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歩行が広げる乳児の世界 外山 紀子(著) - ちとせプレス
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歩行が広げる乳児の世界 (ホコウガヒロゲルニュウジノセカイ) 発達カスケードの探究 (ハッタツカツケードノタンキュウ)

社会科学
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四六判
縦188mm 横128mm 厚さ14mm
重さ 200g
208ページ
並製
価格 2,200 円+税   2,420 円(税込)
ISBN
978-4-908736-38-4   COPY
ISBN 13
9784908736384   COPY
ISBN 10h
4-908736-38-3   COPY
ISBN 10
4908736383   COPY
出版者記号
908736   COPY
Cコード
C1011  
1:教養 0:単行本 11:心理(学)
出版社在庫情報
在庫あり
初版年月日
2024年10月10日
書店発売日
登録日
2024年8月8日
最終更新日
2024年10月10日
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紹介

領域横断的に発達を見る
乳児期のロコモーション(移動運動)の発達が,知覚,認知,言語,モノや他者とのかかわりなど他の領域の発達に波及していく様相を,観察や実験で得られた研究知見をもとに読み解いていきます。乳児の発達に関心をもつ養育者や保育者,心理学や教育学を専攻する人に。

目次

第1章 発達カスケード
第2章 運動発達と移動の始まり
第3章 歩行の発達と行動の変化
第4章 歩行発達と言葉のやりとり
第5章 歩行発達と視線のやりとり
第6章 モノを見せる,渡す,指さすこと
第7章 模倣とタッチ
第8章 発達カスケードの多様性と冗長性

前書きなど

はじめに

支えにつかまり、足を横に移動させながら歩いていた赤ちゃんが、支えから手を離し、おぼつかない足どりで歩き始める瞬間は、とても感動的です。「オギャーオギャーと頼りなく泣いていたあの赤ん坊が、こんなに大きくなって!」と感慨もひとしおですが、自分の力だけで前に進んでいこうとする姿に力強い生命力を感じるものです。本書では、この歩行を取り上げます。乳児が歩き始めるまでには神経系や運動機能等、さまざまな面の発達を必要としますが、本書で検討する問いは「何が発達することによって、歩行が可能になるのか」ではなく、「歩行が可能になることによって、何が変わるのか」です。
近年、乳児期(〇~二歳頃)のロコモーション(移動運動)の発達が知覚や認知、他者とのかかわり、そして言語など、一見すると運動とは無関係に見える領域へと波及していく現象に、注目が集まっています。この現象は「発達カスケード」(developmental cascades)と呼ばれています。カスケードは「連なって流れる小さな滝」(第1章参照)を意味し、ある出来事が次々と他の出来事に影響を及ぼしていく様相を表します。発達カスケードでは、ロコモーションから言語というように、異なる領域への波及効果に着目します。これまでの発達心理学ではロコモーションなら姿勢・運動領域、言語なら言語領域というように、それぞれの発達は、主として領域内に閉じたものとして検討されてきました。領域横断的な視点に立った検討は十分ではなかったのです。しかし、発達は身体をもった一人の子どもを舞台として展開するのですから、身体領域の変化が他のさまざまな領域に波及していくことは、あらためて考えてみれば当然なのかもしれません。
本書ではロコモーションの中でも、とくに歩行の獲得をきっかけとした変化を見ていきます。乳児期は他の時期と比べて変化のスピードが速いという特徴があります。乳児はわずか数カ月の間にハイハイからつたい歩き、歩行を獲得していきます。ほふく前進のような形で移動していた乳児が立位姿勢を保持したまま移動するようになるのですから、環境からどのような情報を得るのかも、その情報に基づいてどのように感じ、考えるのかも、そして他者とどのようにかかわるのかも大きく変わります。このプロセスでどのようなことが起こるのか、その詳細は各章をお読みください。
「赤ちゃんは歩き始めると語彙も急に増えて、それまでとは別人のようにかかわりを求めてくるようになるんですよ」と、発達カスケード研究の成果を保育者の方に話すと、「そんなことは知っている」といった顔をされることがあります。長年、保育に携わっている方から見ると、歩行開始前後の変化は「当たり前のこと」なのかもしれません。しかし、よく考えてみると、これはとても不思議なことではありませんか。なぜ歩き始めると語彙が増えるのでしょう。なぜ歩き始めるとかかわりを求めてくるようになるのでしょう。本書には、この謎を解くヒントが詰まっています。発達を研究する専門家・大学院生だけでなく、発達について勉強中の学部生、現場で乳幼児の発達に立ち会い支援している保育者・幼児教育関係者、そして子育て奮闘中の、あるいはかつて奮闘していた方々など、多くのみなさまに歩行の魅力、そしてロコモーションの発達を中心とするカスケードのダイナミックな展開をお伝えできればと思います。最後に、本書の企画から出版までのすべての工程に丁寧におつき合いくださり、草稿に対して建設的で有益なコメントをくださった櫻井堂雄氏(ちとせプレス)に心からの感謝をお伝えしたいと思います。浦崎由衣氏には、あたたかくやわらかいイラストを描いていただきました。お二人のご尽力に、心より感謝申し上げます。ありがとうございました。

著者を代表して
外山紀子

版元から一言

個別の領域ごとに進められることの多かった既存の発達研究に対して、領域横断的に発達がどのように展開するのかを微細に見ていく発達カスケードの視点に注目が集まっています。発達のスピードが早く変化を見やすい乳児期において、ハイハイからつかまり立ち、そして歩行へと移動運動(ロコモーション)が変化することで、知覚,認知,言語,モノや他者とのかかわりなどの他の領域がどのように発達していくのかを見ていきます。

著者プロフィール

外山 紀子  (トヤマ ノリコ)  (

1993年,東京工業大学総合理工学研究科博士課程修了,博士(学術)
現在,早稲田大学人間科学学術院教授
主要著作に,『生命を理解する心の発達―子どもと大人の素朴生物学』(ちとせプレス,2020年),『乳幼児は世界をどう理解しているか―実験で読みとく赤ちゃんと幼児の心』(共著,新曜社,2013年),『からだがたどる発達―人・環境・時間のクロスモダリティ』(共編著,福村出版,2024年)など。

西尾 千尋  (ニシオ チヒロ)  (

2019年,東京大学大学院学際情報学府博士課程修了,博士(学際情報学)
現在,甲南大学文学部講師
主要著作に,Putting things in and taking them out of containers: A young child’s interaction with objects.(共著,Frontiers in Psychology, 14, Article 1120605, 2023年),「歩行開始期において乳児が物と関わる行動の発達―保育室での縦断的観察に基づく検討」(共著,『認知科学』28, 578-592, 2021年),「乳児の歩き出しの生態学的検討―独立歩行の発達と生活環境の資源」(共著,『発達心理学研究』29, 73-83, 2018年)など。

山本 寛樹  (ヤマモト ヒロキ)  (

2017年,京都大学大学院文学研究科博士課程指導認定退学,2020年,博士(文学)
現在,インディアナ大学日本学術振興会海外特別研究員,大阪大学大学院人間科学研究科招へい研究員
主要著作に,「乳児の視覚経験の生態学」(『心理学評論』63, 102-117, 2020年)など。

上記内容は本書刊行時のものです。