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日本で生きるクルド人 鴇沢 哲雄(著) - ぶなのもり
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日本で生きるクルド人 (ニホンデイキルクルドジン)

社会一般
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発行:ぶなのもり
四六判
縦188mm 横128mm 厚さ15mm
208ページ
並製
価格 1,600円+税
ISBN
978-4-907873-06-6   COPY
ISBN 13
9784907873066   COPY
ISBN 10h
4-907873-06-9   COPY
ISBN 10
4907873069   COPY
出版者記号
907873   COPY
Cコード
C0036  
0:一般 0:単行本 36:社会
出版社在庫情報
在庫あり
初版年月日
2019年8月1日
書店発売日
登録日
2019年7月24日
最終更新日
2019年8月5日
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書評掲載情報

2021-06-03 日本経済新聞    夕刊
評者: サヘル・ローズ(「読書日記」)
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紹介

祖国での迫害と差別、逃れてきた日本での過酷な扱いと軋轢、政治と入管行政の狭間で翻弄される在日クルド人の今を追う。
日本国内に約2,000人、川口市を中心に埼玉県南部には約1,500人が暮らすといわれるクルドの人々。彼らは国を持たない最大の民族である。家や町中、ときには入管収容施設の面会室で、彼らの声に耳を傾けて書かれた記事から浮かび上がる彼らのライフヒストリー、現在の暮らしと心境、そして取り巻く環境。
毎日新聞で長期にわたり連載され、好評を博した「故郷遥か 川口のクルド人」を元に、記事に載らなかった言葉や新たな取材内容も盛り込み、書籍化した。

目次

序章

第1章 日本にやってきたクルド人
 クルド民族の新年祭「ネブロス」
 第一世代
 誰が始まりだったのか
 日本に来た最初のクルド人女性

第2章 クルド人を追い詰める「収容」
 母の呼びかけ
 心臓の持病抱え
 「難民」を追い詰める「長期収容」
 入管収容施設での自傷
 インド人収容者の自殺が与えた衝撃
 ある女性収容者の訴え

第3章 困難に耐えながら
 困難な難民認定
 ある父の悲劇
 父の名を呼ぶ娘
 アレウィー教徒
 大橋毅弁護士インタビュー

第4章 地域に根付くクルド人
 地域の中の日本語教室
 クルド料理教室
 伝統手芸「オヤ」
 「ハッピーケバブ」
 小学校の日本語学習は今
 盛人大学で出会ったクルド人とその後の話

あとがき

前書きなど

序章

 「クルド人」。その言葉を聞いたのは、10年ほど前のことだ。当時私は毎日新聞社が取材拠点を置く埼玉県川口市に記者として赴任した直後で、取材を受け持つ地域の行政機関などを日々訪問し、ニュースのネタを探し回っていた。
 その日、川口市の隣りにある蕨市の広報課を訪れ、事務机の脇にあるイスに座り込んで顔見知りの職員と雑談していた。いきさつは思い出せないが、川口市との市境にある蕨市民公園で開催された「ネブロス」の話を職員が始めた。ネブロスはクルド民族の祭で、何年か前からその公園で行われていたという。春分の日前後に開催されるその祭はすでに1カ月ほど前に終わっていて、取材はできなかった。

 その時点で私がクルド民族について知っていたことといえば、イラクの独裁者・フセインの毒ガス攻撃で数千人のクルド人が虐殺された「ハラブジャの悲劇」くらいだった。ネブロスについてもろくに知識はなかったと思う。クルド人に関するニュースを新聞などで見かけることはほとんどなかった。
 故郷から数千キロも離れた日本の地、それも私が取材をカバーする川口市周辺にクルド人がいるという事実を知り、「クルド」という言葉は奇妙に私の心にひっかかった。

