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詩集 花もやい
- 出版社在庫情報
- 在庫あり
- 初版年月日
- 2017年8月
- 書店発売日
- 2017年8月18日
- 登録日
- 2017年8月3日
- 最終更新日
- 2017年8月17日
紹介
うぶすなの宙〈そら〉と地の間で、
遠い日の少年のまじなう声を聴くような、
岡田哲也の新しい詩世界。
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わたしの声が 聴こえるか
それがわたしだと あなたにはわかるか
わたしは すぼみ
耳奥では ときじくの蝉が鳴いている
目交には ときおり飛蚊が舞っている
しかし わたしには あなたの声が聴こえる
あなたの沈黙すら ありありと見える ──「聴こえるか」より
目次
宙うた
わたしの青空 鯖によせて
浮き草
日 記 矢岳高原にて
沈丁花のころ
うぶげ
糸瓜のうた
Ⅰ 糸瓜の軽さ
Ⅱ 糸瓜の恋
Ⅲ 糸瓜もどき
Ⅳ 双六糸瓜
やぶつばき
桃の花のころ
コスモス
残りの月 五月二十四日
浜昼顔
ごほうび
地こえ
聴こえるか
おるすばん
杭のたそがれ
小春日情景
いろりばた
北風と椿
雨 糸
たらちね
Ⅰ なもたん
Ⅱ おまじない
ある日
日 記 焼酎とカラオケと
鮎のうた
Ⅰ 木の芽どき
Ⅱ 五月晴れ
千 鳥
かたすみのうた
あとがき
前書きなど
あとがきより
『花もやい』は、「宙うた」と「地こえ」から成っています。私なりの花鳥風月そして天地人の一冊です。
かつて中野重治さんは「おまえは赤まんまの花やとんぼの羽根を歌うな」(作品「歌」)と歌いました。若い頃私は「そうだそうだ」と頷きながらも、きっとこの人は痩せ我慢の気骨の人なんだと思ったものでした。むろんこの思いは、今も変わりません。
広島生まれの父と天草生まれの母が、駆け落ちよろしく流れ着いた鹿児島県出水市。そこで戦後生まれた私は、十四人兄弟の末っ子だったからでしょうか、ガキの頃から、惣領の鷹揚さや長子の風格とは無縁の子でした。人や牛の機嫌や風や山川の気息をうかがいながら、それらに溶けこんだり、時に取り入ったり。ただ目立たないように目立つということにはいささかたけた、キモい子でした。後に勘当された時も、むしろ家なき子になったような気安さを感じたほどです。
こんな男が生家近くの「ふるさと」に棲んで四十五年にもなります。さしたる自負も執着もありません。おそらく、この地との縁が尽きるまでは、私はここに居るでしょう。なんとなく今浦島か「浅茅が宿」の勝四郎の気分です。よくもまあ今日までと、ため息つきながら、それでも有難や有難やと歌い続けてゆくのでしょう。
本書の大半は『茜ときどき自転車』(二〇一二年)と『酔えば逢いたい人ばかり 薩摩焼酎讃歌』(二〇一四年)以後の作品です。ふだんから、詩の言葉も、耳近に、口鈍くこそまことなれ、などとほざいてますが、なあに勝手にやってるだけのことです。命の程はさておき、私の歌は、どこまで届くのか、永らえるのか。詩集の舫いは解かれましたが、さて……。
平成二十九年五月 岡田哲也
上記内容は本書刊行時のものです。