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取引情報
ゴーストドラム
- 出版社在庫情報
- 在庫あり
- 初版年月日
- 2017年5月
- 書店発売日
- 2017年5月26日
- 登録日
- 2018年4月5日
- 最終更新日
- 2020年1月28日
受賞情報
1987年イギリス・カーネギー賞
紹介
「昼も夜も、この部屋を見張れ。この子をこの部屋から一歩も外に出してはならん。死ぬまでな」
なぜ息子をひと思いに絞め殺してしまわなかったのか、その理由を知る者はひとりもいない。しかし皇帝の考えというものは、いつの世でも理解しがたいものだ。(本文より)
1991年に金原瑞人の訳で『ゴースト・ドラム 北の魔法の物語』として福武書店より刊行された、英国人作家スーザン・プライスによる「Ghost World」3部作シリーズの第1部『The Ghost Drum(ゴーストドラム)』が、同じ金原瑞人の改訳でサウザンブックスより蘇りました。美しい限定BOXに入れたゴーストシリーズ3冊セットはサウザンブックスのECショップのみで販売しています。
魔法使いにだけわかる言葉を伝える不思議な太鼓、ゴーストドラム。ニワトリの脚を持つ家に住む、若い女魔法使いチンギスは、ある日ゴーストドラムを通して救いを求める叫びを聞きつけた。叫んでいたのは皇子サファ。生まれてこのかた、父皇帝によってずっと塔の小部屋に閉じこめられていた……。チンギスはサファを救い出せるのか。荒涼とした北の国を舞台にくり広げられる、荒々しい魔法の物語。
1987年、イギリス・カーネギー賞受賞作。
■ゴーストシリーズ第二弾『ゴーストソング』
愛する息子は渡さない!
魔法使いに逆らった男の一言から始まる苛酷な運命の物語。
■ゴーストシリーズ第三弾『ゴーストソング』
悪に立ち向かう見習い魔法使いは、世界と自分を救えるのか?
鮮烈で苛酷な闘いの物語、ついに完結。
前書きなど
「昼も夜も、この部屋を見張れ。この子をこの部屋から一歩も外に出してはならん。死ぬまでな」
なぜ息子をひと思いに絞め殺してしまわなかったのか、その理由を知る者はひとりもいない。しかし皇帝の考えというものは、いつの世でも理解しがたいものだ。(本文より)
版元から一言
『指輪物語』『ナルニア国物語』などの正統派ファンタジーにはない衝撃がある
翻訳家・金原瑞人より
いままでにずいぶんファンタジーやファンタスティックな作品を訳してきたが、強烈に印象に残っているのはジョナサン・ストラウドの『バーティミアス』、ニール・ゲイマンの『アメリカン・ゴッズ』、そしてこの『ゴーストドラム』だ。
作者、スーザン・プライスはこの作品で、一九八七年のカーネギー賞を受賞している。
この、雪と氷に閉ざされた世界で展開される凄絶な物語を読んだときの衝撃はいまでもよく覚えている。それまで『指輪物語』『ナルニア国物語』『ゲド戦記』『ウォターシップ・ダウンのウサギたち』といった、いかにもファンタジーらしいファンタジーにどっぷりつかってきた自分にとっては、いきなり熱湯を浴びせられたような気がした。『信ぜざる者コブナント』や『最後のユニコーン』といったある意味、異端的な厳しいファンタジーさえ、ぬるく感じさせる衝撃といってもいい。
この物語は、魔法使いの老婆が、生まれたばかりの女の子を弟子としてもらい受けにいくところから始まる。そして奴隷の身だった母親は、娘の将来を考えて、渡すことにする。老婆は赤ん坊にチンギスという名をつけ、魔法を教えていく。という、いかにもファンタジーらしい設定だが、物語はいきなり闇の世界に転がりこむ。
冷酷非情な皇帝、それに輪をかけて残酷な女帝、虫けらのように殺されていく人々、生まれたときから塔丸天井の部屋に閉じこめられたままの皇子サファ、サファや奴隷の兵士たちを助けようとして、死の中につき進んでいく若き魔法使いチンギス、チンギスを執拗につけねらう老練な魔法使いクズマ、これらの登場人物がさまざまな形でからみあい、もつれあいながらつむぎあげてゆく、血と死に彩られた、嫉妬と復讐と愛と生の物語。
ちなみに主人公のチンギスは物語半ばで、心臓を串刺しにされ、雪を真っ赤にそめる。いったい、物語はどこへいくのか。作者は思いもよらない方向へチンギスを、この物語を引きずっていく。
こんな凄絶な作品なのに、読後感はすがすがしく、ほのかに切ない。
今回、改訂するにあたり、かなり手を加えてみた。旧版を読んだかたもぜひ、再読してみてほしい。
さて、この作品、じつは三部作の第一部で、このあと『ゴーストソング』『ゴーストダンス』と続く。
『ゴーストソング』は『ゴーストドラム』よりも昔の物語で、チンギスの宿敵クズマが重要な人物として登場する。まず冒頭、クズマが自分の弟子となるべき運命を追って生まれた男の赤ん坊の親を訪ね、子どもを渡すように勧めるが、断られてしまう。この機会を二百年も待っていたクズマは怒って、その父親や村人たちに残虐な仕返しをたくらむ。まさに『ゴーストドラム』を反転させた物語だ。
読者の期待をあっさり無視し、読者の予想を見事に裏切って、思いもよらない世界を築き上げるスーザン・プライスの「ゴースト」三部作、どれもが読者の想像力をとことん試すような荒々しいイメージが交錯する。死と滅亡と復活の寒々しく猛々しいファンタジーがここにある。
上記内容は本書刊行時のものです。