 5.2 異字同訓と使い分けの内実
 6,おわりに
 小括

第4章 上代「漢語」研究の構想
 導言
第1節 「漢語」の語形
第2節 「漢語」と倭語のはざま―「え」を中心に―
第3節 語種としての「漢語」と表記上の「漢語」
 1,はじめに
 2,現代語を手がかりに
 2.1 あてられる〈表記上の漢語〉
 2.2 あてられる倭語
 2.3 上代に問題意識を投影する
 3,語種研究,「漢語」研究の歴史から
 4,表記と「漢語」と倭語
 5,おわりに
 小括

第5章 「歌」との対比で見る上代「散文」表記論の構想
 導言
第1節 訓字と仮名で書かれる「散文」と「散文」中の「歌」
 1,はじめに
 2,これまでの仮名研究
 3,訓字と仮名それぞれの定義
 3.1 訓字
 3.2 文字と語(訓)の密着度について
 4,仮名とは
 4.1 仮名の認定
 4.2 表音用法によるもの
 4.3 研究史概観
 5,上代日本語表記のモデル図
 5.1 「事趣更長」の真意
 5.2 〈平仮名的〉なありようと〈片仮名的〉なありよう
 5.3 表記の固定性と字母
 6,まとめ
第2節 表記体の通史を上代から描く構想―「歌」と「散文」―
 1,はじめに
 2,表記体の変遷と文字の変化
 3,各フェーズでの移行図
 4,まとめ
第3節 上代の日本語「散文」と漢文の知
 1,はじめに
 2,『古代日本語をよむ』の基本的な考え方
 3,宣命と宣命書き
 4,古事記の文章と,書承・口承
 5,文字と訓との関係
 6,文字と訓の密着度に対する見解
 7,おわりに
第4節 X文章とY文章―読み手と書き手―
 1,はじめに
 2,研究史の現状
 3,X文章(文体)とY文章(文体)
 4,YをXと同一視すること
 5,Y文章だけが手がかりならば
 6,表記論との連携
 7,おわりに
 小括

補章 內田賢德・乾善彦編『万葉仮名と平仮名 その連続・不連続』を読む
 1,はじめに
 2,冒頭~第一部総括まで
 3,第二部・第三部
 4,本書の立場からみた『万葉仮名と平仮名』
 5,おわりに

終章
 導言
第1節 一次資料の扱い―木簡の文字・表記―
 1,はじめに―木簡による日本語の研究
 2,位相の問題と木簡の文字・表記論
 2.1 〝万葉仮名から(平)仮名へ〟
 2.2 歌の歌詞と宅配便の伝票
 2.3 木簡の表記とスタイル
 3,木簡と記紀万葉を比較する意味
 3.1 「鯛」を例に
 3.2 万葉集における「多比」との違い
 4,上代特殊仮名遣いと木簡
 4.1 〝音〟の問題として
 4.2 木簡が語ってくれる可能性
 5,おわりに
第2節 万葉歌の訓詁的考証上の象徴的な問題
第3節 まとめ:上代日本語表記論の構想―展望も込めて―

 初出一覧
 あとがき
 事項・人名 索引

前書きなど

「……本書の根幹に関わる構想を述べれば、上代の人々が書いたことばと表記はどのようなもので、我々が、残された文字・表記から引き出して、読み取ることばはどのようなものなのか――そのシンプルな峻別が、実は曖昧になってきたのではないか、というところに問題意識の原点がある。書かれることばと読まれることばがほぼ同一で重なり合う現代日本語表記の世界に住んでいる人間(我々)であればこそ、この峻別は、意識的に持つ必要がある。換言すれば、〝私たちがよめたもの〟が、〝彼らが書いたことば〟だと同一視してしまうスライドがありうる。が、それは時に危険である。「表記体」「文体」といった近時盛んに取りざたされるキーワードも、そういった峻別の中で、あらためて定義した上で、議論される必要があると考えている。」……「序章」より

著者プロフィール

尾山 慎  (オヤマ シン)  (

2006年 大阪市立大学大学院博士後期課程修了 博士(文学)
大阪市立大学特任講師、京都大学非常勤講師などを経て、2013年より奈良女子大学准教授(現在に至る)

著作『二合仮名の研究』(和泉書院、2019)

2007年 新村出賞研究奨励賞受賞
2008年 萬葉学会奨励賞受賞
2014年 漢検漢字文化研究奨励賞・佳作

上記内容は本書刊行時のものです。