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戸建住宅地管理論
自律共生型社会による
- 初版年月日
- 2018年2月
- 書店発売日
- 2018年2月19日
- 登録日
- 2018年2月6日
- 最終更新日
- 2018年4月25日
書評掲載情報
2018-05-17 |
建築技術
6/821 評者: 金丸宜弘 |
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紹介
住宅ストックの時代、夢のマイホームとあこがれてきた郊外の一軒家。
新しく開発された戸建住宅地は、時代のニーズにどう応えるか?
そのひとつの答えは、戸建の所有者による所有者組合による管理だ。
アメリカで行われている同様の所有者組合、HOA(Home Owners Association)方式を
より日本の慣習に合わせて管理する日本型HOAの考え方、実践例を紹介。
まち育ての専門家の助けを借りながら、持続的なまちが運営される「まち育て」の視点から、自律し、共生する戸建住宅地を目指す。
2004年以降、郊外の戸建住宅地で実践されてきた実例を紹介。
目次
1章・現代、家づくり事情
1節・あこがれのマイホームの移り変わり/2節 アメリカと日本の住宅地の違い/3節 家を住み熟すための課題とアドバイス
2章・現代、まちづくり事情
1節・「町」「街」、あるいは「まち」の歴史/2節・まちの間取りを考えてみる/3節・まちづくり」から「まち育て」へ
3章 プレイスメイキングからの実践
1節・私たちの目指すプレイスメイキングとは/2節・戸建住宅地でのプレイスメイキングの考え方/3節 ・プレイスメイキング10年の実践から/4節 つくばロケーションヴィレッジでのプレイスメイキング
4章・自律共生型社会を目指して
1節・戸建住宅地で目指す自律共生型社会/2節・自律共生型社会への問題提起
索引
前書きなど
アメリカを代表するヒーローのひとり「スーパーマン」、そして日本を代表するヒーローのひとり「水戸黄門」。ふたりの違いは、なんでしょう?
スーパーマンことクラーク・ケントは、実はクリプトン星のカル・エルという名前の宇宙人です。崩壊の危機にあったクリプトン星からカプセルに載せられ地球に来て、子供のない夫婦に育てられたという設定で、職業は新聞記者。ふだんはさえないのですが、悪事や災難が起きると、公衆電話ですばやく着替え、自ら闘いに出ます。
一方、水戸黄門は、実在した水戸徳川家2代藩主、徳川光圀がモデルです。水戸黄門というのは、後に講談で演じられた「水戸黄門漫遊記」で付けられた名前で、お付きの家来、助さんと格さんを連れて、町民(越後の縮ち りめん緬問屋のご隠居)の姿で旅をしながら、全国津々浦々を見て回り、代官の悪政にいじめられている庶民を見つけると、悪事をあばき、ときの将軍家の証である「葵の御紋の印い んろう籠」を出して、悪代官どもを懲らしめるという設定です。
スーパーマンも水戸黄門も、正義の味方で、悪を懲らしめるという設定は同じ。ただどういう立場で、悪と闘うかで違いが出ます。クラーク・ケントは、変身したとはいえ市民の立場で闘い、ことが済むと名乗らずに去る。水戸黄門は最後に伝家の印籠を示し、自分の権力者としての立場を明確にします。権力者として悪政をただす水戸黄門と、自ら市民として闘うスーパーマンは、ほんとうは似て非なるもの、ドラマの発想は大きく違います。
まちづくりを考えるとき、この違いはとても大切で、考えるべき価値を含んでいると思います。
私たちの株式会社プレイスメイキング研究所は、10年以上、まちづくりやまち育てに取り組むさまざまな立場のひとびとと、主に戸建住宅地の維持管理というテーマを仲立ちに、正面から向き合ってきました。
家を建て、道路を造り、小・中学校や公園、ときにショッピングセンターなどを造る、こうした「まちづくり」、そしてそのまちの最大公約数を決める「公共」は、その方向性をだれが決め、だれが主役で、どう行うのでしょう?
まちはお上が整え、何か間違いがあれば、それをただす正義の味方がどこからともなくやってくる。まちづくりに関わるときに、そんな都合の良いことを私たちは心のどこかでぼんやり考えているのではないでしょうか?
「まちづくり」や「公共」について、それぞれの役割や取り組む姿勢を整理し、日常生活を豊かに、そして非常時でも強いまちにするためにはどうすればいいか。この本で「まち」はだれのものなのか? というような問いを立てながら、みなさんといっしょに考えていきたいと思います。
スーパーマンや水戸黄門のような特殊な力は無くても、自分の立場や他者との関係と役割を見て、いっしょに考えてみましょう。そう“水戸黄門を味方に付けたスーパーマン”の気持ちで、どんな難しいまちの課題にも立ち向かえるかもしれません。
版元から一言
2004年に創業した筑波大学発ベンチャーのプレイスメイキング研究所は、
つくばエクスプレスの研究学園駅を中心に開発が進むエリアで
新規に建てられる戸建住宅地の管理・運営を主にしている。
アメリカのHOA(Home Owners Association)がモデルだが、日本の慣習にあわせ、計画的戸建住宅地でのコミュニティづくりに携わっている。
住宅ストック、空き家が問題となるなかで、なぜ新築一戸建てなのか?
この辺も破壊と創造を繰り返すつくばらしい本といえば、いえなくもないが、編集者としては、新たな都市論としても読めるようにと工夫したつもりだ。
上記内容は本書刊行時のものです。