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無意識と出会う
- 出版社在庫情報
- 品切れ・重版未定
- 初版年月日
- 2004年5月
- 書店発売日
- 2004年5月8日
- 登録日
- 2010年2月18日
- 最終更新日
- 2025年7月14日
紹介
ユング派精神分析のもっとも重要な技法「アクティヴ・イマジネーション」を、ごく初期の事例にしぼって解説し、いつ、どんな場合に、どう導入するか、解釈の仕方、注意事項などを具体的に示す。
分かりやすい事例をもとに、どうすれば実践できるかを具体的に説く初級篇。
目次
はじめに――内面の空虚と方向喪失への処方箋
第一章 アクティヴ・イマジネーションとは何か
シンプルでほどよく奥深いマテリアル
Aさんの事例
コンプレックスの意味
犬のイメージ
生と死をめぐって
攻撃する鳥
敵の正体
実践に向けて
第二章 ユングの分析心理学
心の構造
イメージと象徴
個性化と全体性
心の境界と共時性
錬金術とクンダリニー・ヨーガ
アクティヴな自我の重要性
第三章 実践のための予備知識
イマジネーションという営み
アクティヴとはどういうことか
実践のための条件
どんな問題に有効なのか
第四章 実践の方法
実践のための一〇段階
重い人格障害や精神病を抱えるイマジナーの場合
第五章 アクティヴな態度の効果
任意の絵からはじめる方法
Bさんの事例
牛の象徴性
解釈
自我はアクティヴか
アクティヴに遠慮する
第六章 パッシヴな態度の効果
Cさんの事例
解釈
自我がパッシヴになるとき
Dさんの事例
解釈
Eさんの事例
解釈
無意識は生きている
おわりに
註
あとがき
前書きなど
はじめに――内面の空虚と方向喪失への処方箋
自分の内面を見つめる方法はたくさんある。代表的なのはさまざまな心理療法だが、そのなかにさえ、深いところまでじっくり探求できるやり方はあまりない。無意識の内奥に隠された「超越的な癒しと救いの力」は、宝の持ち腐れ状態になっているのだ。ユング心理学で用いるアクティヴ・イマジネーションは、そうした力を引き出すために私たちが無意識と直接にやりとりできる、他に類を見ない方法である。
アクティヴ・イマジネーションは、スイスの深層心理学者、カール・グスタフ・ユング(一八七五~一九六一年)が発展させた精神分析と心理療法のためのテクニックである。この方法では、私たちが日頃、何気なく行なっている想像という行為が持つ可能性を徹底的に追求する。一般に、日常の想像活動はひどく漠然とした刹那的なものになっている。ある想像を何週間、何カ月にもわたって一つのストーリーとして発展させ続けてみる、ということを試みた経験のある人は、そうはいないだろう。にもかかわらず、ほとんどの人は、想像がもたらすものの限界を知っている気になっている。だが、ちがう。あなたは、その途方もない可能性をまだ知らない。
無意識は、ふだんは意識されていないのだから、自我にとっては異質な他者である。しかし、異質であるからこそ、自我にはない力を秘めているのだ。そして、イマジネーション、すなわち想像こそが、そうした力にアクセスするもっとも確実な方法である。ただし、何かのイメージを漠然と思い浮かべているだけでは役に立たない。イメージに対するこちら(「私」、つまり自我)からの関わり方のコツを覚える必要がある。
コツのひとつに、無意識とのやりとりを折衝(1)と見なすということがある。自我は無意識の力を借りたいが、主導権は手放したくない。一方、無意識の側は、自我の協力を得て少しでも意識化され、現実のものとなりたがっている。そこで、自我と無意識とが、イメージという共通の言葉を介して、互いに主張すべきは主張し譲るべきは譲って折衝しようというのが、アクティヴ・イマジネーションの原理なのである。
イメージにはもともと自律性があるので、自我が邪魔さえしなければ、無意識自身の意志によって勝手に動く。つまり、何かのイメージがふと浮かび上がってくるわけだ。これは無意識からのメッセージである。それに対して自我がある行動をすれば(もちろんイメージの世界で)、そこには自我の意見が反映されることになる。それから、再び無意識に自由に動いてもらう。つまり、次の場面が思い浮かぶに任せるのだが、これは先の「自我の意見」に対する無意識からの主張となっている。そこで、次には自我が……というふうに、いわばイメージのキャッチボールを行ない、一つの物語のかたちにしていくのである。
