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敗北と憶想
戦後日本と〈瑕疵存在の史的唯物論〉
- 出版社在庫情報
- 在庫あり
- 初版年月日
- 2019年7月15日
- 書店発売日
- 2019年7月10日
- 登録日
- 2019年5月11日
- 最終更新日
- 2021年3月31日
書評掲載情報
2019-10-25 |
週刊読書人
3312 評者: 長濱一眞 |
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紹介
日本のモダニティを剔抉する
吉本隆明、小林秀雄、花田清輝、
埴谷雄高、丸山眞男、萩原朔太郎、谷川雁、黒田喜夫……
過去を想起‐憶想し、受け取り直すこと。
その反復で生産される微細な差異を感受‐甘受すること。
近代日本における主体と歴史、そして資本主義のありようを踏査し、
〈瑕疵存在の史的唯物論〉を未来に向けて構築するために。
目次
はじめに 敗北の憶想、あるいは彗星とラス前
Ⅰ 歴史叙述の作法
第1章 死者が生者を捕らえる──ふたたびマルクスとともに
第2章 非精確な歴史叙述──だがドゥルーズ的小林秀雄が
Ⅱ 気分
第3章 気分はいつも、ちぇっ!──埴谷雄高の「不快」
第4章 風に向かって唾を吐くな!──であればこそ、かのニーチェが
Ⅲ 「私」の反復
第5章 予感する記憶──三島由紀夫の「不快」とその編集
第6章 不自由な「私」──戦後近代(文学)とEcce Ego
補論 余白と置字──荻原朔太郎の「球体」
Ⅳ 反復と跳躍
第7章 睥睨する〈ラプラスの魔〉と跳躍──小林秀雄が切線する
第8章 契がもたらす疚しさに拮抗する──吉本隆明の「切断」
補論 肉月の詞──詩人 吉本隆明
Ⅴ 確信‐期待という「主体」
第9章 こうして世界は複数になる──谷川雁と丸山眞男の絶対的疎隔
第10章 反時代的「確信」──藤田省三の「レーニン」
補論 雑業の遺恨──黒田喜夫と「ぼく」
版元から一言
キェルケゴールにとって「ふたたび-受け取る(受け取り-直す)」ことである「反復」は、すべての「認識が想起だと教えた」ギリシアの人びと――プラトンの想起説――にとっては「想起-内面化」、あるいはしたがって、内面にこびりつく「決定的な言葉」であり、〔…〕「想起されるものはかつてあったものであり、したがって後方に向かって反復される」が、それとは反対に、「本当の反復-受け取り直し」とは、したがって、過去のむしろ憶想を不可避の軌道として「物事を前方に向かって想起する」ことであり、それそのものとして、期待=不安定――不安・畏れ・戦き――をもたらすことをそれは意味している。そしてまさにここでこそ、「歴史とは構成の対象であり、その構成がなされる場は、均質で空虚な時間ではなく、現在〔いま〕の時に充ちている時間」とされるのである。
――「はじめに――敗北の憶想、あるいは彗星とラス前」より
上記内容は本書刊行時のものです。