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医療から見たキリスト教と仏教の究極に在るもの
- 出版社在庫情報
- 在庫あり
- 初版年月日
- 2020年6月29日
- 書店発売日
- 2020年9月1日
- 登録日
- 2020年8月3日
- 最終更新日
- 2020年8月3日
紹介
人生100年の現代、「宗教と医療と心の平安」という課題を、著者はこの書で「ホリスティック医療」という観点で解決しようと試みる。
キリスト教のカトリックの神父である著者は、若い頃から神父としてキリスト教哲学を極めてきたことはもちろんだが、ユダヤ教やイスラム教、仏教や神道など、世界の宗教への洞察も深めてきた。
世界の中で宗教は人間の生き様とどのように関わってきたのか、そして「人の幸せ」にどのように関わってきたのかという事への著者の関心は、やがて、「宗教と医療と人の幸せ」というテーマとなり、「ホリスティック医療」という分野へと導かれる。
医療技術が劇的に進化し、人生100年の時代といわれる今日、患者の意思や幸せとは関係のないところで肉体のみが命を長らえるということが起こってきている。この様な時代にあって、「患者の幸せを実現する医療」とはどのようなものなのか、著者は世界中の宗教と医療への知見を元に、それを世に問いかけ続けています。
この著書の中では、著者がそのプロセスで学んだ膨大な著作が紹介され、本テーマに関心を寄せる読者の参考になるに違いない。
目次
医療から見たキリスト教と仏教の究極に在るもの
<はじめに──序言>
1. キリスト教とは何か──神の呼びかけに応える生き方・モーゼの召し出し
2. 教皇フランシスコのゆるしとアイダル神父
3. 日本人はキリスト教をどう捉えてきたか
4. 世界の宗教界の動きとキリスト教会の衰退
5. キリスト教会の努力の歩み(軌跡)
6. キリスト教会と共産主義
7. キリスト教会の現代社会における役割(使命)とは
8. 権力を持つ強者と持たない弱者、健常者と身障者が共生・共存していける社会を実現する役割が、キリスト教にはある
9. 宗教の現代社会における役割(使命)
<第1部 仏 教>
第1章 キリスト教と仏教のイメージ
1. キリスト教と仏教──救いと癒しを与える世界の二大宗教
2. キリスト教と仏教──宗教に求めるもの
3. キリスト教と仏教のイメージ
4. 肉体的な負い目──病気と老い(加齢)
5. 人間の生き方──人間の努力と神にゆだねること 41
6. 人間の工夫・努力──病気の処方箋に努めること
7. 精神面における病気回復の処方箋
8. ユダヤ教・キリスト教の信仰の捉え方
第2章 仏教成立以前のインドの宗教
1. 仏教(釈迦の教え)の背景としてのヒンズー教
2. ジャイナ教
3. 仏教成立時のインドの時代背景
4. 主流派と反(非)主流派
5. プーラナとパウダの異端
6. 「存在の起源への問い」と「死への怖れ」
7. プーラナの道徳否定論の背景
8. 近代医学の先駆者パラケルススとプーラナ
9. 宿命論と唯物論者アジタ
第3章 ギリシャ哲学と中国の諸子百家
1. ギリシャ哲学における探求
2. ギリシャ思想における「存在の根源への問い・探求」と
キリスト教の聖トマス・アクイナスの「答え」
3. 苦しみ(苦難)はどうしてあるのか
4. ギリシャ思想・自然哲学者の「存在の根源への探求」
5. ヘラクレイトスの探求と答えから導かれるもの
6. デモクリトスとアインシュタイン
7. ギリシャ哲学と中国思想、そしてキリスト教思想
8. キリスト教の中の正統、主流と分派、異端
第4章 バラモン教と仏教
1. バラモン教
2. 西郷隆盛の神格化・一元化とヒンズー教の多元化
3. 日本人とヒンズー(バラモン)教
4. 輪廻転生(サンサーラ)・梵我一如
5. 苦しみからの解放──ヒンズー教とアーベードカル
6. ヒンズー教の中で仏教が強調したもの
7. ヒンズー教、仏教、キリスト教の救いの実践方法
第5章仏教の教えとその展開
1. サンスクリット語における仏教用語
2. 仏教の教えの中心にあるもの──仏心を受け容れる
3. 小乗(ヒナ・ヤーナ、南方仏教、上座部仏教)から大乗(マハ・ヤーナ)へ
4. 仏教が世界宗教となった所以
5. 日本仏教の現代的意義
⑴ローマ教皇フランシスコ来日の波紋
⑵宗教としての仏教
⑶仏教の歴史的展開
⑷現代における仏教の意義
<第2部 日本人の宗教観>
第1章 日本人の宗教観
1. その切り口
2. 日本におけるキリスト教衰退の理由と、これまでも発展してこなかった理由
3. 日本人と外来宗教
4. 日本の独創的思想家
5. 2020年現在における日本人の宗教観
6. 高尾利数の宗教観
7. 一神教であることの危険の指摘
8. 高尾利数の宗教の絶対性についての考察
9. 高尾利数のキリスト教の捉え方
第2章 最近の日本のジャーナリズムの宗教の捉え方
1. 橋爪大三郎の捉え方
2. 井沢元彦の宗教観──『逆説の日本史』から
3. 小林道憲「宗教をどう生きるかー仏教とキリスト教の思想」から
4. 救いとは何か
