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不妊、当事者の経験 竹田 恵子(著) - 洛北出版
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不妊、当事者の経験 日本におけるその変化20年

発行:洛北出版
四六判
縦188mm 横128mm 厚さ36mm
重さ 520g
589ページ
並製
定価 2,700円+税
ISBN
978-4-903127-27-9
Cコード
C0036
一般 単行本 社会
出版社在庫情報
在庫あり
初版年月日
2018年9月
書店発売日
登録日
2018年9月4日
最終更新日
2018年9月21日
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紹介

 不妊治療は、少しずつ、現在のような普及[ふきゅう]に至りました。むかしと比べ、受診への敷居[しきい]が低くなったのは間違いないでしょう。

 とはいえ、治療を実際に始めるとなると、多くの人は、躊躇[ちゅうちょ]、不安、迷い、焦り[あせり]などの、重い感情を経験します。

 不妊治療をめぐるこのような経験は、何が原因で生じるのでしょうか?
 また、このような経験は、不妊治療が普及していったこの20年間で、どのように変化していったのでしょうか?
 この本は、以上のような、たいへん素朴な疑問から出発しています。

 不妊治療が普及していったこの間は、日本の社会もおおきく変わり、情報通信技術の普及によるコミュニケーションの変容もあった時代でした。しかも、不妊治療を受ける当事者は世代がかわる移行期にありました。

 そのため、この本では、二つの時代(2000年代初期と2010年代初期)に治療を受けた当事者たちへの、インタビュー調査とアンケート調査をもとに、一人ひとりの経験をくわしく取り上げています。さらに、この二つの時代の、家族形成、仕事環境、インターネット利用、公的支援なども視野に入れ、医療の素人[しろうと]である当事者が編[あ]み出す、不妊治療への対処法を明らかにしています。

 不妊治療をめぐるさまざまな経験に悩まされた当事者たち――彼女・彼たちが、それでも不妊治療をつづけるには、それなりの努力が必要でした。その努力は、「素人」ならではの、いくつもの「ちいさな」対処法を編み出しました。それらの対処法、すなわち技術(アーツ)は、驚くほどユニークな側面をもっており、しかも不妊治療の現場で、次の新しい当事者へと伝えられていったのです。

 そしてこの、ちいさな技術(アーツ)の積み重ねと伝達こそが、現在の不妊治療のかたちを導いた原動力であるとともに、不妊治療が暴走することのないようチェックする、静かですが強力なブレーキの役目を果たしていたと考えられます。

 まずはこの本の目次をご覧いただいて、関心のある章から、ざっと目を通してみてください。一人ひとりの当事者の、息づかいを感じていただければ幸いです。
 

目次

はじめに / 序 章

不妊治療に対する感情
感情を扱う社会学の様々なアプローチ
10年を隔てた躊躇の変化
感情への接近の難しさ
本書の構成
関連用語の説明


【第1章】 不妊治療への躊躇い

反復する不安
 ・体外受精成功当時の騒乱
 ・繰り返される不安と警鐘

不妊治療を躊躇させるもの
 ・一般人の躊躇
 ・当事者の躊躇
 ・医師および医学研究者の躊躇

本書のアプローチ
 ・不妊治療に対する躊躇へどのように接近するのか
 ・躊躇の扱いにくさ
 ・インタビュー調査について

コラム1 事実婚カップルの不妊治療


【第2章】 2000年代初期と2010年代初期の日本と不妊治療

2000年代初期の日本と不妊治療
 ・2000年代初期の出産と育児をめぐる動き
 ・情報通信技術の発達
 ・2000年代初期の不妊治療

2010年代初期の日本と不妊治療
 ・2010年代初期の出産と育児をめぐる動き
 ・情報通信技術の普及によるコミュニケーションの変化
 ・2010年代初期の不妊治療

