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なぜアマゾンは「今日中」にモノが届くのか
- 出版社在庫情報
- 在庫あり
- 初版年月日
- 2017年12月
- 書店発売日
- 2017年12月25日
- 登録日
- 2017年11月13日
- 最終更新日
- 2018年1月29日
書評掲載情報
2018-03-12 |
物流ニッポン
2018年3月12日 評者: 井内亨 |
2018-02-18 | 産經新聞 朝刊 |
2018-02-07 | SERENDIP 2018年2月7日 |
2018-02-01 | ダイヤモンド・チェーンストア 2018年2月1日号 |
2018-01-16 |
輸送経済
2018/1/16日付 評者: 矢田健一郎 |
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重版情報
2刷 | 出来予定日: 2018-02-01 |
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紹介
「速く・確実に・高品質のモノが届く」現代社会のインフラとも呼べる存在アマゾンは、どうしてそんなに速くモノを届けられるのか。一体、どんな人間が、どんな仕組みで、どんな仕事をしているのか。本書では、今まで謎に包まれてきたアマゾンの実態について解き明かしていきます!
・次々と新サービスを打ち出す、アマゾンの「本当の強さ」とは
アマゾンプライムナウやアマゾンエコーなど、様々な新サービスを展開するアマゾン。こうした施策が可能なのは一体なぜか。アマゾン立ち上げメンバーで、サプライチェーン部門マネージャを務めた著者が、アマゾンの「本当の強さ」について、内部から解明します。
・世界No1の物流戦略は一体どこが違うのか
物流への桁外れな巨額投資や、製造業並のサプライチェーン管理など、「物流」の捉え方が他の企業とは全く違う、アマゾン独自の物流戦略を紹介。なぜアマゾンはここまで物流にこだわるのか、そして成功して来たのか、その謎を紐解きます。
・アマゾンの物流を支えるロジカル経営
様々なサービスや施策、最先端の物流戦略を考え、実行できるアマゾンの内部構造はどうなっているのか。緻密なデータに基づき、徹底的にロジカルな判断を下すアマゾンの経営手法や文化、一流の人間だけが集まる人材戦略について公開します。
「アマゾン一強時代」と言われるなかで、果たして日本企業は太刀打ちできるのか。アマゾンの強さの真の理由を知ることで、対抗するヒントが見つかるでしょう。
目次
はじめに
1章 アマゾンが引き起こした激変
1-1 通販の常識を変えたアマゾン
インターネットによって変化した通販
配達のスピードが変わった
日本の小売業の問題
アマゾンの桁外れの投資
アマゾンの本当の凄さとは
1-2 アマゾンと日本の物流
ヤマト・佐川・日本郵便にみる日本の物流
取引先に競争させるのがアマゾンの戦略
アマゾンとの関わりによって物流業界に何が起きたか
今後のアマゾンと物流の関わりは
2章 アマゾンの物流戦略
2-1 唯一の顧客との接点を大切にする
アマゾンはなぜ物流にこだわるのか
物流戦略を効果的に働かせるアマゾンの組織体系
アマゾンの商品はどのくらい速く届くのか
2-2 上流から下流までつながっていることが命
販売と物流が一体
物流への大きな投資
製造業並のサプライチェーン管理
自前でシステム開発を行う強み
製造業並の納期遵守意識
断じてサービスレベルは落とさないのがアマゾン流
2-3 アマゾンの購買管理
アマゾン独自の需要予測システム
2-4 アマゾンの注文管理
フルフィルメントパスの最適化
2-5 アマゾンの在庫管理
在庫管理の重要性
財務諸表で見る在庫の位置づけ
需要予測・EDIと連動したアマゾンの在庫管理
2-5 アマゾンの倉庫運営
倉庫では一体何が行われているのか
DC(保管型倉庫)における倉庫運営の流れ
徹底した数値管理
アマゾンで働くロボット
早くから導入されていたWMS
フリーロケーションで多品種小ロットに対応
2-6 品質にまでとことんこだわる
品質基準を上げるための施策
トヨタ式のカイゼン・アンドンを導入
コラム:アマゾンの物流の歴史
アマゾンもやはりガレージから始まった
ウォルマートから人材を引き抜き
アマゾンの物流を変えた人物
3章 アマゾン物流をささえるロジカル経営
