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ガリラヤのイェシュー 山浦 玄嗣(訳) - イー・ピックス
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ガリラヤのイェシュー 改訂版 日本語訳新約聖書四福音書
原書: 新約聖書

A5変型判
縦210mm 横127mm 厚さ2mm
663ページ
上製
定価 2,400円+税
ISBN
978-4-901602-33-4
Cコード
C0016
一般 単行本 キリスト教
出版社在庫情報
在庫あり
初版年月日
2011年10月
書店発売日
登録日
2012年6月6日
最終更新日
2019年11月22日
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受賞情報

2013年第2回キリスト教本屋大賞受賞作

書評掲載情報

2015-04-12 産經新聞
2011-12-11 毎日新聞
評者: 池澤夏樹(作家)

重版情報

4刷 出来予定日: 2013-11-01
3刷 出来予定日: 2012-05-01
2刷 出来予定日: 2012-01-12

紹介

この本の元になったのは2002年から2004年にイー・ピックスから出版された『ケセン語訳新約聖書:全四巻』です。
『ケセン語訳新約聖書』を出版し、これが注目され、山浦さんが全国で講演をする度にどの地でも言われたことは、「ケセン語の聖書は新共同訳聖書よりもわかりやすくストンと心に収まるけれど、やっぱりケセン語ではわかりづらい。今度はぜひ”日本語”で聖書を翻訳してほしい」という声でした。
そして、『ケセン語訳新約聖書』の出版から10年以上を経た2013年10月に完成したのがこの『ガリラヤのイェシュー』です。この本は、出版わずか半年で1万冊も売れ、大ベストセラーになりました。

ちょっと聞き慣れない「イェシュー」という言葉はもちろんイエスのことですが、本来はヘブライ語で「イェホーシュア」と言うそうですが、訛(なま)りの強いユダヤ北のガリラヤ地方では訛って「イェシュー」と言ったのだとか。そこで本書のタイトルは『ガリラヤのイェシュー』となったわけです。日本の東北にある気仙地方は、ユダヤのガリラヤ地方と同じように首都から北にはずれた地理関係にあるのです。しかも、ガリラヤと同じに訛りも強い。(笑)

