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「言論統制」の近代を問いなおす 金 ヨンロン(編) - 花鳥社
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「言論統制」の近代を問いなおす 検閲が文学と出版にもたらしたもの

発行:花鳥社
A5判
232ページ
並製
価格 3,200円+税
ISBN
978-4-909832-11-5
Cコード
C1095
教養 単行本 日本文学、評論、随筆、その他
出版社在庫情報
不明
初版年月日
2019年9月25日
発売予定日
登録日
2019年8月8日
最終更新日
2019年8月29日
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紹介

いま、検閲について考える意義はどこにあるのか。

2000年代以降、新資料の発見が続き研究環境は劇的な変化をとげている。
戦前から占領期にかけて、検閲する側はどのように行い、受ける側はどう乗り越えようとしたのか。
検閲のプロセスを丁寧にたどることで、両者を対立的に捉える従来の図式を解体し、
さまざまな立場の思惑が複雑に絡みあう実態を暴く!

目次

はじめに
 ―私たちは「残骸の向こう側」を見ている●尾崎名津子・金ヨンロン・十重田裕一

1 戦前・戦中期の出版警察体制から図書館への影響
   ―県立長野図書館、静岡県立中央図書館の事務文書に見る検閲制度運用の一側面●牧 義之
 一 警察によって差し押さえられた出版物
 二 書庫に忘れられた事務文書(県立長野図書館)
 三 廃棄予定だった事務文書(静岡県立中央図書館)
 四 図書館史、文書資料を繋ぎ合わせて見えてくること
 五 記録を読み、活用すること

2 大衆の〈国民〉化に影響を与えた戦時下の児童文化統制
   ―佐伯郁郎と「児童読物改善ニ関スル指示要綱」●村山 龍
 一 大衆から〈国民〉へ
 二 佐伯郁郎という人物
 三 「指示要綱」の作成はいかにして始まったか
 四 「指示要綱」の成立過程に関する発見
 五 「指示要綱」から削除された「推奨制度」
 六 「今次聖戦」という文言の削除と『赤い鳥』への共感
 七 「指示要綱」とは何だったのか

3 岩波文庫に対する検閲処分●尾崎名津子
 一 岩波文庫の理想と現実
 二 岩波文庫に対する処分
 三 出版社を起点とした検閲研究の可能性

4 占領期における検閲主体の読書行為
   ―東京裁判言説の検閲内容をめぐって●金ヨンロン
 一 検閲主体の読書行為はいかに捉えられてきたか
 二 東京裁判と検閲という視座
 三 検閲主体の揺れ:東京裁判を描いた文学―中山義秀「迷路」を例に―
 四 反復される状況と思想的課題
 五 検閲主体とその読書行為を捉えなおす

5 在日朝鮮人文学と自己検閲
   ―GHQ検閲と在日朝鮮人コミュニティーの狭間にいる「編集者・金達寿」の葛藤を考える●逆井聡人
 一 「自己検閲」の範囲
 二 金達寿が回想する「検閲の苦労話」にある矛盾
 三 在日朝鮮人に対する検閲に関する先行研究
 四 金達寿の自己検閲
 五 視線の内面化
 六 精神史としての「自己検閲」と今後の展開

〈ラウンド・テーブル〉見えざる〈統制〉に近づくために
 1 複雑な検閲プロセス―従来の分かりやすい図式を解体する 
 2 論じる側の政治性と時代が反映される
 3 「規範の内面化」とは?
 4 検閲者の「読み方」
 5 大衆も検閲する
 6 世界情勢によって変わる検閲の規範
 7 個人に焦点を絞った検閲研究の可能性
 8 コミュニティの内部圧力による自己検閲・自主規制
 9 書き手に及ぶ身の危険
 10 異なる権力の共同歩調―佐伯郁郎と阪本越郎
 11 「統制」の中の「推薦」制度
 12 遡及的・事後的検閲
 13 リアル『図書館戦争』
 14 著作権との関係
 15 検閲がテクストに何を残したのか
 16 岩波文庫がもつ特異性
 17 図式に捉われない検閲研究へ

英文要旨
執筆者紹介

前書きなど

検閲に関する研究環境が劇的に変化し始めてからおおよそ二〇年が過ぎようとしている現在、資料を前にして少し立ち止まり、自分たちの位置を確認してもよいのではないかという思いがあった。検閲について考えるとは、畢竟何を思考することなのか。自らが撮影した写真を発表するあてがなくても、木村伊兵衛は「残骸の向こう側」を見ていた敗戦直後の人びとの姿をレンズを通して捉え続けた。その営みは、検閲を論じる/話題にする/対象化する人間にも通じることなのではないか。(「はじめに」より)

