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地熱地質調査と生産井掘削ターゲット 追補版ー還元井にも着目してー
- 出版社在庫情報
- 在庫あり
- 初版年月日
- 2022年6月30日
- 書店発売日
- 2022年7月20日
- 登録日
- 2022年10月10日
- 最終更新日
- 2022年10月10日
紹介
2019年に出版した前著『地熱地質調査と生産井掘削ターゲット』の続編。
前著では地熱熱水還元や還元井掘削ターゲットについて扱わなかった。本追補版ではこの還元井について、還元熱水の岩盤からの熱抽出と還元井配置の面から言及した。
本追補版も地熱開発業者や地熱関係の技術者への参考になることを願っている。
目次
まえがき
用語、略語および記号
第1章 地熱熱水の地下還元
第2章 地熱調査総合解析例、その1 ー秋田県田沢湖東部地域、乳頭温泉地区ー
第3章 地熱調査総合解析例、その2 ー九州地方、豊肥地域、九重-湧蓋地区ー
第4章 地熱流体流動系の評価例
付録 坑井の噴出データがない時点での簡易的な発電出力予想(案)
引用文献
あとがき
前書きなど
<追補版 まえがき>
2019年に出版した拙著では、地熱熱水還元や還元井掘削ターゲットについては扱わなかった。本追補版ではこの還元井について、還元熱水の岩盤からの熱抽出と還元井配置の面から言及した。しかし、地熱貯留層涵養、水圧破砕、地盤変動、流体の地下還元に伴うスケール析出などについて、著者の一人佐藤は数多く経験しているものの、EGS を含む広範囲の地下還元問題は、現在でも研究・実証が進んでいる状況なので考察が及ばない点が多く記述しなかった。
2019年の拙著について高い評価を受けた一方、物足りないとの意見も多かった。それは、生産井掘削ターゲット選定で具体的な例がなかったためと思われる。実はすでに実際の地熱フィールドを取り上げて具体例を記述していたが、地熱開発業者や調査・掘削会社の了解がとれなかった事情がある。地元対応、許認可、調査・掘削内容の機密性などの点から致し方なかったと察している。そこで、本追補版では既存文献を主とし、田沢湖東部地域(NEDO、1992)と九州豊肥地域の資料を基に各種考察を行った。
2019年は2月から9月までの7カ月間、熊本県小国町の生産井掘削現場に常駐し、共著者らと主に生産井掘削対応に当たっていた。現地では生産井掘削対応のみならず、還元井の位置・敷地選定および今回出版となった追補版の還元に関する多くの文献読破にも着手していた。当初、現地の還元井の位置としては、生産基地南方約300m~500mの場所に候補地を考えていたが、生産井の深度200m付近の湧水や敷地地形の厳しさを考慮して、西方約750mに位置を変更するに至った。机上で考えて計画するよりも、現場で歩き回って計画する方が良い結果に結びつくと確信している。
ところで、掘削ターゲット選定時に予想断面図(地質予想断面図や物理探査予想断面図など)を作成せずに(または、作成できずに)掘削している例があると聞いている。もし、断層が横ずれ型で垂直な場合やスプリッティング断裂の場合は、断層の近傍であっても鉛直に掘削すれば、当然、断層や断裂に遭遇しないことになる。このような場合傾斜掘りをする必要があるが、断面図がなければ掘削計画ができないことになる。本追補版では2地域での予想断面図と掘削計画の例を示したが、断面図作成には多くの経験と知識が必要である。例えば、地質断面図を作成する場合でも、① 構造地質学、地史学、地形学に基づく断裂の成因・性質、② 地質図学、堆積学、年代測定に基づく地層対比、③ 鉱物学、火山岩石学に基づく熱源や変質帯の成因・性質、④ 他の探査結果との整合性など多くの要素を検討する必要がある。私は掘削の成功・失敗はここから始まると思っている。元来、傾斜掘りは限られた(与えられた)敷地からターゲットに向けて掘削するが、松川地熱地帯では、すでに1968年の6号井から採用されていた。掘削の成功率をあげるためには傾斜掘りは是非とも必要な技術である。
現在の地熱系形成と浅熱水性金鉱床形成メカニズムは類似点が多い。両方の形成メカニズムは、共に火山活動、沸騰現象に起因し、鉱脈の特徴と規則性は地熱断裂系のそれらと共通している。これらの事は以前から指摘されてきたが、著者は鉱床探査の経験が少ないために本書では触れなかった。地熱探査に携わっている技術者には、鉱床探査に携わった人が多いと聞いている。今後は是非両形成メカニズムを対比してまとめ、地熱探査の精度向上に寄与することを期待している。
本追補版も地熱開発業者や地熱関係の技術者への参考になることを願っている。本書を出版するに当たり、㈱ニュージェックの志田原巧氏に査読をお願いした。感謝の意を表したい。 佐藤 浩
版元から一言
著者の一人佐藤 浩(さとう こう)さんは地熱エネルギー分野では国内でも有数なエキスパートの一人です。
日本各地にある有望な候補地の中から地熱エネルギーを取り出して利用するというのは、一つとして同じ条件のない自然相手ということもあり、机上の理論よりも実地の経験がものを言うのだと想像出来ます。
その経験を後進にしっかりと残して日本の地熱エネルギー開発に貢献したいというのがこの本の出版動機だと聞きました。
わたしなどは複雑な数式を見て頭を痛くしながら校正を見たのですが、きっとその道を学ぼうとする方々には、その数式が輝いて見えるのだろうなと想像しながら本づくりをした次第です。
自然エネルギーの利活用の重要性は年ごとに高まっていますが、この本が少しでもそのお役に立てばと思っています。
上記内容は本書刊行時のものです。