 日本の首都東京と荒川を挟んで隣接する埼玉県南部の川口市は、かつて鋳物産業で栄え、女優の吉永小百合さんがヒロイン役で出演した映画『キューポラのある街』(1962年公開)の舞台としても知られる。映画にも描かれているが、大勢の朝鮮半島出身者たちがかつてこの地域の鋳物工場などで働いていた。
 そんな歴史も絡むのか、人口60万を超す川口市には総人口の約6%に当たる約3万6000人の外国人が住んでいる(2019年3月現在)。東京への交通アクセスのよさに加え、比較的家賃が安いことなどから、外国人が多く住むようになったといわれる。
 その半数は中国人だが、JR蕨駅が最寄り駅となる川口市北西部の芝地区周辺に、中東風の風貌を持つ外国人が数年前からとくに多く見られるようになった。彼らは国を持たない最大の民族といわれるクルド人だ。トルコ、イラク、イラン、シリアなどに広がる「クルディスタン(クルド人の地)」に古くから住んでいた。第一次世界大戦後、その地を支配していた欧米列強からそれらの国が独立する際、その国境線は民族や言語の違いを無視して引かれ、クルディスタンは各国に分断され、クルド人は自分たちの国を建設することはできなかった。その結果、クルド人は各国で少数民族となり、差別や迫害を受けるようになった。

 1990年代初頭に初めて、クルド人は日本に足を踏み入れたとみられる。その後は、日本にいるクルド人が家族や親族を呼び寄せるなどして次第に増え、川口市周辺に1500人規模のコミュニティーが形成された。彼らの多くは「難民」として来日したものの、日本の厳しい入国管理制度の中で、難民認定されないばかりか、帰国を迫られる厳しい環境にさらされている。

 法務省の統計によると、2017年に難民認定を申請した外国人は1万9628人で、うちクルド人を含むトルコ出身者は1195人。だが、実際に難民認定されたのはわずか20人だった。同時期、ドイツで14万7671人、米国2万6764人、カナダ1万3121人が難民認定されている。日本は欧米各国に比較し、いかに認定数が少ないかがわかる。さらに、我が国でクルド人が難民認定されたケースは過去1件も報告されていない。
 2018年6月末現在の在留外国人数は263万人に達し、過去最高になった。国籍・地域別では中国がトップで74万1656人、続いて韓国45万2701人、近年急増するベトナム29万1494人、フィリピン26万6803人、ブラジル19万6781人などが続く。トルコは5393人で、トルコ国籍のクルド人はそこに含まれるが、日本での滞在を許可されて交付される在留カードを持たないものはその数字に含まれていない。
 クルド人やその支援者などに聞くと、現在約2000人が日本に滞在し、うち約1500人がクルド人の最大集住地区・川口市を中心に暮らしているという。そのうち、日本での在留を正式には許可されないため在留カードを持たず不安定な生活を強いられている人の数は300~450人程度と推測されている。

 言葉や文化の違い、生活する上での相互扶助の必要性などから、異国で生きる外国人は一定地区に集まって生活する傾向がある。もちろん、日本で生きるクルド人も例外ではない。では、なぜ川口市周辺なのだろうか。どんな生活をし、どんな状況に置かれているのだろうか。彼らに未来はあるのだろうか。「日本のクルド人」の今と過去を追った。

著者プロフィール

鴇沢 哲雄  (トキザワ テツオ)  (

長野県生まれ。慶応大学法学部卒。毎日新聞社入社。
1995年、日本で初めてのインターネット総合ニュースサイト「JamJam」創設に加わり編集長、サイバー編集部長などを歴任。
2008年から埼玉県川口市を拠点に取材活動。毎日新聞埼玉版の連載企画「ニイハオ 川口の中国人」「彩の国のアフリカ人」「学び 出会い 喜び 川口自主夜間中学の30年」「引きこもり 光求めて 『太陽の輪』の仲間たち」「性的少数者 LGBTを生きる」などを執筆。
2019年、退社。現在はスペイン・バルセロナで暮らす。

上記内容は本書刊行時のものです。