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昭和百年 北の群像
北海道・人・戦後八十年
- 出版社在庫情報
- 不明
- 初版年月日
- 2025年10月18日
- 書店発売日
- 2025年10月10日
- 登録日
- 2025年9月26日
- 最終更新日
- 2025年9月26日
紹介
◇1980年の結成以来、45年間にわたり、北の知られざる史実を紡いできた「北海道ノンフィクション集団」。その7作目となる本書は、太平洋戦争が生涯に大きな影響を与えた北海道人の物語7編を通して、昭和という時代を見つめ直すノンフィクション・アンソロジーです。
◇巻頭を飾るのは、2023年発表の『硫黄島上陸 友軍ハ地下ニ在リ』(講談社)で第11回山本美香記念国際ジャーナリスト賞受賞し、最新刊『死なないと、帰れない島』(講談社)も話題を呼ぶ、北海道新聞記者の酒井聡平さん。北海道ノンフィクション集団のメンバーでもある酒井さんが、前2作に続く〈硫黄島3部作〉ともいえる作品「硫黄島に雪が降る」を書き下ろしています。
◇そのほか、戦後の国後島でソ連軍の通訳となった日本人女性、B級戦犯として処刑された道産子、飢餓の島メレヨン島の実態、小樽育ちの犯人が起こしたとされる帝銀事件の隠された闇、歴史に埋もれた史実を追い続けたジャーナリストの人生などを通して、北の昭和史を紡ぎます。
目次
酒井 聡平 硫黄島に雪が降る 遺児が残した〝奇跡〟の記録
森山 祐吾 B級戦犯・平手嘉一大尉はなぜ処刑されたのか
相原 秀起 クナシリ 愛と悲しみの島 ソ連軍が育てた現地通訳・澤崎弥生
石川 寿彦 飢餓の島 メレヨン島の悲劇
合田 一道 彫像に命を吹き込む 本郷新の思想と生涯
河原崎 暢 帝銀事件の消えない謎 平沢貞通の人生と旧陸軍秘密部隊の闇
嵯峨 仁朗 一つの道を 合田一道が生きた昭和史
あとがき
前書きなど
北海道ノンフィクション集団として7冊目となる新たな著作『昭和百年 北の群像』を発刊いたしました。本著は前作『断面北の昭和史』(柏艪舎、2022)の「続編」とも言えるものです。前作は、太平洋戦争(1941-45)を軸として戦前、戦中、戦後と時代を三つに区分して、北海道やその周辺で起きた事件や事象を追いかけたものでした。
前作の刊行時、本集団の会員からは「次回は人物に焦点を当てた、知られざる昭和史を描きたい」との声が上がり、会員それぞれが取材と執筆作業を進めてきました。刊行のタイミングとしては、当初から令和7年(2025)を想定しておりました。この年が昭和元年(1926)から数えて百年目、終戦から八十年という節目の年だからです。
何を書くかは会員それぞれに任されていましたが、本著を振り返りますと、多くが日本の転換点とも言える太平洋戦争の時代を生き、またはその生涯に戦争が多大な影響を与えた人々の物語となりました。
酒井聡平さんの「硫黄島に雪が降る 遺児が残した〝奇跡〟の記録」は、昭和20年(1945)に日米の激戦地となった硫黄島で、戦後長年にわたり日本兵の遺骨を探し続けた一人の道民を取り上げています。森山祐吾さんの「B級戦犯・平手嘉一大尉はなぜ処刑されたのか」、相原秀起の「クナシリ 愛と悲しみの島 ソ連軍が育てた現地通訳・澤崎弥生」も、戦争によって翻弄された人生にスポットを当てており、石川寿彦さんの「飢餓の島 メレヨン島の悲劇」は、南方戦線の守備隊の悲惨な実像を漫画で描いたものです。
一方、合田一道さんの「彫像に命を吹き込む 本郷新の思想と生涯」は、北海道を代表する彫刻家本郷新の手による、戦没学生記念像「わだつみのこえ(声)」像や稚内市の樺太引揚者慰霊像「氷雪の門」などの制作過程を紹介しつつ、本郷の生涯を追いかけた作品です。また、河原崎 暢さんの「帝銀事件の消えない謎 平沢貞通の人生と旧陸軍秘密部隊の闇」は、終戦直後に起きた帝銀事件と旧陸軍秘密部隊の関係に注目した作品となっています。
本著の中で異色な存在は、嵯峨仁朗さんの「一つの道を合田一道が生きた昭和史」です。かねてより私たちは、合田さんからその代表作と言える知床食人事件の詳細を記録した『裂けた岬』や満蒙開拓団の惨劇を追った『満州開拓団27万人 死の逃避行』など著作の取材経緯を聞いていました。しかし、合田さんが見聞きした事実を書き残すこと自体が、昭和史の一断面を記録することであると気づき、計10時間を超えるロングインタビューを行い、まとめたものです。
合田前代表からバトンを託され、本集団の新代表となった私を含めて、戦後世代の会員が大半となるなか、本著の執筆を通じて私たちはあの激動と混乱の時代を追体験したと考えております。また、完成した本著を手に取り、人々の営みを記録するノンフィクションの意味をあらためてかみしめた次第です。
(「あとがき」より)
追記
2025年10月12日(日)13時30分より、紀伊國屋書店札幌本店1階インナースペースにて、発売記念トークイベント「1945 硫黄島と国後島 戦後80年――北海道人が生きた激動の時代」を開催。「硫黄島に雪が降る 遺児が残した〝奇跡〟の記録」を執筆した、話題作『硫黄島上陸』の著者・酒井聡平と、「クナシリ 愛と悲しみの島 ソ連軍が育てた現地通訳・澤崎弥生」を執筆した、集団代表でノンフィクションライターの相原秀起が、互いのライフワークである〈硫黄島〉と〈国後島〉をテーマに、その歴史や北海道人とのかかわりなど、知られざる史実を語り合います。入場無料、予約不要です。
上記内容は本書刊行時のものです。
