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憲法決壊2 「戦える日本」に変貌させた戦後70年史上最大の解釈改憲の実態
- 初版年月日
- 2015年10月
- 書店発売日
- 2015年10月16日
- 登録日
- 2015年9月3日
- 最終更新日
- 2015年11月6日
目次
総論:数ヵ月に及ぶ国会の迷走が私たちに示していること
安保法制議事録(参議院・安保法制特別委員会)
テーマ①第三次アーミテージ・ナイ・レポートの提言をなぞる形の安保法制
テーマ②物品の提供に含まれる弾屋に、法文上はクラスター爆弾や核弾頭も
テーマ③法案の具体的検討も始まっていない前年末に来夏成立の見通しを米軍幹部に答弁、
シビリアンコントロールは効くのか
テーマ④95条の2は法文上歯止めなき武器使用の拡大
テーマ⑤日本人母子の乗った米艦船を守る、という想定の崩壊
インタビュー・辻元清美「自衛隊員も市民も生命が危険に晒される」
対談・太田啓子(憲法カフェ主催・弁護士)×遠藤ちひろ(多摩市議会議員・無所属)
「かつてない危機感が生み出したムーブメント」
安保関連法要綱全文(ポイント解説付き)
「平和安全法制整備法案要綱」
「国際平和支援法案要綱」
提起「過破棄された立憲民主主義を取り戻す闘い」ジャーナリスト・高野孟
版元から一言
この度、衆参での前代未聞の強行採決によって可決成立した「安保関連法」は「自衛隊法」「国際平和協力法」などの10本の法律の改正内容をまとめた「平和安全法制整備法」という一つの法律と、新たに制定する「国際平和支援法」の2本からなります。野党の猛抗議の中、最終的に与党の強行採決によって衆院を通過した同法案は、参院の特別委においても、新たな問題が複数浮き彫りになりました。
「自衛隊法」の最も大きな変更の一つは、防衛出動を可能とする「武力攻撃事態」に「存立危機事態」が加わり、日本への直接の武力攻撃が発生していなくても防衛出動が可能となったことです。この「存立危機事態」の認定基準も国会の審議の場で首相は「総合的に判断する」との説明に終始し、明確にされることはありませんでした。さらに、平時及びグレーゾーン事態においても米軍等の武器を防護するために自衛官の武器使用を認めた「自衛隊法」95条の2の新設は、集団的自衛権の行使へつながる可能性の極めて高い「裏口ルート」だと野党は強く批判しました。
あるいは、これまでの「特措法」のような時限立法を必要とせず、恒久的に自衛隊を海外に派遣できるようにした「国際平和支援法」では、従来の「非戦闘地域」という概念がさらに狭められ「現に戦闘行為が行われている現場」のみ活動できないとしましたが、その「現場」の線引きが実際の戦闘地域では非常に難しいこと、さらにはこれまでできなかった弾薬の提供や戦闘作戦行動のための発進準備中の航空機への給油も認められることになり、武力行使と一体化する危険性が高まりました。
また、国会の審議の最中に、統合幕僚監部が昨年末に米軍首脳に「来夏までに法案は成立する」との見通しを伝えていたとする文書の存在が指摘されるなど、法案は内容だけでなくプロセスにもさまざまな問題が浮上しました。さらには、立法事実とされていた「ホルムズ海峡の機雷」といった想定も消失しました。
しかし、最終的に、与党は継続審議を求める野党を退け、予定されていた地方公聴会の報告なども行わないまま与党関係者らが委員長を取り囲み、速記録に委員長の発言が一言も残せないほどの混乱と喧騒の中で参院特別委において採決が強行され、二日後の未明に本会議で可決成立しました。
憲法9条の形骸化が叫ばれて久しいですが、「個別的自衛権ならば」「自衛のための戦力保持ならば」と、条文を変えずにズルズルと続けて来たツケが、戦後最大級の解釈改憲「集団的自衛権の行使容認」という事態を引き起こしたのかもしれません。
どのような審議が尽くされ、あるいは尽くされないまま法案は可決成立したのか。今回の政権の暴走はなぜ起きたのか。数ヶ月に及ぶ国会の攻防を記録し、世に問うための緊急出版です。
8月に出版した「憲法決壊!集団的自衛権の正体」では衆議院特別委の議事録を中心にまとめましたが、この第2弾では、参議院特別委の議事録及び安保法要綱の全文をポイント解説入りで掲載しています。
2冊を併せることで戦後の歴史の転換点ともいうべき2015年の「安保関連法」強行採決に至る衆参特別委の審議のプロセスと内容の記録となり、その全体像を記憶にとどめていただけると思います。
賛成と判断するにせよ、廃案を求めていくにせよ、内容を理解するための一助にしていただければ幸いです。
上記内容は本書刊行時のものです。