前書きなど

暁闇の中から    山浦玄嗣
 ここにお届けする一書はおよそ二千年の昔、地中海を取り囲む強大なローマ帝国の東の辺境に起きた、とある出来事を記したものである。ここにイェフゥド(ユダヤ)という小国があった。歴史は古いが、栄光に輝いた時代は僅かで、そのほとんどは近隣の強国による圧迫、征服、隷従の非運に見舞われ、遂には国を失い、流浪の民となった。この国が地上から抹殺される四〇年ほど前にこの事件は起きた。主人公の名はイェシュー。職業は百姓大工。後に放浪のお呪い医術師兼説教師。生まれは多分紀元前六年頃。死んだのは多分三〇年頃。その誕生の次第はお定まりの偉人出生譚に彩られてはいるが、確実なことは不明だ。わかっているのは彼の短い人生の仕上げの二、三年のことだけで、特に詳しく物語られているのはその悲惨な最期の有り様である。彼は時の権力に危険人物視され、冤罪のもとに、恥辱的な磔刑によって殺された。
 人は森羅万象の中に人知の及ばぬ恐るべき種々の力を認め、これを八百万の神々とした。多神教である。噴火、地震、津波、嵐、雷、すべては神々の怒りだった。気まぐれで制御不能の神々の怒りを宥め、災いを逃れようとする技術が発達した。神々は恐るべき破壊力をもって君臨しているものの、これを巧みに利用して自己の利益とすることができるとも考えられた。神々が人間の欲望を満たすための道具になる。その神秘的な能力を身につけた祭司階級が、世俗の王権とともに強大な権力を握った。
 伝承によれば、この民はかつて世界最強の帝国エジプトで悲惨な奴隷民族だった。この物語の時代より千数百年前に、指導者モーセに率いられてエジプトを脱出し、シナイの荒野で放浪の生活を送り、そこで風変わりな宗教を身につけた。これはエジプトのアマルナ王朝で萌芽した思想だが、八百万の神々を否定し、万物を創造主宰する神はただお一方であるとする。この神はすべての被造物のあるじであり、人はそのしもべである。しもべはあるじの意に添って働くものであり、あるじに対して何かを要求する立場にはない。しもべのとるべき態度はひたすらあるじである神の言葉に聴き従うことだ。これによって神に愛され、真の幸せがある。これが一神教である。
 絢爛たる多神教の時代に、この貧相な放浪の民は天地万物を創造し主宰する唯一神との間に厳かな契約を結んだ。御言持ち(預言者)によって伝えられる神の言葉に従い、神の与えた掟(律法)を遵守して正しい道を歩み、神の保護を享受するという契約である。この掟は生活万般を律した。やがてモーセを始め爛熟したエジプト文明下での暮しを経験した世代が死に絶えて、過酷な荒野の暮しに鍛えられた世代が育ったときに、彼らは英雄ヨシュアに率いられて、神から与えられたとする約束の地カナン(パレスティナ)の地に侵略する。
 彼らは自らを先祖の名によってイスラエル人と称し、十二部族に分れて部族連合を形成していた。ヘブライ人という呼称もあるが、これはエジプト時代に異民族が彼らを呼んだ名である。ゆえにその言語もヘブライ語と呼ばれる。
 イスラエル人は土着のカナン人との抗争を繰返しつつ、やがて中央集権的王制を採用し、初代サウル王から始めて二代目ダビデ王の時代にカナンを征服統一し、三代目ソロモン王の時代に繁栄は絶頂に達した。しかし、王の死後国は分裂、弱体化し、北のイスラエル王国はアッシリア帝国によって滅んだ。南のユダ王国もバビロニアによって滅び、都イェルサレムはソロモンの築いた壮麗な神殿もろとも破壊され、主立った住民は敵都バビロンに拉致されて長い捕囚の時代を望郷の涙のうちに過ごす。
 この苦難の時代に、民族の精神を堅持しようとして多くの優れた思想家が現われ、後に聖書と呼ばれることになる書物が成立してくるのである。
 バビロニアがペルシャによって滅びると、イスラエル人は帰国を許され、国を再興した。これがユダヤで、ユダヤ人という名はこの時から始まる。これは異民族からの呼称で、彼ら自身は常に誇りを持って自らをイスラエル人と称した。
 ユダヤ人はまず破壊された神殿を再建した。新生ユダヤは祭司の神権政治で治められていたが、やがてペルシャがマケドニアのアレクサンドロス大王によって滅ぶと、この地は滔々たるギリシャ文明に呑みこまれる。大王の死後、帝国は分裂し、ユダヤはシリアのセレウコス朝によって支配される。この王朝は土着の宗教を根絶してヘレニズムによって国内を統一しようとし、ユダヤ人は彼らの聖なる掟の遵守を禁止され、神殿には彼らの忌み嫌うギリシャの神々が祀られた。祭司マタティアという者が反乱を起こし、徹底的ゲリラ戦術で抵抗し、ついに彼の息子、マカバイ(槌)の異名を持つ勇者ユダらによって独立を獲得した。これをハスモン王朝という。マカバイ一族は王権と祭祀権をともに掌握し、サドカイ衆と呼ばれた。これに反対する原理主義的な一派がエッセネ衆で、彼らは荒野にあって禁欲的な修道生活を送る。やはりこの体制に批判的な、民衆出身のファリサイ衆はモーセの掟を現実生活に適合させる膨大な掟の体系を作り上げ、民の暮しを律し、掟語り(律法学者)と称する学者を輩出した。
 やがて、イタリアにローマ帝国が生まれた。四隣を征服し、ギリシャ人たちの帝国を粉砕して覇者となった。このどさくさに紛れて政治力を発揮し、ハスモン王家に取って代わってユダヤの王位を簒奪したのがユダヤの南隣、ユダヤ教に改宗したイドマヤ人の頭、ヘロデである。ヘロデは小国の王ながら卓抜な政治力によって大王と呼ばれた。彼はローマの帝権に取り入って大をなし、ユダヤは空前の繁栄を遂げた。神殿に大改築を施し、壮麗なものにした。ローマ風の城砦、宮殿、都市が次々と建てられた。その栄華を支えたのは重税である。特に北のガリラヤ地方はガリラヤ湖を有する豊饒な土地で、それゆえ徹底的に搾取された。路傍に餓死者があふれ、家を失った者がさすらい、盗賊が跋扈し、血腥い反乱が頻発した。緑の大地は血にまみれ、闇が世界を覆っていた。民族の不幸を救うには神との神聖な契約である掟を徹底的に遵守するほかはないとする半ば狂信的なファリサイ主義の呪縛と、それをなし得ぬ現実との乖離が人々の間に救いがたい差別を生む。生活苦から瑣末な掟の遵守が不可能な貧民、病人、不具者は天罰を蒙った穢れ人として社会から排除される。貴族だけが肥え太り、民は飢える。この不幸のもとは夷狄と異教の穢れであるとして、怒れる民は攘夷思想に凝り固まり、武器を取る。ローマの傀儡である支配層は民族の伝統精神を邪魔者扱いし、国の存続のためにはヘレニズム世界に対して開国するにしかずとする。
 そして、この絶望的な民衆の中に奇妙な思想が芽生えた。やがて神からつかわされた「お助けさま」が現われ、われらの嘆きを救ってくださる! この熱望は燎原の火の如く燃え広がり、われこそは「お助けさま」なりと叫んで剣をとる者どもが容赦ない支配者の刃のもと次々と無慚な屍を野にさらした。そして、あの酸鼻の限りを尽くしたユダヤ戦役が勃発する。同胞百万人の命を奪われ、ついに国そのものを滅ぼしてしまったのもこれら「お助けさま」たちの蜂起だった。
 そして、これから物語るのは、これらの「お助けさま」たちの中にあって特にも風変わりな「お助けさま」、ガリラヤ出身の田舎者、一人の百姓大工の話である。

