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特講 私にとって文学部とは何か 「遠方のパトス」のために
- 初版年月日
- 2021年4月21日
- 書店発売日
- 2021年5月13日
- 登録日
- 2021年3月24日
- 最終更新日
- 2021年4月21日
紹介
哲学科教員の人文エッセイ & 書き下ろし授業
ゼミ生の卒論、修士論文が書けず苦しんでいた院生時代に光となった論文、筆者の心でかがやき続けるテクスト15篇など―。担当ゼミでは「哲学と芸術の交わり」をかかげる哲学科教員の、文学と文学部をめぐる人文エッセイ & 書き下ろし授業
本文より
……私が学生諸君に望むのは「自分で考え、意見を言えるようになること」だ。私は彼らに対して、一貫して単独者であることを強いた。座席を指定し、同士的・恋人的な付き合いの人間は切り離して、見知らぬ者を隣に座らせ、授業中は相互に孤立させた。……
……本書は文学部を系統だって説明した文章ではないし、講義録でもない。私は文学部を特権視しているわけではない。世の中には、水蒸気のような、ワインのような、お神酒のような余剰に憑かれている人間もいると、そしてそんな人間が語っている場もあるのだと、ご理解いただけたら幸甚である。
目次
序 章 遠方のパトスのために
第1章 私の心に残る15のテクスト
第2章 文学共和国によせて
第3章 愛の国へ
終 章 レトリックにかけた夢
本書に登場する文章・作品(一部)
学生Y君の発表
学生S君とN君の回答
学生K君の卒論
バタイユ「ニーチェについて」「文学と悪」「至高性」「眼球譚」「内的体験」
夏目漱石「それから」
ヘミングウェイ「武器よさらば」
立原道造「のちのおもひに」
埴谷雄高「虚空」
カフカ「夜」
ドストエフスキー「悪霊」
小池寿子「死を刻む時計 ストラスブール」
室生犀星「性に眼覚める頃」
向田邦子「かわうそ」
谷崎潤一郎「少将滋幹の母」
三島由紀夫「金閣寺」
マルタ・モラッツォーニ「最後の任務」
フランソワ・モーリャック「テレーズ・デスケール―」
ニーチェ「悦ばしき知識」「遺された断想」「書簡集」「この人を見よ」
酒井健「自然は最高の教師」「夢はめぐりて」
ドゥニ・オリエ「コンコルド広場奪取」
プルースト「ある友のために」
ベルナール・モリノ「エマニュエル・ベルル」
フーコー「知への意志」
ディドロ「お喋りな宝石」
シオラン「生誕の災厄」「苦渋の三段論法」
学生H君の卒論
毎熊佳彦「観照のディレンマ」
目次
序章 遠方のパトスのために
1 教師になって失ったもの
2 取り憑かれたように信じてしまう
3 哲学と芸術の交わりを掲げて
4 学生Y君の発表
5 学生S君とN君の回答
6 学生K君の卒論
7 扉はゼミの学生諸君
第1章 私の心に残る15のテクスト
1 生の思い出―バタイユ「ニーチェについて 好運への意志」
2 赤い花の伝言―夏目漱石「それから」
3 国境の湖を渡る二人―ヘミングウェイ「武器よさらば」
4 追憶も忘却も消えていく世界へ―立原道造「のちのおもひに」
5 虚空に憑かれた《垂直の精神》―埴谷雄高「虚空」
6 夜に目覚める―カフカ「夜」
7 偽侯爵、雨の夜空に札束を撒き散らす―ドストエフスキー「悪霊」
8 西欧中世との呼応―小池寿子「死を刻む時計 ストラスブール」
9 十七歳、生の魅惑が眼前に広がりだす頃―室生犀星「性に眼覚める頃」
10 厳しい簡潔さー向田邦子「かわうそ」
11 観念と現実―谷崎潤一郎「少将滋幹の母」
12 美と行為の相克―三島由紀夫「金閣寺」
13 歴史とその外部―マルタ・モラッツォーニ「最後の任務」
14 翻訳の妙―フランソワ・モーリャック「テレーズ・デスケール―」
15 かつての出会いと別れに杯を。そして何と多くの新たな可能性が!―ニーチェ「悦ばしき知識」「遺された断想」
第2章 文学共和国によせて
1 京都でのバタイユ講義
2 仏文科の魅力
3 自然は最高の教師
4 内側からの生命の表出
5 信州の自然と父
6 メディアの暴力
第3章 愛の国へ
1 文学と愛
2 バタイユと研究のはざまで
3 虚空への愛
4 愛が広いフランス
5 百度の沸騰
6 真理への愛
7 愛をめぐる人間の生き方
8 砲弾が炸裂する塹壕で
9 ベルルとプルーストの文通
10 嘘も真理への愛
11 真理の探究と性の問題
12 性の言説と生権力
13 性の告白小説
14 言葉の奥にあるもの
終章 レトリックにかけた夢
1 生きるためのペシミズム
2 観照のディレンマ
3 ニーチェの真理体験
4 ニーチェの夢とレトリック
5 存在の重荷と弱音
6 パトスを文章にのせて
7 十人十色の大学教師
8 ディオニュソスの酒甕
上記内容は本書刊行時のものです。