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帝国のはざまを生きる
交錯する国境、人の移動、アイデンティティ
- 出版社在庫情報
- 在庫あり
- 初版年月日
- 2022年3月31日
- 書店発売日
- 2022年4月20日
- 登録日
- 2022年3月7日
- 最終更新日
- 2022年5月4日
紹介
ふたつの中国、ふたつの朝鮮、そして帝国と戦後国家というふたつの日本。
あるいは満洲、対馬、沖縄という境界領域。
故郷とは、世代とは、国境とは何なのか。
いまなお「終わらない戦後」を生きる東アジアの現状。
目次
序章 〈帝国のはざまを生きる〉という問い 蘭信三
第Ⅰ部 移動の経験は世代や境界をいかに「越える」のか
総説 はざまから「ナショナル」を問い直す 李洪章
第1章 「結節点」としての在日コリアン――日本と朝鮮半島に跨る親族の繋がりと葛藤 竹田響
第2章 「存在しない国」と日本のはざまを生きる――台湾出身ニューカマー第二世代の事例から 岡野翔太(葉翔太)
第3章 中国帰国者アイデンティティは世代を越えるか――三世の語りを中心として 山崎哲
補論 世代とアイデンティティに関する一考察――後続世代の社会的位置と対抗的アイデンティティに関心を持つ立場から 孫片田晶
第Ⅱ部 朝鮮戦争―― 「帝国のはざま」で起きたポストコロニアル戦争
総説 朝鮮戦争――帝国の戦争から旧植民地の分断へ 原佑介
第4章 朝鮮戦争報道と占領期日本――映像メディアの分析を中心に 丁智恵
第5章朝鮮戦争におけるマイノリティ兵士の従軍経験――ポストコロニアル戦争を象徴するもの 松平けあき
第6章 ポストコロニアル日本語文学と朝鮮戦争――小林勝の反戦運動と麗羅の従軍体験に着目して 原佑介
補論 非武装中立「日本」と「朝鮮戦争」物語――堀田善衛『広場の孤独』と張赫宙『嗚呼朝鮮』の磁場から 高榮蘭
第Ⅲ部 引揚げの表象――植民地を故郷とするということ
総説 引揚げの表象――植民地を故郷とする人びとの視点から 坂部晶子
第7章 安部公房『城塞』における満洲表象 坂堅太
第8章 終わりなき旅の物語としての引揚げ文学――李恢成の初期作品における「引揚性」をめぐって ニコラス・ランブレクト
第9章 湾生映画にみる植民地二世の記憶と表象 野入直美
補論 引揚げ、残留、滞留 西成彦
第Ⅳ部 境界を生きる、境界を考える
総説 〈はざま〉を越え、〈あいだ〉に生きる 八尾祥平
第10章 一九五〇年代末~一九六〇年代日本における韓国人の朝鮮統一運動――『統一朝鮮新聞』の分析を軸に 松田利彦
第11章 戦後日本のジェンダーポリティックスと国土主義――在韓日本人妻とその家族をめぐって 朴裕河
第12章 在韓日本人女性の「遅れてきた〝引揚げ〟」――戦後日本における帰国政策の誕生 玄武岩
第13章 解放以降における在「満」/在日朝鮮人社会の跨境的諸相――包摂と排除の〈あいだ〉 権香淑
第14章 帝国主義的〈境域〉としての八重山・対馬 上水流久彦
第15章 米国人歴史家の生きた東アジアの境界領域――ジョージ・H・カーと台湾・沖縄 泉水英計
補論 境域における場所の多様な物語をめぐるコンフリクト 福本拓
第Ⅴ部 境界を越えて生きるということ
総説 「統治されるひとびと」のアジアという問い 八尾祥平
第16章 近代朝鮮華僑の中華商会設立とその役割――大邱中華商会を中心に 李正煕
第17章 マンチュリアにおける満洲人、旗人、満族 塚瀬進
第18章 日本統治期台湾人家族の日本における発展とその商業ネットワーク――神戸泰安公司陳通ファミリーを中心に 陳來幸
あとがき 松田利彦
前書きなど
従来、〈帝国のはざまを生きる〉という視角は、帝国間の「敵対的な共犯関係という視点に象徴されるように、国際社会のパワー・ポリティクスという巨大な力のなかで生きざるをえない客体としての民衆(や小国)の苦しみを前景化しがちであった。もちろんその側面が重要であることは言うまでもない。だが、本書は、そのような〈帝国のはざま〉に規定される客体としての民衆の姿だけでなく、複数帝国のはざまでその巨大な力に翻弄されながらも、それに立ち向かい、あるいはすり抜ける主体としての民衆によって生きられる〈帝国のはざま〉という側面により注目する。
無理解や相互の齟齬は、人々のレベルだけでなく、国家としても同様であった。一九九〇年代の冷戦体制崩壊後の東アジアにおける「大東亜戦争」に関わる戦争責任や、「大日本帝国」の植民地責任をめぐる「歴史の再審」問題が多数問われながらも、日本という国家も社会も、その課題に適切に向き合うチャンスを生かしてこなかったのだ。
上記内容は本書刊行時のものです。