著者プロフィール

金 ヨンロン  (キム ヨンロン)  (

1984年生。
東京大学大学院総合文化研究科博士課程修了。博士(学術)。
現在、早稲田大学高等研究所講師。
著書・論文 『小説と〈歴史的時間〉-井伏鱒二・中野重治・小林多喜二・太宰治-』(世織書房、2018年)、「治安維持法体制下における中野重治の転向五部作と伏字問題ー「小説の書けぬ小説家」を中心にー」(『日本文学』64巻11号、2015年11月)、「「××が始まつてから」ー小林多喜二『党生活者』論」(『昭和文学研究』第72集、2016年3月)、「法と文法-井上ひさし『夢の痂(かさぶた)を中心に-」(『社会文学』48号、2018年8月)、「戦争裁判が甦る契機-木下順二『神と人とのあいだ』を手掛かりに-」(『日本文学研究ジャーナル』第9号、2019年3月)など。

尾崎 名津子  (オザキ ナツコ)  (

1981年生。
慶應義塾大学大学院文学研究科後期博士課程修了。博士(文学)。
現在、弘前大学人文社会科学部講師。
著書・論文 『織田作之助論 〈大阪〉表象という戦略』(和泉書院、2016年)、『織田作之助女性小説セレクション 怖るべき女』(編著、春陽堂書店、2019年)、「待たれる「乞食学生」―『若草』読者共同体と太宰治」(小平麻衣子編『文芸雑誌『若草』 私たちは文芸を愛好している』翰林書房、2018年)、「木村友祐「イサの氾濫」の改稿―フラットな破局の後を生きる生―」(『日本文学研究ジャーナル』第9号、2019年3月)など。

十重田 裕一  (トエダ ヒロカズ)  (

1964年生。
早稲田大学大学院文学研究科博士後期課程修了。博士(文学)。
現在、早稲田大学文学学術院教授。
著書 『岩波茂雄 低く暮らし、高く想ふ』(ミネルヴァ書房、2013年)、『占領期雑誌資料大系 文学編』全5巻(共編著、岩波書店、2009~10年)、『検閲・メディア・文学 江戸から戦後まで』(共編著、新曜社、2012年)、Literature Among the Ruins, 1945-1955: Postwar Japanese Literary Criticism (共編著、Lexington Books、2018年)、『東京百年物語』全3冊(共編著、岩波書店、2018年)など。

牧 義之  (マキ ヨシユキ)  (執筆

1983年生。
名古屋大学大学院文学研究科博士後期課程修了。博士(文学)。
現在、長野県須坂看護専門学校非常勤講師、立教大学日本学研究所研究員。
著書・論文 『伏字の文化史―検閲・文学・出版』(森話社、2014年)、「削られた“銃後の母”―宮本百合子「その年」内閲原稿が語る言論状況」(『日本文学』64巻11号、2015年11月)、「占領期・東海地区で発行された雑誌に関する考察―カストリ雑誌化する『テラス』を中心に」(『中京大学文学会論叢』第4号、2018年3月)など。

村山 龍  (ムラヤマ リュウ)  (執筆

1984年生。
慶應義塾大学大学院文学研究科後期博士課程修了。博士(文学)。
現在、法政大学文学部日本文学科助教。
著書・論文 『〈宮澤賢治〉という現象 戦時へ向かう一九三〇年代の文学運動』(花鳥社、2019年)、「〈禁止〉と〈改善〉―文藝懇話会をめぐる考察」(『三田國文』60号、2015年12月)、「〈検閲官・佐伯郁郎〉を通して見る文化統制」(『Intelligence』19号、2019年3月)、「言語論的転回にもとづく詩的精神への言及―保田與重郎の初期批評における詩の問題をめぐって」(『藝文研究』116号、2019年6月)など。

逆井 聡人  (サカサイ アキト)  (執筆

1986年生。
東京大学大学院総合文化研究科博士課程修了。博士(学術)。
現在、東京外国語大学講師。
著書・論文 『〈焼跡〉の戦後空間論』(青弓社、2018年)、「金達寿「八・一五以後」における「異郷」の空間表象」(『Juncture : 超域的日本文化研究』第5号、2014年3月)、’Fight for the Right to Live: Kim Tal-su’s Novels and “Third Country National” Discourse,’ Literary Intervention and Political Culture in South Asia, Toshie Awaya edt., FINDAS TUFS, Feb. 2018 など。

上記内容は本書刊行時のものです。