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にぎわいのデザイン 吉里 謙一(著/文) - CONCENT
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詳細画像 0

にぎわいのデザイン 空間デザイナーの仕事と醍醐味

発行:CONCENT
四六判
価格 2,800円+税
ISBN
978-4-909290-02-1
Cコード
C3052
専門 単行本 建築
出版社在庫情報
不明
初版年月日
2020年2月10日
書店発売日
登録日
2020年1月28日
最終更新日
2020年2月6日
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紹介

鉄道高架下利用の先駆け「2k540」、全国の名産品が集う「まるごとにっぽん」など、カフェ、ホテル、レストラン、ショールームなどあらゆるタイプの商業施設を手がけている著者は、一過性ではない「にぎわい」を生み出していくことをモットーとしている。「にぎわい」の可能性を創造していくために、クライアントの思惑や感性、場所と人の歴史を深く尊重しながら、空間を立ちあげるために、あらゆる関係性を考え尽くす。人と物、物と物、物と場所、場所と人、そして人と人。すべての関係性を丁寧につないでいくためのデザインだけが「にぎわい」を生み出せるというのが著者の持論だ。仕事を成功させるために、著者が大切にしている「対話を重ねること」「モノで考えること」という、2つのデザインプロセスの実際を、9つのケーススタディとして本書では紹介。また、学生時代、会社員時代、そして独立起業に至るまで、著者がデザインや空間デザイナーという職能をどのように考え、どのように勉強してきたのかが綴られ、「空間デザインをどのように学べばよいのか?」というたくさんの声に経験で応えた本になっている。〔武蔵野美術大学名誉教授 島崎信氏推薦、丹青社 上垣内泰輔氏推薦、両氏との特別対談を収録〕

目次

はじめに

修業時代
〝美しい〞デザインは言葉にできる   
デザインという仕事   
ジレンマを抱えた日々   
自分の理想に近づく仕事
   
空間デザインのプロセスI 
対話を重ねる   
声にならない声がきっとある   
実体験でデザインする   
手からはじめるコンセプト策定   
クライアントと思考を加速させる   
デザインがジャンプする瞬間がかならず訪れる   
考え方を分かちあって、はじめてチームになる   

空間デザインのプロセスII
モノで考える   
マテリアルから空間が立ち上がってくる   
無理のない空間   
つくりこみ過ぎないこと   
原寸でデザインを考える   
空間におけるマチエールの働きは絶大
デザインとして魅力的かどうか   
ハンス・ウェグナーから学んだ革新性   
心がけているのは感情の抑揚をつくること
  
にぎわいを生みだす
事例1 鉄道高架下再開発の先駆けモデル「2k540」 商業施設
事例2 人が使い成熟していくにぎわいの市場「まるごとにっぽん」 商業施設   
事例3 ストーリーとモニュメンタルな造形でコンセプトを具体化「azabu tailor SQUARE」 アパレル   
事例4 店舗のコンセプトづくりからかかわる「両国橋茶房」 カフェ   
事例5 現場にコミットし、精度を高める「Hayama Natural Table Bojun」 レストラン   
事例6 静と動の劇的空間「タケヤ オフィス」 オフィス   
事例7 時代の空気感を具体化する「ビシェス オペーク」 アパレル   
事例8 企業文化の理解とデザインの方向性「眠りギャラリーTOKYO」 ショールーム   
事例9 新幹線の駅にあたらしいにぎわいをつくる「アスティ新富士」 駅施設

対話篇   
これからのデザイナーに求められるもの 島崎信との対話   
空間デザインの未来形 上垣内泰輔との対話   
対談をおえて

おわりに
付録 空間につながる線   

前書きなど

はじめに

以前、事務所のスタッフに、自分の仕事をどのようにまわりに紹介しているのかを興味本位で聞いたことがある。「インテリアデザイン」か「空間デザイン」か……どちらかを使うのだろうと思っていたのだが、答えの多くは「内装の設計」だった。まちがってはいないが、「デザイン」が含まれないことに愕然とした。みな「デザイナー」とは名乗らないという。まだ一人前ではない気恥ずかしさなのか、仕事内容の説明の難しさなのか。みなにとっても、学生時代からの憧れの職業に就いているはずだと思っていたのだが。

