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発明でたどる未知の足あと
- 初版年月日
- 2022年4月1日
- 書店発売日
- 2022年5月10日
- 登録日
- 2022年5月11日
- 最終更新日
- 2022年5月11日
紹介
本書は、日本が近代化しはじめたころ、金沢市の片田舎で生まれ、その当時、一般的であった尋常小学校を終えた一人の少年、畑外松が、近代化の象徴であった電気を知り、たぐいまれな発明の才を発揮して、成長する様子を描いた工学伝記ノンフィクションである。
外松は、軍隊という場所を利用しながら勉学を深め、高等工業学校という当時の最高教育機関に奉職して、電気関係の発明と研究の大切さを学んだ。しかし、官学が学歴中心であったため、昇進することが出来ず、不二越工業という軍事工場で、発明で出世することが出来たが、敗戦で全て灰燼と帰した。
戦後、自分の発明で財を成そうとし、自動点滅器と屋外計器函を発明し、丁度朝鮮戦争景気の波に乗り財をなしたが、金融引き締めと経営戦略の誤りで倒産してしまった。それでも、必死に生きていく外松と、この影響をまともに受けた子供たちの苦悩を描きながら、工学的研究における学歴の持っている価値を考えてみようと思う。外松は発明で財を成そうと迷路をさまよっていろいろの発明品を作るがすべて失敗に帰した。結局は、発明と財を成すことは別ものであることがわかる。でも、子どもたちはその中から成長し、人生を生きることの大切さを学ぶ。外松は発明で探そうとした、繁栄という名の宝は見つける事が出来なかった。しかし、外松にとって、発明で成功を夢見ながら未知の足あとをたどりながら迷い道をさまよい歩くことが、楽しかったのではないだろうか。
畑外松は、優れた発明の才能を持ち、それで一攫千金の夢を追いながら生きていく、その時代の象徴のような存在だった。畑外松は、残念ながら、企業経営では上手く行かなかったが、同時代に成功し近代日本を支えた、松下幸之助、本多宗一郎達と気脈を通じるものがあり、同じ土壌に生きた多くの発明実業家のひとりとして見つめてみると、近代日本が持っていたある種の諦めない生きる力を感ずる。
目次
まえがき
第1章 はじめに
第2章 おいたち
第3章 軍隊にて
第4章 電気主任技術者として
第5章 研究者への道
第6章 発明と研究
第7章 グライダーと長男誕生
第8章 不二越工業への転職
第9章 不二越工業での発明
第10章 不二越工業との別れ
第11章 畑研究所の設立
第12章 俊明の病気と宗教
第13章 畑式外灯自動点滅器と屋外計器函
第14章 経営の難しさ
第15章 畑電気工業株式会社の倒産
第16章 倒産とその後
第17章 新会社の設立計画と挫折
第18章 明るい兆し
第19章 その後
あとがき
上記内容は本書刊行時のものです。