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戦争社会学研究5 計量歴史社会学からみる戦争
巻次:第5巻
- 出版社在庫情報
- 在庫あり
- 初版年月日
- 2021年6月20日
- 書店発売日
- 2021年6月30日
- 登録日
- 2021年5月24日
- 最終更新日
- 2021年7月2日
紹介
アジア・太平洋戦争の敗戦は、日本に平等化をもたらしたのか?
不平等・格差が拡大しつつあるいま、戦争や暴力による社会の流動化を正当化する言説に対して、計量分析というデータの力は、どのような可能性を提示できるのか。
「特集1」では、大規模な社会調査データを駆使して、人々の不平等感や不公平感といった〈感覚〉を可視化する計量歴史社会学の試みを論じる。
「特集2 二一世紀における空襲の記憶と表現」では、体験者の証言保存活動、博物館展示、白黒写真のカラー化、アニメ映画制作といった実践を通して、空襲記憶の継承と表現について多面的に考究する。
目次
特集1 計量歴史社会学からみる戦争
野上 元・浜井和史・岩井八郎・渡邊 勉
特集2 二一世紀における空襲の記憶と表現
柳原伸洋・福島幸宏・工藤洋三・楢崎茂彌・猪原千恵・片渕須直・山本昭宏・岡本充弘
投稿論文
乳幼児期被爆者による原爆体験の構築――「愛知自分史の会」の事例から/愛葉由依
戦後日本の政軍関係と自衛隊出身政治家の消長――隊友会機関紙『隊友』の言説分析を中心に/津田壮章
書評論文
戦争表象と世代の記憶――福間良明『戦後日本、記憶の力学』/荻野昌弘
シベリア抑留体験と日ソ戦争という前史――富田武『シベリア抑留者への鎮魂歌』、『日ソ戦争 一九四五年八月――棄てられた兵士と居留民』、アンドリュー・バーシェイ『神々は真っ先に逃げ帰った――棄民棄兵とシベリア抑留』/堀川優奈
「戦中派」と映画――山本昭宏編『近頃なぜか岡本喜八――反戦の技法、娯楽の思想』/森下 達
書評
「戦い」への欲望を解剖する――足立加勇『日本のマンガ・アニメにおける「戦い」の表象』/瓜生吉則
ファシズムの理解から右派ポピュリズムの検討へ――田野大輔『ファシズムの教室――なぜ集団は暴走するのか』/伊藤昌亮
テクノロジーによる「記憶」の再構築と戦争社会学研究――庭田杏珠・渡邉英徳『AIとカラー化した写真でよみがえる戦前・戦争』/小川実紗
趣味からみた戦争の現在――吉田純編『ミリタリー・カルチャー研究――データで読む現代日本の戦争観』/小谷七生
テーマ別分野動向
軍隊の人的資源政策――合理主義、文化主義、構造主義/望戸愛果
編集後記(亘明志)
執筆者一覧(五〇音順)
前書きなど
編集後記
『戦争社会学研究』第五巻をお届けする。今号ではふたつの特集があり、全体のタイトル「計量歴史社会学からみる戦争」は特集1から採ったものである。特集2は「二一世紀における空襲の記憶と表現」となっている。特集1は、オンライン上で行われた合評会(二〇二〇年一一月一五日)を誌面化したものであるが、全体討論の中で司会を務められた野上さんが述べているように、渡邊さんのご著書は十分に「衝撃的」であっただけでなく、戦争社会学のあり方を問い直すものとなっている。当初は書評対象本としてあげられていたが、合評会形式とすることで、多角的に論点を提出できたのではないだろうか。また、特集2は、「空襲・戦災と記録する会全国連絡会議」との共催シンポジウムである(二〇二〇年八月二九日)。これも同じくオンライン上で行われたが、戦争研究にとって、記録・記憶の重要性に改めて気づかされるシンポジウムであった。
二〇二〇年度は本研究会も新型コロナ感染拡大の影響を受け、四月に予定されていた年次研究大会は中止せざるを得なかった。多くの学会・研究会はオンラインで行われるようになったが、このときはまだオンライン実施のノウハウも十分にはなく、中止ということになった。その結果、これまで本誌は、年次研究大会を何らかの形で反映していたが、今回はいずれもオンラインで実施された例会を特集することとなった。
投稿論文は三本投稿があったうち、二本掲載。書評すべき本は多数あったが、今号では比較的長文になるものについては「書評論文」(三本)とした。テーマ別分野動向は「軍隊の人的資源政策」について、望戸愛果さんにご執筆いただいた。
新型コロナ収束の可能性はまだ見えず、第一二回戦争社会学研究大会(二〇二一年四月二四日~二五日)もオンライン実施ということになった。新型コロナはしばしば戦争の比喩で語られるが、感染症の歴史が戦争と深い関係があることを考えると、「感染症と戦争」というテーマは本研究会で今後取り組んでもいいテーマかもしれない。
二〇二一年三月
戦争社会学研究編集委員会
亘 明志
上記内容は本書刊行時のものです。