本書で取り上げる「空間デザイン」という仕事には、家具も含めた内装をデザインする「インテリアデザイン」、展示会場やショーケースをデザインする「ディスプレイデザイン」なども含まれる。もともとそれらの領域から派生し、実際に応じて統合したデザイン分野といえる。「空間デザイン」は、施工と密接に関わるため、当然「設計」は重要な業務内容である。同じく「設計」を必要とする建築や環境デザインに隣接し、包括されている場合もあるが、それらと同じように学問として確立しているとは言い難い。それゆえに「空間デザイン」は、一見なにを目指して、どう学べばよいものなのかわからないかもしれない。一直線にこの分野を勉強して「空間デザイナー」と名乗るのはじつはかなり難しい。事務所のスタッフが学んできたのも、建築や環境デザインであることが多い。よくよく考えてみれば、そういうことだ。

私自身、学生時代は家具デザインを学んでいた。人間のスケール、身体の仕組みをリサーチし、理想の椅子のデザインを考え、その価値を論理的に語るためのトレーニングを重ねた。思えば、それが自分のデザインの原点であり出発点である。人びとの営みがおこなわれる、人と人との接点が生まれる場所には、どこでも「空間デザイン」の仕事があると断言できる。外側からではなく、人びとが居る場所、つまり内側からの視点が「空間デザイン」の価値を計るものさしだ。学生時代に取り組んだ椅子のデザインから、自分はこの「内側からの視点」を学んだ。換言すれば、それは利用者の視点を意識し、獲得することでもあったように思う。

日本の建築産業には、その経済規模を発展させるために、建物の内側については施工会社にまかせ、建物の内と外とでデザインを別々に進める分業を推進してきた歴史がある。そのため「空間デザイン」はいくぶん独自の成長と発展を経てしまったのかもしれない。しかし、このデザイン分野がもつ専門性と領域横断性は、今後ますます意味をもつようになると考えている。社会経済の発展、イノベーションによるあらたな消費の誕生など、現代社会ではこれまでになかったサービス業態がつぎつぎと生まれている。そうした時代にあって、複雑化する施設の開発には、業種の垣根を超えて多くの専門家が集うようになった。そのなかにあって、「空間デザイナー」が果たすであろう役割と責任も大きくなっていると感じている。

なぜならそうした施設の開発では、デザインの対象はほかならぬ実物、実体験であるからだ。プロデューサーやディレクターがいくらコンセプトを練りあげ、プロジェクトをリードしても、最終的に利用者たちが訪れ、目にし五感で経験する造形を、責任をもって詳細につくることができるのはやはりデザイナーしかいない。またそうした施設では、想定する利用者像の範囲も広い。グラフィック、プロダクト、照明、サインなど、利用者が触れるものすべてが、その空間を構成するデザインに含まれる。あらゆる人びとに快適さや居心地のよさを提供しなければならない。それが「空間デザイン」の仕事の難しさであり、また醍醐味でもある。

本書では、私自身の経験を踏まえて「空間デザイン」の具体的な仕事の内容とそこで必要になる考え方を記した。本文では、物事をおおきく進めるために殊のほか熱量が必要となる、クライアントをはじめとするステークホルダーたち、他業種の専門家や現場を支える職人たちとのコミュケーションについての記述が多くなっていると思う。人と人との関わりこそが、「にぎわい」を生みだすために一番大切にしなければならないと思っているからだ。

本書が、「空間デザイン」という分野についての理解の一助となること、また現在と未来の「空間デザイナー」たちをつなぐ共通知の一部となることを切に願っている。

空間デザイナー 吉里謙一

著者プロフィール

吉里 謙一  (ヨシザト ケンイチ)  (著/文

空間デザイナー。1974年、千葉県生まれ。武蔵野美術大学造形学部卒業。工芸工業デザイン学科でインテリアデザインを専攻、島崎信教授(現名誉教授)のもとで家具デザインを修学。1999年、株式会社丹青社に入社。2007年に独立し、株式会社cmykを設立。現在に至るまで、ショップ、カフェ、ホテル、レストラン、複合施設、展示会場など、あらゆるタイプの商業施設を手がけている。

DDA賞(日本ディスプレイデザイン協会)、DSA賞/日本空間デザイン賞(日本空間デザイン協会)、JCSC賞(日本ショッピングセンター協会)、JCD賞(日本商環境デザイン協会)、SDA賞(日本サインデザイン協会)、APIDA(Asia Pacific Interior Design Awards)、WIN Awards(World Interiors News Awards)、Golden Pin Design Award(Taiwan Design Center)など受賞歴多数。

上記内容は本書刊行時のものです。