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人のつながりと世界の行方
コロナ後の縁を考える
- 出版社在庫情報
- 在庫あり
- 初版年月日
- 2020年9月4日
- 書店発売日
- 2020年9月4日
- 登録日
- 2020年8月1日
- 最終更新日
- 2020年9月4日
紹介
ヒトはその進化の過程において、家族や血族およびそれを超えた集団との「つながり」を育み、独自の社会を築くことで他の生物との差異を獲得し、行動範囲を拡げて数を増やしてきました。人類がここまで地球上の広い範囲に住めるようになったのは、「つながり」をつくってきたからに他なりません。
ところが近年では、家族だけを大切にし、親類づきあいや近所づきあいもあまりせず、コミュニティとの関係をほとんどもたずに暮らす人が多くなっています。また、友人も恋人もほしくない、結婚しない、家族をつくろうとしない人も増え、これについて肯定的な意見も多く耳にするようになりました。さらには若者を中心に、友人がいる人のなかでも、SNSやインターネット上でのバーチャルな「つながり」はあるものの、現実に会って会話をしたり、時間と空間を共有して何かをすることが少なくなってきている傾向があります。
しかし、そうした気運の一方で、誰にも看取られずに孤独死してしまう方がたくさんおられることや、頻発する自然災害への対応にはコミュニティの存在が不可欠なことを思えば、人間にとってリアルな「つながり」の重要性は不変です。それは人と人との接触の削減が求められるコロナ禍においても同様です。むしろ人と会えない時期のつらさは、「つながり」が人類にとってなくてはならないものであることをより強く浮かび上がらせました。
本書では、血縁・地縁・信仰縁・嗜好縁など、世界各地の民族や集団の多様な「つながり」の歴史と現在について、霊長類学、民族学、文化人類学の視点から比較・考察。共通点と差異を観察し、歴史的な変化の状況を踏まえて、コロナ禍を乗り越えて世界の人びとが安全かつ豊かに生きる方途を探ります。
目次
刊行にあたって
◆論考
「霊長類学から考える『つながり』と人間社会──共鳴力と共感力が築いた人類の歴史」
山極寿一
◆座談会Ⅰ
「『つながり』の変容から考える日本の未来──AI 時代にも変わらない共有・共感の必要性」
小河久志+桑野萌+小西賢吾+山極寿一+山田孝子
◆論考
「移動する人々のつながり──カザフ草原に生きる家族の事例から」
藤本透子
◆論考
「ローカル/グローバルをこえるつながりのダイナミズム──チベットのボン教徒を事例に」
小西賢吾
◆論考
「結婚と「つながり」のかたち──中央アジア南部のムスリム社会」
和崎聖日
◆座談会Ⅱ
「『つながり』を取り戻す比較文化力の可能性──ネットから離れて未知のフィールドへ」
小河久志+桑野萌+小西賢吾+坂井紀公子+藤本透子+山極寿一+山田孝子
◆論考
「人はどのような『つながり』のもとで生きてきたのか──希求される『つながり』の未来を読む」
山田 孝子
版元から一言
世界のどの地域に出かけても同じような「もの」があふれ、文化の違いがなくなりつつあると感じる一方で、文化による差異を思い知らされ、異文化理解に当惑することも少なくありません。
比較文化学は、文化人類学のみならず、地域研究、宗教学、社会学、文学、言語学など、さまざまな視点からの比較によって、文化の相違と共通性とを明らかにする学際的な学問領域です。比較文化学を学ぶことは、文化を相対化するまなざしを身につけ、他者(異文化)理解を深めることにつながります。
シリーズ「比較文化学への誘い」は、比較文化学の可能性を考え、その学びの世界へと誘う入門書です。
本書は、比較文化学の総論を示した1巻、食をテーマとした2巻、祭りをテーマとした第3巻、装いをテーマとした第4巻、弔いをテーマとした第5巻に続く第6巻です。
コロナ禍後の世界について提言を続ける山極寿一氏(第26代京都大学総長)が参加した座談会と論考を収録しています。
上記内容は本書刊行時のものです。