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出版者情報
寺田寅彦「藤の実」を読む
- 初版年月日
- 2021年12月31日
- 書店発売日
- 2021年12月25日
- 登録日
- 2021年11月28日
- 最終更新日
- 2024年1月24日
紹介
ある日、寺田家の庭で起きた藤の実の一斉爆発、同じように上野の清水堂で遭遇した銀杏の一斉落葉、そして同時期に起きた娘の怪我や家族の事故…。随筆「藤の実」は、これら一連の出来事を通して、寺田寅彦が物事の偶発する「潮時」について考察をめぐらした短い作品です。
本書では、この名品を物理学、植物学、文学(俳諧論)のそれぞれの立場から現代的な視点で読み直し、その本質を問い直します。関連付録には、寅彦門下 平田森三が書いた入門記事のほか、随筆の背景がわかる同時期の寅彦作品(スケッチ入り)も数篇収録。寅彦日記や書簡から読み解いた詳しい注釈も付け、口絵では、著者の一人が実際に藤の実の射出実験をした記録写真や、寅彦の論文草稿・メモの写真も紹介します。
「藤の実」では、流感の流行や地震の群発、山火事の多重発生、その他、事件事故の多発など、「縁起が良くない」だけでは説明のつかない様々な出来事についても寅彦流の鋭い視線が注がれます。偶然と必然の間に潜むものとは何か、本書は、物事の「潮時」に切り込んだ寺田物理学のエッセンスと寅彦の自然観に迫ります。本随筆は国語教科書にも載った寅彦作品です。
「寅彦のこの随筆の趣旨は、自然界や日常生活で引き続いて起きるいろいろな現象や事件が偶然なのか必然なのかという率直な疑問の提起である。」(本書「まえがき」(松下貢)より)
目次
(口絵には寺田寅彦のメモや共著論文草稿など収録)
●まえがき
●藤の実(吉村冬彦)
●寺田寅彦の「藤の実」を読む(山田功)
●「藤の実」によせて:偶然と必然のはざま(松下貢)
●植物生態学からみた「藤の実」(工藤洋)
●寺田寅彦「藤の実」に見る自然観(川島禎子)
●付録
藤の莢の不思議な仕掛(平田森三)
破片(抄)(吉村冬彦)
雪子の日記(寺田寅彦)
鎖骨(吉村冬彦)
●寺田寅彦 略年譜
上記内容は本書刊行時のものです。