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王の庭師
アーレンベルクより愛をこめて
- 出版社在庫情報
- 在庫あり
- 初版年月日
- 2025年12月25日
- 書店発売日
- 2025年12月18日
- 登録日
- 2025年11月1日
- 最終更新日
- 2025年12月18日
紹介
血と灰の上に、樹を植える
――かつて火を放った地に、王は種を蒔く
かつて火砕流で他国の兵を焼き尽くした王国アーレンベルク。
惨禍から五十年。平和を手にした国に、再び問われるのは「赦し」だった。
戴冠したばかりの若き王ソフィアは、祖先の罪を背負いながら、滅びの地に“樹”を植える森林再生計画を命じる。
実務を担うのは、東方から来たひとりの青年――紺鳶色の瞳を持ち、左頬に古い傷を刻む留学生、タツキ・アメミヤだった。
華やかな宮廷でも、剣や魔法の戦いでもない。
水と風と土、そして人間の矜持の物語。
自然と経済、政治と祈りが交錯するなか、
贖罪を願う少女と、権力を嫌う青年が巡り会う。
それぞれの信念を懸けて、森の奥へと踏み込んだ先にあるものは――。
◆世代を超えて、驚きの声続々
「どの登場人物も誰かを救おうとしている。優しいのに甘くない」
――20代女性
「娘を寝かせてから呼んだ。最後のページを閉じたあと、しばらく動けなかった。
大人になって、ファンタジーに心を奪われるとは思わなかった」
――40代・父親
「森が迫ってくる。土の匂いがする。
生態系の描写がリアルすぎて、『雪蛍』を昆虫図鑑で探してしまった」
――博物好きの読者
「文章が本当に美しい。自然も心も、生きて動いているようでした」
――80代女性
「私もアーレンベルク国立森林大学の学生になりたい」
――会社員
◆幻のヴィッセン語、ついに書店へ
これは現実か、それとも精巧な幻想忌憚か
5年前、小さな出版レーベルで試験的に刷られ、静かに完売。
「本当に物語なのか?」「どこの国の言葉なのか?」「著者は実在するのか」。
波紋のように広まった問題作が、今、幻想の彼方から新装版となって蘇る。
現代社会を鏡のように映し出す、重厚なロマンス・ファンタジー。
目次
序章 祖国の春
第二章 アーレンベルクの森林職人
第三章 謁見
第四章 キルブルク森林組合
第五章 ロレーヌの使徒
第六章 月夜の邂逅
第七章 王の休日
第八章 冬の風
第九章 アデーレの森
終章 楢
参考文献一覧
前書きなど
カーテンから薄明かりが射しこんでくると、「ああ、蛍だ」と思う。うんざりする。
これだけ寒いのだから、あの夏の虫が飛び交っているはずもないものを。それでも朝、まぶたの上に光が降ってくると、皮膚に透けた血管のちらつきを蛍と見紛うのだ。
そんなときはいつも、辰樹(タツキ)は同じ夢を見ている。
同じ人の、夢を見ている。
ベッドから跳ね起きる直前まで、後悔し続けている。両親が死んだ夜のことを。
いいや、両親が死んだこと自体は仕方がない。
彼の祖国にはいまだに枯草熱(こそうねつ)がある。東洋ではまたの名を花粉症と呼ばれて、忌み嫌われているアレルギー反応だ。杉や檜の花粉が鼻腔に入って、鼻水やくしゃみを誘発する。目もかゆくなる。涙がでる。
だから春は交通事故が増える。
彼の両親をトラックで轢き殺した運転手は、重度の花粉症だった。
加えて彼の祖国は、その勤勉性が殊に有名だった。風邪薬の売り文句ときたら、「どんなに忙しいときもこれ一本で大丈夫!」。いやいや、辰樹に言わせれば、風邪を引いたのならば休め、薬を飲んでまで出勤するなという話なのだが、真面目な運転手は真面目に薬を服用していた。眠くなる成分入りだとは知らなかった。
加害者に悪気はなかった。泣いて謝られた。
だから事故ではなく、これは、木々の復讐だと思うことにした。
名案だと思った。両親ではなく人間に木がキレた。覚えたばかりの「いんがおうほう」を魔法の呪文のように繰り返し、言い聞かせ、言い聞かせ続けて、両親が死んだことは納得した。
だから辰樹が後悔しているのは、両親のことではない。
まだどうにかできると思うから悔やむ。
自分にはやり直す余地があると信じ込み、忘れるに忘れられないから、ずるずると後悔し続ける。
相手は、今も生きている。
加害者の話ではない。
版元から一言
「私のために書かれた物語なんて一冊もない」。
著者は、「親のいない子どもが読む前提で書かれた児童書が少ない」ことを、長年問題視し続けてきた方です。孤児や虐待家庭で育った人が、ようやく自分のお金で物語を買えるようになったとき、安心して楽しめる“大人のファンタジー”を作りたいと考え、本書を執筆しました。
そのため、過激な暴力や性的搾取の描写に頼らず、人の孤独や痛みに寄り添うことを目指しています。一方で、暴力や搾取の構造を無かったことにせず、そうした描写に慣れた読者も読み進めるうちに、「なぜそれが不正なのか」「どう拒み、どう越えていくか」を自然と問われるよう構成されています。性や権力をめぐる不均衡が現実と同じように存在しながら、「それでも人はどう生きるか」という倫理の選択を、すべての登場人物が自問し続けます。
かつて森に火を放った王国が、贖罪の象徴として樹を植える――。
『王の庭師』は、自然と人のあわいに祈りを見出す、峻厳な幻想文学です。
戴冠したばかりの未熟な王ソフィアと、権力を嫌う東方の留学生タツキ。
二人の視点を通して描かれるのは、華やかな宮廷でも、剣や魔法の戦いでもなく、“赦しと再生”をめぐる、人と動植物の物語です。森の呼吸、水の匂い、光の粒まで感じられる緻密な生態系描写は、『もののけ姫』『獣の奏者』などに心を動かされた読者層から高い評価を受けています。
試験的に刷った100部は直販のみで完売。
「どの登場人物も誰かを救おうとしている。優しいのに甘くない」「森が迫ってくる」「大人になって、ファンタジーに泣かされるとは思わなかった」といった読者の声が届いています。
昨今、子育て世代の読者からは、「安心して子どもに読ませられる物語が少ない」「過激な表現のない本を探すのが大変」という相談が多く寄せられるようになりました。
本書は、そうした問題意識の高い親御様にも自信を持って薦めていただける一冊です(※ご年齢にもよりますが、お子様が読まれるには少し早いかと存じます)。
ファンタジー、自然文学、ジェンダー・多様性を扱う文芸棚、またフェミニズム・人権関連展示、児童文学ならばヤングアダルト以上に適しています。
ぜひ売り場でのご展開をお願い申し上げます。
上記内容は本書刊行時のものです。