こうして自我が無意識からのメッセージを読み解いて意識化していくと、無意識はたとえば神的な存在として登場するようになり、しばしば奇跡を起こす。私たちの魂は震撼させられるのだ。それは現実の世界にも波及して、癒しや救いが経験される。心理的、身体的な諸症状の消失や軽減、精神的な安らぎやある種の洞察ないしは悟りがもたらされるだろう。もちろん奇跡はつねに生じるわけではないが、だとしても、重い苦悩や症状を意味あるものとして抱えていけるようになることが多い。他のいくつかのコツも身につけた上で、アクティヴ・イマジネーションを半年から一年くらい続ければ、それが実感できるようになってくる。考え方や生き方はずいぶん変わっているだろう。・・・
版元から一言
本書を推薦します―
●ユング心理学研究の新しい頁を開く ―樋口和彦(日本ユング心理学研究所所長)
ユング心理学に深入りする者は、一度は悪魔や天使が棲む世界にほんとうに足を踏み入れて、生身の体でもう一度この世界に出て来たい、と思うときがある。はたして、それは可能か。この本は、その手だてを、実際に誤ることのないよう述べてくれる待望の書であり、アクティヴ・イマジネーションについて詳述された、初めての書である。ごく最近、わが国でも分析家の資格のとれるユング研究所が誕生した。
著者は、チューリッヒのユング研究所で資格をとり、トレーニング・アナリストとして、そこで中核的に活躍する新進気鋭のユング派分析家である。日本でユング研究所が発足するにあたって、その神髄であるアクティヴ・イマジネーションについて、すぐれた著作が出版される意義は大きい。これによって、分析の過程で意識が無意識に奪われかねないようなわが国の誤った現状が正され、ユング心理学研究に新しいページが開かれるものと期待している。
●無意識との対話への、誘いの書 ―諸富祥彦(明治大学文学部助教授)
本シリーズのすばらしさは、その実践性、つまりプラクティカルなところにある。専門家ばかりにでなく、一般の方にも、無意識との対話に使える、役に立つことを目差して書かれている。しかも、ユング心理学特有の深さや濃密さを少しも失うことなしに、である。著者が強調するように、アクティヴ・イマジネーションの要諦は、「自我のアクティヴな態度」にある。それは、意識の訓練法である。無意識とのかかわりにおいて徹底的に意識的であること、自覚的であること。そのような意識の磨き方の要諦が、見事に、具体的に示されている。それはまた、自我の機能を失わずにトランスパーソナルな全体性へ至る道である。本書を読み終えた後、私はすぐにこの方法を試みてみたくなった。そのような魅力にあふれた「無意識との対話への、誘いの書」である。
●待望の実践的指導書―山中康裕(京都大学大学院教授)
「アクティヴ・イマジネーション」とは、わが国ユング派の草分けである河合隼雄氏とその師シュピーゲルマン博士により、かつて「能動的想像法」として紹介された心の探求法である。分析心理学者ユングによって創始された、このすぐれた無意識探索法にして、十全なる心の問題解決法でもある本法の、真に有用な実践的指導書が待望されて久しかった。
今回、この方法のわが国における第一人者である老松克博氏によって、内容別に三冊に分かって深慮熟考された本シリーズは、真にお勧めするに足る充実した書である。自身の心の探求に興味をお持ちの一般の読者から、ユング派の専門家に至る、広く深いスペクトルを射程とする本書を、確信をもってお勧めする次第である。
●人生にとって本当に大事なこと―池田晶子(文筆家)
「イメージする」ということがどういうことなのか、私はずっと知らなかった。逆から言えば、私は自分がイメージすることができない人間なのだということを、最近になって知ったのである。「思い浮かべる」と言って、視覚像など、見えたことがない。論理的に考える長年の習慣のため、そういう回路が、悲しいかな脱落してしまったらしいのである。
このような技法を実践できる人は、幸いである。自分を超えたものを認めるということは、人生にとって、本当に大事なことだ。人類はそのために様々な技法を開発してきたけれども、能動的受動性とは、まさにその要諦だろう。自我主義の破綻が明らかな現代世界において、このような技法が、新たな世界への扉を開くだろうことを期待したい。
関連リンク
上記内容は本書刊行時のものです。