二つの時代の当事者
 ・2000年代初期の社会と当事者世代
 ・2010年代初期の社会と当事者世代

コラム2 性的少数者の家族形成と不妊治療


【第3章】 2000年代初期の不妊治療と躊躇

規範を犯すことへの躊躇
 ・生命への介入
 ・パートナーとの営みを飛び越える
 ・答えの出ない堂々巡り

羞恥心をもたせる不妊治療
 ・ショッキングな内診
 ・周囲の目
 ・存在を消そうとする協力者

何が起こるかわからない治療
 ・訳のわからない薬
 ・医師によって異なる技術
 ・時間と費用が読めない
 ・自分の自由、自分の責任

2000年代初期の躊躇
 ・2000年代初期の躊躇のかたち
 ・世代の特徴と躊躇の関係

コラム3 独身者が子をもつ方法


【第4章】 2010年代初期の当事者の意識――アンケート調査から

アンケート調査について
 ・調査の趣旨
 ・質問内容
 ・質問票の配布および回収方法

協力者の特徴
 ・協力者の属性
 ・協力者の治療歴
 ・治療に関する夫婦の態度

情報源について
 ・「治療開始時」と「現在」の情報源(1)――利用度からの分析
 ・「治療開始時」と「現在」の情報源(2)――信用度からの分析
 ・情報源数

アンケート調査から浮かぶ躊躇
 ・「治療開始時」と「現在」の「抵抗感」
 ・ステップアップと「抵抗感」

不妊に関する理解と不妊治療への希望
 ・不妊の原因は何か
 ・少しでも早く
 ・治療費に対する意識

アンケート調査から見えてきたこと
 ・時間的な焦り
 ・経済的な壁
 ・情報過多による不確実性の高まり

コラム4 HIV感染と不妊治療


【第5章】 2010年代初期の不妊治療と躊躇――インタビュー調査から

子を得るためのもう一つの方法
 ・いまだに残る倫理的な躊躇
 ・気にしたことのないリスク
 ・30年来の実績と理性的判断

難解な治療
 ・知識がない
 ・2010年代初期の情報との接し方
 ・試行錯誤はまだ続く

自己実現の困難
 ・時間に急き立てられる
 ・治療費に対する不満の高まり
 ・「配慮」する周囲
 ・自由のツケ

2010年代初期の躊躇
 ・2010年代初期の躊躇のかたち
 ・世代の特徴と躊躇の関係

コラム5 障害と不妊治療


【第6章】 躊躇を克服する知恵と技術[アーツ]

価値観の転換
 ・セレブな方法から自然妊娠の一部へ
 ・自己実現としての家族形成

羞恥心を飼い慣らす
 ・慣れと諦め
 ・「不妊患者キャラ」の作成

「素人」として振る舞う
 ・治療プロトコルとの付きあい
 ・科学知識から遠ざかる
 ・お任せする協力者
 ・無知のままがいい
 ・当事者独自の理解と行動

コラム6 不妊治療を受ける外国人


【第7章】 躊躇に関与する文化社会的要因

文化社会的要因とは何か

医療の問題
 ・医療化された「不妊(症)」
 ・医療施設格差と不妊治療の商業化
 ・医師の裁量と当事者との関係

科学技術の問題
 ・安全性と技術の受容
 ・情報流通とリテラシー

公的支援の問題
 ・不妊治療に対する公的支援の矛盾
 ・日本の「福祉レジーム」

家族形成の問題
 ・「産む性」としての責任
 ・家族形成にまつわる規範に隠されたもの

コラム7 高齢女性の不妊治療


【第8章】 躊躇をめぐる社会的統制

「シンボリック・メディア」と感情の統制

不妊治療の躊躇をめぐる感情統制

後回しにされてきた躊躇
 ・「話された躊躇」と「話されなかった躊躇」
 ・躊躇を「話す」ことと「聴く」ことのあいだ
 ・躊躇を解きほぐす〈感応〉

コラム8 不妊治療と男性


【終 章】 これからの不妊治療と社会

繰り返される躊躇と変わりゆく躊躇
 ・忌避と畏れ
 ・子どもの幸せが一番
 ・他人を危険に晒してはいけない
 ・選択に求められる勇気

躊躇の行方
 ・当事者たちの絶え間ない吟味
 ・さらに10年後の不妊治療へ

コラム9 不妊治療に携わる医師の躊躇

文献一覧
あとがき
巻末資料(アンケート調査の質問票)
索  引
 

前書きなど

 不妊治療は、むかしと比べ、受診[じゅしん]への敷居[しきい]は低くなりました。とはいえ、治療を実際に始めるとなると、多くの人は、戸惑い[とまどい]、不安、焦り[あせり]などの、重い感情を経験します。このような経験は、不妊治療が普及[ふきゅう]していったこの20年間で、どのように変化していったのでしょうか。
 この本は、当事者へのインタビュー調査をもとに、日本の家族形成、労働環境、インターネット利用、公的支援などを視野に入れ、医療の素人[しろうと]である当事者が編[あ]み出す、不妊治療への対処法(アーツ)を明らかにしています。