3-1 顧客最優先・長期視点
ただのキャッチフレーズではない「お客様のために」
長期視点での投資とビジネス展開
3-2 プラットフォームとしてのアマゾン
他社の商品を販売させるマーケットプレイス
シングル・ディテイル・ページで差別化
FBAで高いサービスレベルの物流代行を提供
3-3 アマゾン式経営の3つの柱
3-4 アマゾンのKPI
KPIを本気でレビューする週次経営会議
ファイナンスチームの強さも特徴の一つ
年2回の予算作成は戦い
パワーポイントではなく全て文章で
3-5 アマゾンのオペレーション
不明点はまず社内のナレッジベースにあたる
課題管理票で日々行われる業務改善
ITの仕組みをオペレーションに応用
3-6 アマゾンのシステム
自社開発とアジャイルによるスピーディーな対応
3-7 アマゾンの人材戦略
一流の人が吸い寄せられる会社
変わり続けられる人しか働けない
高い人材のレベルを維持する仕組み
コラム:アマゾン流(?)英語習得術
4章 知れば知るほど真似のできないアマゾンの物流
4-1 日本においての物流課題
日本企業においてアマゾンに匹敵する物流システムが作れない理由
カタログ通販用倉庫をeコマース用に転用しようとした部品メーカー
TC倉庫を通販用在庫の保管に使おうとしたアパレル企業
日本企業が物流を変えられないもう一つの大きな理由
4-2 日本企業が今後とるべき物流戦略
日本企業が行うべき人材教育
日本企業が行うべきオペレーション改善
日本企業が行うべきシステム投資
4-3 日本企業のアマゾンへの対抗策
おわりに
前書きなど
アマゾンの企業理念は、「地球上で最も豊富な品揃え」そして、「地球上で最もお客様を大切にできる企業であること」の二つです。この二つを実現するために、妥協せず、常識に縛られず、様々な施策を打っているのがアマゾンという会社です。
それが如実に表れているのが、投資額の大きさです。アマゾンの業績を見てみるとわかりますが、売上は順調に拡大しているものの、利益については、非常に小さくなっています。これは、物流(Fulfillment)とテクノロジーにかける投資が大きいためです。
大きな投資を行うようになったのは、売上が拡大してからではありません。創業当初から、アマゾンは大きな資金調達に成功し、それを元手に、思い切った投資を行ってきました。
私がアマゾンジャパンに参画したのは2001年のことでした。その前年にテレビでNHKの特集を観て、初めてアマゾンのことを知った時にも、やはりその投資額の大きさに非常に興味を惹かれました。本を1冊売っても200円くらいしか儲からないのに、投資を100億円もする……。いったいこの企業は何を考えているのだろうかと。
入社してみてわかりましたが、アマゾンは闇雲に投資を行っていたわけではありません。もちろん、創業から数年間の大きな投資というのは、ジェフ・ベゾスの英断によるもので、時には他のメンバーの反対にあうこともありました。しかし、これらも無鉄砲に行っていたわけではありません。ベゾスは、アマゾンが取扱品目を増やし、物流システムを構築して、規模を拡大していくことで、流通イノベーションを起こせると確信していたのでしょう。
当初はベゾスの強いリーダーシップのもとに行っていた大きな投資も、今ではアマゾンの企業文化となっています。もちろん、結果的に失敗をすることもありますが、綿密な計算と分析に基いて、これと見定めた目標を達成するために、様々な投資をしているのです。
なかでもアマゾンが物流に大きく投資をするのは、そこを改善していくことで、顧客満足度を上げることができ、生産性を上げることもできるからです。つまり、長期的な視点で、未来を見据えて、物流への莫大な投資を行ってきているわけです。それを、同じ理念のもとに何年も続けてきています。
物流への投資と一言で言っても、様々なものがあります。倉庫自体の数を増やしたり、拡張したり、マテハン(マテリアル・ハンドリングの略)と呼ばれる倉庫用の機械設備の導入、物流システム、人材への投資も含みます。
これらの投資の積み重ねで、今のアマゾンの物流システムがあります。一朝一夕にできたものではないので、他の企業がこれを形だけ真似したとしても、うまく回るものではないでしょう。
アマゾンの物流への大きな投資は、人材の面でも表れています。一般的な企業においては、物流部門というのはそれほど重要視されません。必要だから持ってはいますが、そこに配置される人材については、それほど気にしていないと思います。
