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「いただきます」の人類史 蒼井倫子(著) - みずき書林
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「いただきます」の人類史 (イタダキマスノジンルイシ) ヒトの誕生から生活習慣病の現代まで (ヒトノタンジョウカラセイカツシュウカンビョウノゲンダイマデ)

スポーツ・健康
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発行:みずき書林
四六判
縦188mm 横130mm 厚さ18mm
256ページ
並製
価格 2,000円+税
ISBN
978-4-909710-28-4   COPY
ISBN 13
9784909710284   COPY
ISBN 10h
4-909710-28-0   COPY
ISBN 10
4909710280   COPY
出版者記号
909710   COPY
Cコード
C0040  
0:一般 0:単行本 40:自然科学総記
出版社在庫情報
不明
初版年月日
2022年10月20日
書店発売日
登録日
2022年7月13日
最終更新日
2023年5月9日
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紹介

わたしたちの身体は、食べ物でできています。単細胞生物が多細胞に変化しアミノ酸を外から確保し始めたときに、「いただきます」の歴史が始まりました……。それから数億年が経ち、近い将来、大量生産と大量消費という食を取り巻く現在の構図は崩壊することが予想されています。それは私たちの健康どころか、命そのものを脅かします。

食育を専門とする小児科医が、細胞や栄養素というミクロな世界から、いま人類を覆っている飽食と飢えの格差・生活習慣病・偏食といった大きな視点まで、ごはんと人の歴史をめぐる。

目次

第一章 進化の中の私たち~地球の、生命の、いただきますの始まり
序 体の中の星屑
何もなかった宇宙
生命の材料
生命の境界線
光合成の始まり
体の中の発電所
単細胞から多細胞生物へ
「いただきます」の始まり
赤ちゃんはお腹の中で進化を辿る
体の中の博物館
コラム:あらゆる生き物は、鉄を必要とする

第二章 地球の中の私たち~太陽の光と植物、動物、微生物
序 戦う植物
植物が彩る世界
物言わぬ植物は、化学物質に物を言わせる
植物は動物のオスをメスに変える
動物たちの〝流用〟技術
ヒトという雑食の霊長類
ヒトの色覚はなぜ復活したか
苦労の絶えない偏食動物
ヒトという雑食の霊長類
パンダは笹を消化できない
肉食だった私たち
大切なヒトの虫垂
腸内細菌の受け渡し方
母乳は誰のもの?
腸内細菌と共に作り上げてきた防衛戦略
暴走する免疫
ビタミンDという司令官
ビタミンDとビタミンAの新人訓練
ビタミンAの役割
ビタミンD不足
コラム:人類は飛ぶ準備をしているのか?
セキュリティシステムとしての味覚受容体
病原体を感知する苦味受容体
互換性のある三大栄養素
体の中の山手線
互換性のない必須脂肪酸
食べ物から体へ
「栄養のバランス」の奥深さ
食べ物が遺伝子を動かす

第三章 世界の中の私たち 高度な知性の行方  ~近代化の功罪
序 旅する人類
肥満の流行
赤ちゃんの出生体重が減っていく日本
現代人の食べ物
砂糖中毒の人類
コレステロールは悪者か
コラム:魅惑のチョコレート
食べ物ではない食べ物
香料の威力
添加物という化学物質のカクテル
健康を謳う不健康な食品?
生活習慣病の家畜
腐ったクローバーとビタミンK
洗脳されやすい日本人
消費者の力は最後の望み
飽食の人類、飢える腸内細菌
減り続ける食物繊維
コラム:腸内細菌に絶滅の危機
増えるアレルギー
腸内細菌の黄金期
腸内細菌を治療する時代へ
サプリメントは効果がないどころか有害?
あらゆるものは毒となる

第四章 日本の中の私たち~命を支える食文化
序 迷子の人類
料理の始まり:類人猿とヒトを分けるもの
食べ物とヒトの共進化
食べ物と腸内細菌の共進化
日本の食文化の始まり
日本発信の「UMAMI」
腸内細菌と同盟を結ぶ発酵菌
コラム:ただならぬカビ
〝生きて〟腸まで届く
納豆というスーパーフード
いちばんたいせつなものは、目に見えない
食経験こそ最大の科学的根拠
風土との調和
料理を手放す人類