5. ユダヤ教の教え
6. 死の問題と負荷性の問題は宗教を必要とする
<第3部 キリスト教 >
第1章 ユダヤ教──キリスト教の母体としてのユダヤ教
1. キリスト教の母体としてのユダヤ教
2. ユダヤ教
3. ユダヤ教徒になった日本人・石角莞爾さんの考え方
4. ユダヤ教とキリスト教の違い
第2章 アメリカのユダヤ教
1. キリスト教国アメリカの中のユダヤ教徒(=ユダヤ人)は、キリスト教をどう見ているか──ラビ・クシュナーとユダヤ教
2. ユダヤ教の考え方
3. ユダヤ教の神概念
4. 天国と地獄
5. 「神の望み」とは
6. 神は何故、悪の存在を許されるのか?──神義論
7. 「ヨブ記」における苦しみの意味
第3章 キリスト教の諸様相
1. 反逆と反骨の思想家ラムネーの信仰と挫折
2. プロテスタントの成立をどう捉えるか
3. プロテスタントとカトリック
4. 現教皇フランシスコの信仰理解とエキュメニズム
5. 現代のユダヤ教ラビ・ヘッシェルとフランシスコ教皇
(その1)矛盾は人間が限界を持つ存在であることから生じる
6. 現代のユダヤ教ラビ・ヘッシェルとフランシスコ教皇
(その2)ヘッシェルとマルティン・ブーバー
7. ヘッシェルとマイモニデス──知解を求める信仰
8. へッシェル・キュンク・シャルダン・リュバック──次回作の予告
第4章 イスラエル巡礼の旅の説教
1. 「good morning」は、神が今日も良い一日にしてくださるようにという祈りの言葉です
2. ソドムとゴモラの旧跡とロトの妻の塩柱
3. イエスの洗礼──ヨルダン川でのミサ
4. 心の貧しい者は、幸いである
5. エルサレム市内とダビデ王
6. ヘルマン・ホイベルス神父さまと十字架の意味
7. イスラエル巡礼の旅の収穫
<第4部 補論 宗教と医学>
第1章 ホリスティック医療とホリスティック(エキュメニカル)神学
第2章 医療と宗教の接点──医療文化と宗教文化
1. 医療文化と宗教文化について
2. 気付き──ティック・ナット・ハーン
3. 聖ヒルデガルドのmelancholiaと viriditas
4. 仏教の宗教観とキリスト教の類似性
5. 鈴木大拙「日本的霊性」と日本における宣教──医療文化と宗教文化統合への道
第3章 日野原重明医師の医療と信仰
1. 新老人の生き方
2. 「十歳の君へ」
3. 延命医学から生命を与えるケアの医学へ
4. チームによる連繋ケアの工夫
5. 信仰と医学
6. 瀬戸内寂聴さんと語る
7. 六十歳は二度目の成人式
8. 100歳になるための100の方法
第4章 医学と信仰
1. 病気、老い、そして死
2. 老いと病気の治療を体験した人々の生き方から学ぶ
3. トゥルニエ医師の癒し方
<むすびに>
1. および、「病気、老い、そして死」について 238
2. 天理教と宗教の究極にあるもの
3. 医学と宗教との接点を繋ぐ──結語
前書きなど
<はじめに---序言>より抜粋
本書は、キリスト教と仏教が、現代社会に、いかなる癒しと救いをもたらすものとなり得るかという思いを込めて書かれています。著者がキリスト教徒であることから、その視点が反映されていますが、日本人である自分には、産まれながらに仏教は浸み込んでいます。本書には、キリスト教と仏教の教理(教え)と自身の体験(自伝)、双方が書かれています。
そして、キリスト教の役割を述べる時は、そこには、対極に仏教が常に意識され、据えおかれていることを、知っていただきたいと思います。
また、キリスト教と仏教は、突然、世界の歴史に出現したわけではありません。それぞれ、出現する前に前史という経緯がありました。
本書は、キリスト教と仏教の成立以前の経緯も、書かれています。バラモン教やユダヤ教に、多くの紙面をあてたゆえんです。
そして、現代日本の宗教に対する見方にも、言及しました。参考にしていただければ、幸いです。仏教もキリスト教も、究極的には、人間の生きる意味を問い、探求し、答えようとしていることにおいて、軌を一にさせているのではないでしょうか。
本書を通して、キリスト教と仏教に対する探求、そして、宗教に対する探求の道が、深められれば幸いです。
坂本陽明
版元から一言
人生百年の時代にあって、「100年間幸福に生きることができた」と安心立命できる人はほんのわずかでしょう。信仰心が篤く熱心に宗教を奉じる人達でさえも、晩年になり、体が思うようにならず、ましてや癌などの病気で入院を余儀なくされる状態になると、100年の人生が恨めしく思うときもあるかもしれません。
著者自身も70歳を過ぎ心と体の不安と不調を抱えながら、自らの切実な問題として書いているがゆえに、何気ない言葉にも重みが感じられます。
この本は「医療と宗教と人の幸せ」という、医療技術が急速に進歩している現代に突きつけられている課題を、神父である著者が多くの知見を元にその糸口を見いだそうと書いたものです。
幸せで実存的な生き方をしてきた多くの先人たちへの知見と、宗教と医療への知見。その元にある多くの著作が紹介されていて、このテーマに関心のある読者の参考になるかと思います。
上記内容は本書刊行時のものです。