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踊る女と八重桃の花 長谷川 春子(著) - 共和国
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踊る女と八重桃の花 (オドルオンナトヤエモモノハナ)

文芸
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発行:共和国
四六変形判
縦188mm 横125mm 厚さ18mm
重さ 300g
272ページ
仮フランス装
価格 2,500円+税
ISBN
978-4-907986-88-9   COPY
ISBN 13
9784907986889   COPY
ISBN 10h
4-907986-88-2   COPY
ISBN 10
4907986882   COPY
出版者記号
907986   COPY
Cコード
C0095  
0:一般 0:単行本 95:日本文学、評論、随筆、その他
出版社在庫情報
在庫あり
初版年月日
2022年4月30日
書店発売日
登録日
2022年4月10日
最終更新日
2022年8月29日
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書評掲載情報

2023-11-15 日本近代文学館  316号
評者: 下平尾直
2022-06-19 北海道新聞
評者: 土井礼一郎(歌人)
2022-06-04 東京新聞/中日新聞  朝刊
評者: 土井礼一郎(歌人)
2022-06-01 現代女性文化研究所ニュース  No.61
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紹介

「友よ、男に描けない素的な味わいとシャルムを持つタブローを作ろうではありませんか」
--
日本画を鏑木清方、洋画を梅原龍三郎に師事。姉で劇作家の長谷川時雨が創刊した、女による女のための雑誌『女人芸術』で注目されると、戦時下には単身従軍画家としてアジア各地へ赴き、戦後は本音で語るエッセイストとして活躍。そんな女性洋画家の先駈けとして知られる、長谷川春子の初期のみずみずしい随筆や画業を精選して収録する、没後初の選集。
著者が生前に刊行した著作9点より、『長谷川春子小画集』(1929)、『満洲国』(1935)、『戯画漫文』(1937)の初期3作に収録されたエッセイやイラスト、油彩のほか、単行本未収録作、単行本の装幀や新聞連載小説の挿画を収めました。従軍するまでの長谷川春子の仕事が、本書によって見渡せます。カラー図版16頁。

2022年8月27日にNHKで放送された「ETV特集  女たちの戦争画」では、本書に収録した図版も多数紹介されました。

目次

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1、戯画漫文
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 時雨女史と私
 
 華くらべ女作家
 ――長谷川時雨、今井邦子、吉屋信子、岡田禎子、
  林芙美子、平林たい子、宇野千代、阿部ツヤ子
 
 文人六景
 ――内田百閒、室生犀星、芹沢光治良、
  柳澤健、廣津和郎、川端康成

 当代人気帖
 ――川端康成、水の江ターキー、夏川静江、
   梅原龍三郎、関屋敏子、阿部眞之助

 人気者八佳選
 ――ピストン堀口、原信子、竹久千恵子、エノケン、
  藤山一郎、飯田蝶子、岡譲二、水谷八重子

 秋天七つ星
 ――武田麟太郎、林房雄、片岡鉄兵、尾崎士郎、
  矢田津世子、窪川稲子、丹羽文雄


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2、はるこや、はるこや
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 食べるは楽し

 淡路の米

 台所

 残月

 鏡が少なすぎる

 体は国の手形也

 貯蔵

 はるこや、はるこや

 
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3、サボワ閑日帖
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 船室より

 アウ・ルヴオア・巴里

 個展

八重桃の花、エッフェル塔

サボワ閑日帖

巴里画商風景

寒中のシベリヤ
 

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4、東京の一片
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 浮世画展覧会評

 人物画

 七彩会のこと

 絵の具皿――その三枚

 夜泊とりどり

 秋影舗道ニ来ル

 東京人の新大阪見物

 東京の一片

 ヘレニズムの微風


   解説にかえて――長谷川春子の「花下遊楽」

前書きなど

「かう書いて来ると誠にのんびりした人生のやうでもあるけれども、世の中はさうお目出度いものでもない。父の引退から始まつて好不況の世の中、世界戦争、震災、フアナテイクな思想に取り囲まれて冷然としてゐるので絵描きは頭が悪いと冷笑されてこつちもフンと思つたこともある。中産の私の家族の廻りだつて一と通りの浮世の波風は騒いで過ぎてゐる。
 ただ生来の楽天家で、あんまりヘコまないだけだが、困難事のやりくりと殊に借金取をして怒らせない妙技を自慢とする。諸君借金取りにオコラレたら私にいひ訳をひとつ頼んで見給へ。
 かういふ女性の成因を多少さかのぼつて考察すると参考にすべき三人の血系の女がある、おばあさんにお母さんに時雨女史。
 父方の祖母は、ただの町女房ではあるが非常に才気煥発で、あふれるやうな明敏な智恵と人情味のあつた、現はれざる女傑タイプの人だつたらしい。父が、
「俺のオフクロは男だつたら大臣にでも成つたらう」
とよくいつた。この人の面白い挿話もいくつか聞かされてゐる。
 お母さんは智恵はとても姑には及ばないが、また一種の女傑でおそるべき努力家で活動家だつた。強い生活力を持つ人だつた。彼女の物心のつく時から死ぬ数年前まで約七十余年間恐らく彼女は夜は一番おそく寝、朝は一番早く起きて働き続けた。そのエネルギイは驚嘆すべきものだ。この母はその上倦むといふことを知らず最後まで建設的な心の人だつた、その活動エネルギイは恰度時雨女史と私との二人分は確かに貯へてゐたやうだ。うらなりの娘は到底及びつこなし。
 時雨女史のことは読者が知つてゐられるから書くには及ぶまいが、彼女が夫君三上於莵吉と道を開拓してゆく姿、くつがへつたり起き上がつたり、前車の後塵をながめてゐるのもこれまた得難い人生参考指針だ。
 さあ大変、話しに色つやをつける恋愛のことを書く頁がない。まだ恥かしながら結婚はしたことがない。恋愛は? そりやああるだらう、私だつて木の股から生れて来たのぢやありません。
 まだ一度も男と駈け落ちしたこともないし、時雨女史を煩はしたこともない。お母さんがいつた如く、食慾芸術慾ほどにはハツキリした慾望の形を取らないがまあつまりは恋愛に十分盡すほどに手が廻らなかつたのですな。女と生れて気のきかない自慢にならないことだからその内に更に十分やるつもりでゐる。諸君よ、その時は妬くなよ。」――『戯画漫文』より

著者プロフィール

長谷川 春子  (ハセガワ ハルコ)  (

1895年、東京に生まれ、1967年、東京に没する。洋画家、文筆家。
長姉で劇作家の長谷川時雨の勧めで画家を志し、鏑木清方、梅原龍三郎に師事する。1929年~31年、フランスに遊学。帰国後、満洲事変を契機に画家として従軍。戦後はエッセイスト、挿画家、装幀家としても多くの仕事を残した。
画集に、『長谷川春子小画集』(女人芸術社、1929)、エッセイ集に、『満洲国』(三笠書房、1935)、『戯画漫文』(昭森社、1937)、『北支蒙彊戦線』(暁書房、1939)、『南の処女地』(興亜日本社、1940)、
『東亜ところどころ』(室戸書房、1943)、『大ぶろしき』(大日本雄弁会講談社、1955)、『ニッポンじじい愛すべき』(生活社、1955)、『恐妻塚縁起』(学風書院、1956)がある。

上記内容は本書刊行時のものです。