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三面椿
- 出版社在庫情報
- 在庫あり
- 初版年月日
- 2022年3月19日
- 書店発売日
- 2022年4月16日
- 登録日
- 2022年3月22日
- 最終更新日
- 2022年10月29日
紹介
岩手県大船渡市末崎(まっさき)町の熊野神社には、推定樹齢1200年とも言われる日本最大級のヤブツバキが現存している。
元は、境内の三つの方角に植えられていて「三面椿」と言われていたが、今は1本だけになっている。
大船渡市が位置する岩手県沿岸南部は、リアス海岸が広がり目の前には黒潮と親潮がせめぎ合う世界三大漁場といわれるところだが、暖流の影響か冬でも雪が少なく温暖で、一帯にはヤブツバキが自生しており、ヤブツバキの北限ともいわれている地方である。
この物語の舞台は、奈良に大仏が建立されようとしていた天平十六年にまで遡る。
大仏の鍍金には大量の金が必要だが、その当時日本では金がとれないとされていた。
そのため、宮城県涌谷で初めて金が発見されたことは大変な慶事とされ、聖武天皇年号を天平感宝とするほどだった。大伴家持はこの慶事を「天皇(すめろき)の御代栄えむと東なるみちのくの山に金(くがね)花咲く」と歌に詠んだのは有名である。
以来東北各地で金が産出されたが、特にも岩手県大船渡市を中心とした気仙地方は、昭和18年まで産金が続けられるほどに埋蔵量が豊かで、16世紀までは世界最大級の産金量があったとされるほどであった。これらの金はその後、平泉の中尊寺金色堂に象徴される奥州藤原文化の全盛期を支えたともされている。
この物語は、奈良の大仏の鍍金に使う産金を求め紫香楽に住む青年・築麻呂(つきまろ)がみちのくの産金を求めて奥州へ、そして気仙の熊野神社に来る物語である。途中大地震による大波で海に落ち伊豆大島に流れ着くことから物語がはじまる。
大船渡に現存する日本最大最古とされるヤブツバキと日本で最大級の産金を誇った気仙の産金を二つの縦糸にした、壮大な歴史ロマンである。
目次
一 大仏建立
二 船 出
三 大 島
四 安房国
五 多賀城
六 採 金
七 国守交代
八 産 金
九 三面椿
前書きなど
歴史の深淵をのぞき見る不思議 (本書帯より)
岩手県大船渡市末崎(まっさき)町の熊野神社に今も咲く「三面椿」と呼ばれる椿は、樹齢千数百年の日本最古といわれる椿の木である。この物語を書き進めるうちに、万葉集にある大伴家持の金が出たことをことほぐ歌にたどり着き、陸奥国に伝わる黄金伝説を知ることとなった。大船渡市がある気仙地方一帯が実はかつての一大産金地帯であり、奈良の大仏の鍍金との関連から、それ以降の日本の歴史のばらばらであった出来事が金の輝きのもとに収斂するような気がし、歴史の深淵をのぞき見る不思議を味わったのは言うまでもない。 柄戸 正(著者)
<帯の推薦文>
柄戸さんは己の道をひたむきに生きる人の姿を描く。日本の椿をヨーロッパにもたらした物語「安永の椿」には、嘆くことも諦めることもせず、海を渡って進み続ける男がいた。その静かな情熱が胸を打った。
今作は奈良時代の日本が舞台。奈良で始まる物語は、伊豆大島を経て大船渡へ辿り着く。疫病、飢饉、戦乱、災害が続いた時代に大仏造立や寺の建立に尽くし、懸命に生きた人々がいたことを老椿は教えてくれるだろう。
木全 典子(日本ツバキ協会理事・国際ツバキ協会日本代表)
版元から一言
岩手県沿岸南部の大船渡市は、岩手の湘南と呼ばれるほどに温暖な地で、ヤブツバキの北限の地である。
この地の末崎(まっさき)町に日本でも最大級で最古とも言われるヤブ椿がある。そしてまた、この地は16世紀半ばまで、世界でも最大級の産金地であったと言われる地で、奥州平泉の藤原氏の栄華を支える大産金地帯でもあった。
この地に日本最大最古のヤブ椿が現存している「不思議」と、歴史の表舞台に出てこないものの、日本史に大きな役割を果たしたこの地の産金を、小説の中で不可分の二つの縦糸として創作されたのがこの『三面椿』である。
椿といえば多くの人は伊豆大島を思い浮かべると思うが、その伊豆大島も本小説の中では大事な役割を果たしている。
この本は2022年3月19日に開催される予定だった「全国椿サミット」に向けて製作されたものだったが、そのサミットはコロナ禍の中で開催中止となってしまった。
「全国椿サミット」は2011年の3月にも東日本大震災のため中止となっており、二度目の中止であるが、この「三面椿」が「全国椿サミット」に代わって、この地の風土や文化を全国に情報発信する役目を果たしてくれれば本望である。
上記内容は本書刊行時のものです。