版元から一言

新約聖書は現代の日本とは地理的、時間的、文化的にきわめて遠い二千年前の出来事を書いた文章です。
そこで著者は、日本人の生活文化からかけ離れている文物・動作については、本文の内容を損なわない限り思い切って変更し、 日本的な表現に置き換えました。

イエスの活動した二千年前のユダヤ社会には厳しい身分制度がありました。王に家臣、商人や地主などの富裕層。商人や地主のもとには自作農や小作農がいて、 零落した日雇いの労務者、そして奴隷がいました。そんな混沌とした社会を分かりやすくするために、 幕末から明治維新にかけて使われていた日本語を擬似的に用いることを著者は試みています。
地の言葉「公用語」は関東武家階級の言葉に似せる。
ガリラヤ出身のイエスとその仲間は 東北地方の農民の言葉。
イエスは仲間内で喋るときには方言丸出しだが、改まったお説教をするときや、 階級の上の人に対しては公用語を使う―。

例えば…
ガリラヤ衆はケセン語や仙台弁、盛岡弁。
ガリラヤ湖東岸の異邦人たちは津軽弁。
領主のヘロデは大名言葉
ファイサイ衆は武家用語
イェルサレムの人々は京言葉。
商人は大阪弁。
サマリア人は山形県庄内(鶴岡)弁。
イェリコの人は名古屋弁。
ユダヤ地方の人は山口弁。
ギリシャ人は長崎弁。
ローマ人は鹿児島弁。
この聖書訳では、全国各地の多彩な方言が飛び交います。

この聖書は、キリスト教の信仰を持たない人がキリストの神髄を学ぶのにももちろん適していますが、信仰を持ち普段から聖書に慣れ親しんでいる人は、その聖書の副(福)読本として、難解な箇所を読み解くときにひもとく本としてもお役に立つはずです。

著者プロフィール

山浦 玄嗣  (ヤマウラ ハルツグ)  (

1940年、東京で生まれる。
釜石市、気仙郡越喜来村(現:大船渡市三陸町越喜来)に育ち、その後気仙郡盛町(現:大船渡市盛町)に移る。
1966年、東北大学医学部卒業。
1971年、同大学院医学研究科外科学専攻卒、医学博士となる。
1981年、東北大学抗酸菌病研究所放射線医学部門助教授。
1990年、岩手県地方の言葉の研究と文化の振興により岩手県教育表彰受賞。
2002年、大船渡市市政功労者表彰(文化功労)受賞。
専門の医学のかたわら、ふるさと気仙地方の言葉『ケセン語』の研究に余暇を捧げ、 『ケセン語入門』(1987年、 日本地名学会「風土研究賞」受賞、詩集『ケセンの詩』(1989年、岩手県芸術選奨受賞)、 ケセンの歴史を書いた 『ヒタカミ黄金伝説』(1998年、自費出版文化賞-学芸部門-受賞)、 『ケセン語大辞典』(2000年、岩手日報 文化賞受賞)などの著書がある。

関連リンク

http://ihv.jp/?pid=128628580

上記内容は本書刊行時のものです。