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戦争社会学研究3 宗教からみる戦争 戦争社会学研究研究会(編) - みずき書林
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戦争社会学研究3 宗教からみる戦争 (センソウシャカイガクケンキュウ ダイサンカン シュウキョウカラミルセンソウ) 巻次:第3巻

歴史・地理
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発行:みずき書林
A5判
縦210mm 横147mm 厚さ15mm
280ページ
並製
価格 3,000円+税
ISBN
978-4-909710-09-3   COPY
ISBN 13
9784909710093   COPY
ISBN 10h
4-909710-09-4   COPY
ISBN 10
4909710094   COPY
出版者記号
909710   COPY
Cコード
C3030  
3:専門 0:単行本 30:社会科学総記
出版社在庫情報
不明
初版年月日
2019年6月20日
書店発売日
登録日
2019年5月16日
最終更新日
2019年6月14日
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紹介

宗教と戦争は、人の生死に関わる。
戦争は人間にとって限界状況として立ち現れる事態である。多くの宗教では殺生に対する戒律を有し、相互に殺害し合う事態をもたらす戦争を「悪」と捉えて、平和を好むと考えられてきた。
しかし他方で、宗教や信仰者は戦う主体でもあった。宗教が戦争の道義性を担保して「正戦」として後押ししたり、さらには宗教的世界観、教義から戦いそのものを「聖戦」として積極的に推進することもある。
近代戦で宗教が担ってきた役割とは。信仰と暴力の関係に迫る。

目次

特集 宗教からみる戦争

【第1部 宗教からみる日本の近代戦】
「宗教からみる戦争」特集企画について/西村 明
近代日本の戦争と天皇の神聖化/島薗 進
「皇道仏教」の形成/大谷栄一
〝聖戦〞と網状の実践系―金属品献納運動の宗教学/永岡 崇
ビルマの独立と仏舎利奉遷―桜井兵五郎が構想した大東亜寺/大澤広嗣
無教会キリスト者の「戦争」―矢内原事件と塚本虎二の逡巡/赤江達也

【第2部 旧ユーゴ戦と宗教】
戦後ボスニア・ヘルツェゴビナにおける宗教の役割/ディーノ・アバゾヴィッチ
ボスニア・ヘルツェゴヴィナのムスリムの集団的アイデンティティーについて―レイス・ウル・ウラマー、チャウシェヴィチを例に/長島大輔

【特別寄稿】
戦争社会学とはなにかをめぐって/佐藤健二

【投稿論文】
日中戦争開始前後の日本における周縁的男性像―灰田勝彦のカウボーイソング「いとしの黒馬よ」を例として/永冨真梨
退役軍人としての女性―第一次世界大戦後アメリカにおける女性海外従軍連盟の組織化過程/望戸愛果

【書評論文】
心を病んだ兵士に対する軍のまなざし―『戦争とトラウマ―不可視化された日本兵の戦争神経症』/一ノ瀬俊也
「普遍主義」と「被爆者の声」をめぐって―『ヒロシマ・パラドクス―戦後日本の反核と人道意識』/山本昭宏
被爆問題研究の「いま」、そしてこれから―『原爆の記憶を継承する実践―長崎の被爆遺構保存と平和活動の社会学的考察』/好井裕明

【文献紹介】
戦時性暴力の「モデル・ストーリー」を問う―『戦争と性暴力の比較史へ向けて』/中村理香
「正体」か「構想」か―二つの「総力戦」―『総力戦体制の正体』像/野上 元
今井昭彦による慰霊研究三部作について―『対外戦争戦没者の慰霊―敗戦までの展開』/粟津賢太

【テーマ別分野動向】
戦後七〇年と「戦争の記憶」研究―集合的記憶論の使われ方の再検討/木村 豊

【書評リプライ】
ポジショナリティに意識的な議論へ向けて―書評への応答と書評会に対する雑感/木下直子

編集後記
執筆者一覧 

前書きなど

 戦争と社会の関係を考える上で、宗教をめぐる視点は重要な柱のひとつとなりうる。そもそも戦社研の設立に立ち会った森岡清美や呼びかけ人のひとりである故孝本貢は、宗教社会学者としても長らく活動してきた。私自身、宗教学から慰霊研究に入り、戦争社会学の領域に足を踏み入れている。宗教学や宗教社会学の研究者が戦争に関心を寄せることは、たんなる偶然ではなく、宗教と戦争が関連し、近接したものであることを意味しているだろう。
 宗教と戦争のテーマが近接している様は、両者が人の生き死にに関わるということにとどまらない、広がりと深みを持つ。もちろん、戦争は死やその他の苦難と同様に、人間個々の実存にとって限界状況(ヤスパース)として立ち現れる事態であり、宗教的な救済の観念や実践が発動する契機のひとつである。多くの宗教伝統では、他者に対する危害、とりわけ殺生に対する戒律を有し、相互に殺害し合う事態をもたらす戦争を「悪」と捉えて、平和を好むと考えられてきた。アショカ王が仏教に帰依したのは多くの犠牲者を生んだカリンガ戦争が景気とされているし、メノナイトやクエーカーなどのキリスト教派は非暴力・非戦主義から良心(宗教)的兵役拒否の立場をとる。
 しかし他方で、宗教や信仰者は戦う主体でもあった。十字軍や三十年戦争、一向一揆などがすぐに思い浮かぶ例だろう。宗教が戦争の道義性を担保して「正戦」として後押ししたり、さらには宗教的世界観、教義から戦いそのものが神聖な意味を持つ「聖戦」として積極的に推進することもある。政治・経済的な要因なども複雑に絡むものの信仰者がテロ行為に関わる現象は、二〇世紀末から目立ってきてもいる。アメリカの宗教社会学者マーク・ユルゲンスマイヤーは、現代の宗教テロの実行犯達が危機感・切迫感とともに形而上的・宇宙論的対立図式に自らを位置づけ、勧善懲悪の主体として立ち上がる「聖なる戦争」のイメージをコスミック戦争(cosmic war)として概念化している(ユルゲンスマイヤー、二〇〇三)。
 したがって、宗教は戦争を抑制もすれば促進もする両義的なものであることがうかがえる。

著者プロフィール

戦争社会学研究研究会  (センソウシャカイガクケンキュウカイ)  (

戦争と人間の社会学的研究を進めるべく、社会学、歴史学、人類学等、関連諸学の有志によって設立された全国規模の研究会。故・孝本貢(明治大学教授)、青木秀男(社会理論・動態研究所所長)の呼びかけにより2009年5月16日に発足し、以後、年次大会をはじめ定期的に研究交流活動を行っている。

上記内容は本書刊行時のものです。