まとめ

おわりに

前書きなど

はじめに

真夜中の病棟。昨日の夕方から陣痛が始まっていたお母さんが、看護師さんに付き添われて分娩室に入っていきました。夜が明ける頃、元気な赤ちゃんの泣き声が廊下にまで聞こえてきました。無事、産まれたようです。
お腹の中にいた時は産婦人科の先生に診てもらっていた赤ちゃんは、生まれると小児科の先生にバトンタッチされます。まだ何も書かれていない真っ白なカルテに最初に書き込まれるのは、生まれた時の記録です。次に書き込まれていくのは、成長の記録です。体重はちゃんと増えていっているでしょうか? 首が座って、自分で寝返りができるようになってきたでしょうか?
生後半年くらいからは、感染症との戦いも記録されていきます。赤ちゃんは、お腹の中でお母さんから免疫のプレゼントをもらっていて、生後しばらくの間は病気にかからないように守られています。しかしその効力も、生まれて半年ほどで切れてしまいます。ちょうど乳幼児の間は、試練の時です。いろいろな種類の細菌やウイルスの洗礼を受けて、みんな自分ひとりで戦う術を身につけていきます。
よく風邪をひいて病院通いをしていたあの子も、小学生になる頃にはもう滅多に熱を出さなくなりました。久しぶりに小児科に来る中学生は、見違えるほど背も高くなり、少し居心地が悪そうです。よく日焼けして、今は部活を頑張っているようです。立派な体格になり、風邪にも負けない元気な子たちが中学を卒業すると、小児科も卒業です。
小児科医が診るのは、通常は15歳までの子ども達です。20歳以降の大人たちを診ることは、あまりありません。ところが、新型コロナウイルスの流行という非常事態が起こりました。1年遅れの東京オリンピックが目前に迫る中、ワクチン接種をする人手が足りないと聞き、小児科医である筆者も大規模接種会場のお手伝いに参加することになりました。
ワクチン接種は、重症化リスクの高い高齢者から始まりました。車椅子の方、杖をついている方、付き添いが必要な方も多く見受けられます。1日100人から200人に問診をして、お薬手帳で飲んでいる薬を確認します。病院での診察と違って、頭の中の一部分だけを高速回転させたような不思議な感覚の中、数ヶ月間でざっと数千人の大人たちへの問診を行いました。この問診を通じて、初めて実感として現代の病気を知ることとなりました。
70代以上の高齢者の多くは、驚くほどたくさんの薬を飲んでいました。
高血圧、糖尿病、脂質異常症……。病気の大多数は生活習慣病と呼ばれているものです。60代、50代では、まだ飲んでいる薬の種類は少なく、40代、30代~20代ではほとんどの人が持病もなくお薬手帳も持っていません。
ワクチンの大規模接種でひたすら大勢の大人たちへの問診をしているうちに、はたと気付きました。今診ている大人たちの病気は、小児科から元気に送り出したはずの子どもたちの、その後数十年にわたる未来予想図だということに。
このような生活習慣病の最も直接的な原因は、現代の食事にあります。摂りすぎた塩分、糖分、脂肪は、それぞれに、あるいは手を組んで高血圧、糖尿病、脂質異常症を引きおこします。食事は本来私たちが生きるためのものですが、その食事が病気を呼び、そして死を招いています。このような現代に特有の病気を甘んじて受け入れることが、現代人たるものの心得なのでしょうか。
誰しもいずれ年老いていく事は避けられません。しかし、生活習慣病になることは避けられないことではありません。なぜなら、食べ物を選んでいるのは私たち自身なのです。私たちが自分の食べ物を選ぶ基準となる美味しさや手軽さ、価格、見た目……。現代に生きる私たちは、これらの基準と自分の健康にどうにかして折り合いをつけなければなりません。
ただ純粋にお互いを見つめ合い、手を取り合っていたはずの私たちと食べ物の関係は、溢れる食べ物、溢れる情報に惑わされ、随分とこじれてしまいました。これは、生活習慣病だけの問題ではありません。本書では、私たちと食べ物の関係がこじれる以前の、遥か昔まで時代を遡り、今に至るまでの長い物語の〈本筋〉に迫ってみたいと思います。
「第1章 進化の中の私たち」では、私たち自身の歴史を振り返り、まずはこれまでのあらすじをかけ足でおさらいしてみようと思います。続く「第2章 地球の中の私たち」では、地球で繰り広げられている様々な生き物たちとの関わりから、ヒトという動物を眺めてみたいと思います。「第3章 世界の中の私たち」では、この世界に住む私たちの健康はなぜ脅かされているのか、その原因を探ります。最後の「第4章 日本の中の私たち」では、物語全体の脈絡から私たちと食べ物のこれからを考えてみたいと思います。
何を食べるべきなのか、何を避けるべきなのかを考える一助となれば幸いです。

著者プロフィール

蒼井倫子  (アオイ リンコ)  (

蒼井倫子(あおい・りんこ)
小児科医。兵庫県出身。奈良県立医科大学卒業後、大学病院、基幹病院にて研修、勤務後、臨床栄養学講師を経て、現在はクリニック、保育園にて乳幼児検診の栄養指導、肥満、偏食、便秘、食物アレルギーなど医療の現場で山積する食の問題と向き合っている。

上記内容は本書刊行時のものです。