しかし、アマゾンは、物流システムを重要視する中で、最高の人材をそこに配置するようにしています。倉庫管理者の多くは、MBAを取っている人間が従事しています。新卒採用された東大卒の若手さえも、倉庫でピックをするところから仕事を始めます。アマゾンが、どれほど物流を重視しているか、そこに優秀な人材をあてることが大事だと考えているかが、おわかりいただけるでしょう。そして、ここまで物流に投資をする企業はアマゾン以外にはないと思います。
私自身、アマゾンジャパンで、2002年から2006年までSCM(サプライチェーン・マネジメント)のマネージャとして、物流や倉庫オペレーションの管理をしていましたし、多くの採用面接もしてきました。アマゾンの物流部門の人材のレベルの高さを知っている私からすると、他の企業も、もっと物流部門にあてる人材の教育、底上げに力を入れるべきだと感じます。物流は誰にでもできる仕事ではありません。経営やテクノロジーの知識がある人が必要です。
もちろん、こうした優秀な人材を雇おうとすると、お金がかかります。これが投資になるわけです。一般的な日本企業では、物流部門の一般社員にそんな高い給与は払えない、という話になりますが、それは物流に対する経営層のコミットメントの違いによるのです。
倉庫にどんなに優れた設備やロボットがあっても、それを動かし、何か非常事態があった時に判断をするのは人です。物流部門に優秀な人材をあてて、スムーズに物流を動かすこと、それだけでなく、現状の物流システムをより効率化していくことが、会社の理念に沿って顧客満足度を上げ、会社の売上を増やし、生産性も上げて、利益も増やすことになります。つまり、未来への投資になるのです。これがアマゾンの基本的な物流戦略の考え方です。ですから、物流に大きな投資をすることは、アマゾンにとっては非常識でも何でもないのです。
他から見ると常識はずれの投資をしているように見えますが、アマゾンの理念や、戦略の根底にある考え方を知ると、納得できるものになるのではないでしょうか。
ここ数年、アマゾンに関する書籍や雑誌の特集などが多く出ていますが、アマゾンを内部から知っている私からすると、そのほとんどは表面的にアマゾンのサービスや施策を取り上げているだけで、結局「アマゾンはすごい」で終わってしまっているように思えます。これでは、アマゾンの本当の強さはわからない、日本企業が参考にすることもできない、と感じたのが、本書の出版を思い立ったきっかけです。
つい最近(2017年10月)もAmazon Keyという、留守中に配達員が家に入って荷物を届けるサービスが発表されて話題になっているように、アマゾンは次々と、驚くような新サービスを始めます。しかし、グローバル展開する前にやめることも多くあります。
アマゾンの強さは、こうした新サービスを思いついて実行できることにあるのではありません。アマゾンは、新サービスを始める際に、どうなれば成功と言えるのか、という基準を持って始めます。そして、週次ベースで徹底的に様々な指標をレビューしたうえでビジネス判断を行い、失敗なら素早く撤退し、成功の見込みがあるなら何年赤字でも継続して改善をしていきます。ですから、無闇に新サービスを毎月のようにリリースしているように見えますが、明確な理由と裏付けにもとづいて試行錯誤をしているのです。次々と打ち出されるアマゾンのサービスや施策を個別に見ているだけでは、こうしたアマゾンの強さの秘密はわかりません。
本書では、アマゾンの物流戦略を中心に、アマゾンという会社がなぜそんなにも強いのか、一体どんな理念や文化を持って、経営を行っているのかを、紐解きたいと思います。日本企業の経営者や物流責任者、アマゾンと関係する企業の全てのビジネスパーソン、そして、アマゾンのサービスを享受する一般の方にもわかりやすく、アマゾンという会社の実態を紹介していきます。特に、アマゾンに対抗しようとする企業の経営者や物流責任者の方に、アマゾンの強さの秘密を認識してもらい、このままでは到底だめだ、変わらなければいけない、と奮起する材料にしていただくことが一番の狙いです。
「アマゾンはやはりすごい」で終わらずに、何かしらのヒントを得て、一歩を踏み出す原動力にしていただければ幸甚です。
2017年11月
株式会社鶴 代表
林部 健二
上記内容は本書刊行時のものです。