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牛たちの知られざる生活
原書: The Secret Life of Cows
- 出版社在庫情報
- 在庫あり
- 初版年月日
- 2018年7月
- 書店発売日
- 2018年7月31日
- 登録日
- 2018年5月28日
- 最終更新日
- 2019年8月20日
書評掲載情報
2019-02-23 |
日本経済新聞
朝刊 評者: 絲山秋子(小説家) |
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紹介
「幼いころ、父や母はよくわたしに“お話”を聞かせてくれた。そこにはいつも、牛や豚や鶏や小鳥が登場した。そんな動物たちの物語を、今度はわたしが語り部となって語り継ぐことができればうれしい」(本書より)
イギリスのオーガニック農場でのびのびと暮らす個性豊かな牛たちの日常(と事件)を、愛情豊かに描き出した動物エッセイ。牛たちは食べたいときに好きな物を食べ、広大な牧草地で思い思いの生活を送っている。日常のユーモラスなエピソードから、出産・子育て・死に際しての驚くべき行動まで、彼/彼女の物語は、いとおしいものばかり。動物たちの心のうちを知ると、見慣れた風景が変わってくる。現代の管理化された畜産とは異なる環境から見出された動物と人間のあるべき関係を、生き生きと伝える一冊。「動物文学の新たな傑作」「小さな古典」と英各紙誌絶賛。
これは小さな古典だ。どこかユーモラスだが、おもしろさは作りものではない。登場する牛たちは、それぞれに豊かな内面と、多様な個性をもっている。著者は長年にわたる経験から、効率ではなく動物のことを第一に考えた農場経営について真摯なメッセージを投げかけている。
――フィナンシャル・タイムズ
まさに目からうろこの一冊である。物言わぬ動物たちが、何も言わないからといって何も考えていないわけではないことを教えてくれる。
――アラン・ベネット(『やんごとなき読者』著者)
知的な発見に心奪われる、チャーミングな物語。動物たち(牛が中心で、鶏やほかの生き物も登場する)を、尊敬と思いやりに値する「個人」として見る視点に貫かれている。魅惑的、感動的で、読み手の心をとらえて離さない。動物文学の棚に新たな名作が加わった。
――リディア・デイヴィス(『ほとんど記憶のない女』著者)
牛たちの知性をめぐる、美しく、心のこもった小さな本。
――ジェイムズ・リーバンクス(『羊飼いの暮らし』著者)
目次
アラン・ベネットによる序文
はじめに
牛たちの知られざる生活
必要は発明の母/アリスとジム/母と娘/ジェイク/人間もときには役に立つ/肉親を亡くしたとき――バンブル一族の話/眠りについて/鳴き声が物語ること/牛はよい判断をする/牛にうわべのつき合いはない/一筋縄ではいかない雄牛たち/ファット・ハット二世/牛にも好みがある/目は口ほどにものを言う/牛の記憶力/馬について/羊、豚、鶏について/難しい出産のときも、牛は正しい判断をする/ディジー一族の話/農場では日々事件が起こる/体を使ったコミュニケーション/グルーミングについて/ミルクにも個性がある/子牛は遊びを考案する/忘れがたきアメリア/鶏は遊び好き/鶏の新たな一面/ふたたびアメリアの話/野鳥の話/自己治癒力について/リトル・ドロシーの話
牛について知っておくべき20のこと
鶏について知っておくべき20のこと
羊について知っておくべき20のこと
豚について知っておくべき20のこと
カイツ・ネスト・ファームについて
参考資料
訳者あとがき
前書きなど
「はじめに」より
牛たちが遊んだり、体を舐めあったり、小競り合いをする様子を目にするとき、それがきょうだいなのかいとこ同士なのか、友達なのか仲が悪いのかを知れば、知らなかったときとはすっかり違う光景が立ち上がってくる。また、牛たちの関係性がわかれば、オスの子牛は弟の面倒をよく見ることや、姉妹は常に一緒にいるか避けあうかのどちらかだということ、さらに牛の家族にはひとところに集まって寝る家族と、そうでない家族があるといったことが見えてくる。
牛は人間と同じくらい個性に富んでいる。利口な牛もいれば、鈍い牛もいる。人なつこかったり、慎重だったり、けんか早かったり、おとなしかったり、独創的だったり、ぼうっとしていたり、プライドが高かったり、恥ずかしがり屋だったりする。ある程度の規模の農場なら、いまあげたような性格の牛はだいたい揃っているはずだ。わたしたちの牧場では長年にわたって、そんな動物たちの個性を尊重し、それぞれを“個人”として扱うことを理念に掲げてきた。
わたしの両親が農場経営をはじめたのは、一九五三年のことだ。わたしは生後一二日、兄のリチャードはもうすぐ三歳になろうとしていた。はじめは乳牛五頭と中古のトラクター一台からのスタートで、電気も電話もなかった。
やがて、エアーシア種の乳牛を少しずつ買い足し、ウェセックス・サドルバック種の豚も飼うようになる。野ウサギの多い土地は、作物を育てるのには向いていなかった。
当時、国の補助金は、設備の増強に対して交付されていた。政府は、最新の機器を導入するよう圧力をかけた。両親は、自然な環境で動物を育てたいという考えをもっていたが、有機農法という言葉すら知らず、国の方針と違う道を進むにはそれなりの時間がかかった。ただ、ふたりともはじめから心に決めていたのは、動物に敬意をもって接し、快適な環境で育てようということだった。
幼いころ、父や母はよくわたしに“お話”を聞かせてくれた。そこにはいつも、牛や豚や鶏や小鳥が登場した。そんな動物たちの物語を、今度はわたしが語り部となって語り継ぐことができればうれしい。
上記内容は本書刊行時のものです。