●この本の章だて

はじめに/ 序 章
第1章 不妊治療への躊躇い
 コラム1 事実婚カップルの不妊治療
第2章 2000年代初期と2010年代初期の日本と不妊治療
 コラム2 性的少数者の家族形成と不妊治療
第3章 2000年代初期の不妊治療と躊躇
 コラム3 独身者が子をもつ方法
第4章 2010年代初期の当事者の意識――アンケート調査から
 コラム4 HIV感染と不妊治療
第5章 2010年代初期の不妊治療と躊躇――インタビュー調査から
 コラム5 障害と不妊治療
第6章 躊躇を克服する知恵と技術[アーツ]
 コラム6 不妊治療を受ける外国人
第7章 躊躇に関与する文化社会的要因
 コラム7 高齢女性の不妊治療
第8章 躊躇をめぐる社会的統制
 コラム8 不妊治療と男性
終 章 これからの不妊治療と社会
 コラム9 不妊治療に携わる医師の躊躇
文献一覧/ あとがき/ 巻末資料/ 索 引
 

版元から一言

 平易な言葉で、ていねいに、ていねいに、当事者(彼女・彼)たち一人ひとりの経験を、えがいております。なおかつ、日本におけるその経験の変化を、さまざまな角度から考え抜いております。
 また、高校以上で習う読みにくい漢字には、よみがなルビを付けています。若い読者や、日本語を第一言語としない人を含めた幅ひろい読者に、この本がむかえられるよう意図しました。本文中の索引機能、そして「索引」ページも充実させております。以下、短めの紹介文を記します。

   * * *

 不妊治療は、むかしと比べ、受診[じゅしん]への敷居[しきい]は低くなりました。とはいえ、治療を実際に始めるとなると、多くの人は、戸惑い[とまどい]、不安、焦り[あせり]などの、重い感情を経験します。このような経験は、不妊治療が普及[ふきゅう]していったこの20年間で、どのように変化していったのでしょうか。
 この本は、当事者へのインタビュー調査をもとに、日本の家族形成、労働環境、インターネット利用、公的支援などを視野に入れ、医療の素人[しろうと]である当事者が編[あ]み出す、不妊治療への対処法(アーツ)を明らかにしています。

●この本の章だて

はじめに/ 序 章
第1章 不妊治療への躊躇い
 コラム1 事実婚カップルの不妊治療
第2章 2000年代初期と2010年代初期の日本と不妊治療
 コラム2 性的少数者の家族形成と不妊治療
第3章 2000年代初期の不妊治療と躊躇
 コラム3 独身者が子をもつ方法
第4章 2010年代初期の当事者の意識――アンケート調査から
 コラム4 HIV感染と不妊治療
第5章 2010年代初期の不妊治療と躊躇――インタビュー調査から
 コラム5 障害と不妊治療
第6章 躊躇を克服する知恵と技術[アーツ]
 コラム6 不妊治療を受ける外国人
第7章 躊躇に関与する文化社会的要因
 コラム7 高齢女性の不妊治療
第8章 躊躇をめぐる社会的統制
 コラム8 不妊治療と男性
終 章 これからの不妊治療と社会
 コラム9 不妊治療に携わる医師の躊躇
文献一覧/ あとがき/ 巻末資料/ 索 引
 

著者プロフィール

竹田 恵子  (タケダ ケイコ)  (

竹田恵子 Takeda Keiko
1967年生。博士(人間科学、大阪大学)。現在は、大阪大学人間科学研究科招聘[しょうへい]研究員。専門は医療社会学、臨床[りんしょう]社会学。インタビュー調査を用いた質的研究を中心に行なう。1990年から臨床検査技師として働くも、医療にかかわる問題に関心を持ち、1996年に放送大学へ入学。その後、奈良女子大学へ編入学する。臨床検査技師と学生の二足のわらじを履きながら、当事者(患者)として、不妊治療にも挑戦した経験がある。本書が初めての単著である。

上記内容は本書刊行時のものです。