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すべては子どもたちの学びのために 原田 浩司(著) - あめんどう
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すべては子どもたちの学びのために 不登校、いじめ、勉強嫌いがいなくなった学校

発行:あめんどう
四六判
縦188mm 横128mm 厚さ14mm
重さ 272g
224ページ
並製
価格 1,600円+税
ISBN
978-4-900677-27-2
Cコード
C0037
一般 単行本 教育
出版社在庫情報
在庫あり
初版年月日
2016年3月
書店発売日
登録日
2019年2月15日
最終更新日
2019年2月15日
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紹介

不登校、いじめ、ケンカ、差別、授業妨害、教師への暴力・問題山積の小学校が、見違えるような変貌を遂げた。
子どもたちの表情からとげとげしさが消え、勉強をあきらめていた児童が学ぶ喜びを取り戻した。
教師の考え方にどんな変化があったのか。子どもたちの心に何が芽生えたのか。
全国的に注目される学校改革を主導した著者が、「学び合う学校」というヴィジョン、改革の全容、そして、それらの根底にある教育観を語る。

目次

PART 1――学校を変えた発想

1章 朝のキャッチボール
2章 学び合う学校をめざして

PART 2――学校改革はこうして進んだ

3章 どこまでも子どもに寄り添う(三次支援)
4章 落ちこぼれる子どもを出さない(二次支援)
5章 教育の質は授業で決まる(一次支援)
6章 「学び合う共同体」としての学校

PART 3――子どもたちの現状

7章 発達障害の子どもたち
8章 児童養護施設の子どもたち
9章 外国籍の子どもたち

PART 4――教育を再考する

10章 子どもを支援する教育
11章 校長の仕事

前書きなど

はじめに―二つの小学校

 二つの小学校を紹介します。いずれも地方の小都市にある市立の小学校で、のどかな風景のなかにあります。どちらも一学年一クラス、児童数二二〇余名、教職員数約三〇名の小規模校です。児童数だけでなく、その家庭環境や社会的背景などにも多くの共通点があり、ほとんど瓜二つと言ってよいほどです。
 ところが、一歩学校に入ると、ずいぶん様子が異なります。
 一方の学校では、まず朝に登校をしぶる子が多いことが目につきます。ようやく校門をくぐっても校舎の入り口で立ち往生し、先生に促されると、ふんばったり柱にしがみついたりして動かなくなる子もいます。おとなしく教室に入っていく子も、表情はどこか暗く、笑顔はあまり見られません。
 授業がなかなか進まないほど荒れている教室もあります。先生が大きな声で何か話していますが、多くの子の耳には届いていないようです。おしゃべりを続け、教師の注意を無視し、立ち回っています。教室を抜け出したり、学校の外にまで出ていく子もいるので、授業どころではありません。職員室を見渡しても、先生たちの表情は沈んでいます。児童への対応で疲れ気味のようです。
 もう一方の学校は、登校してくる子どもたちの表情は明るく、朝のあいさつの声にも元気があります。教室では、先生がおだやかな声で子どもたちに語りかけ、子どもたちはその話を目を輝かせて聞いています。ふざけ合う子もいますが、先生が軽く制すると、すぐに学びに向かう姿勢に戻ります。教師たちの表情も明るく、職員室には笑い声があります。
 外面的なプロフィールだけを見ると、きわめて似ている両校ですが、授業風景や職員室の様子は大きく異なり、子どもたちの表情も教師の雰囲気もまったく異なります。この違いはどこから生じているのでしょう。

 すでにお気づきでしょうが、この二つの小学校、じつは別の学校ではなく、同じ学校です。
 私は二〇〇八年四月にこの学校(この本では「A小」と表すことにします)に校長として赴任し、定年退職するまでの六年間、校長を務めました。二つの小学校のうち、前者は私が赴任してきたときのA小、後者は退職するときのA小なのです。
 同じ学校ですから、外面的なプロフィールが似ているのは当然です。けれども、子どもたちの表情や学校の雰囲気は様変わりし、まったく別の学校と言ってよいほどです。私が着任したころのA小は、荒れた学校として近隣の教育関係者のあいだで知られていましたが、現在では、特別支援教育で成果をあげた学校として全国的に注目される学校になっています。
 この変化は、教職員の努力、保護者の理解と協力、校区にある児童養護施設との連携、そしてなによりも、子どもたちが本来もっている「学びたい」という意欲によってもたらされました。校長という立場で、この変化の過程に加われたことは本当に幸せなことでした。

 A小が大きく変わったという噂は、市から県、県から全国へと広がり、参観に訪れる方の数もしだいに増えていきました。校長としての最後の年には、教員をはじめとする学校関係者、研究者やメディアの方々の見学が引きも切らず、参観のあった日が五〇日、訪れた方の総数は五〇〇人にも上りました。
 参観されたみなさんの感想から、A小の実践が、児童生徒への指導や学校経営に悩む先生方の参考になり、刺激になり、勇気づけになっていることがひしひしと伝わってきました。
 とはいえ、一回や二回の参観ではわからないことが多いのも事実で、多くの方から学校改革の全体像を本にまとめてほしいというご要望をいただきました。退職して学校と適切な距離ができた今が好機と考え、改革の全体像を一冊にまとめることを決意しました。
 この本は、A小の変容と子どもたちの成長、それをもたらした実践と教育観について紹介する本です。記述は私が在任した六年間についてのことになりますが、この本が可能になったのは、言うまでもなく、それ以前の先生方、それ以後の先生方の真摯な努力のたまものです。
 お断りするまでもなく、本書の内容はすべて実際の記録ですが、登場する方々の名前はアルファベットで示し、児童のエピソードについては、プライバシー保護のために必要な編集を施しました。
 この小さな本が、学校現場で日々奮闘しておられる教師のみなさん、さまざまな専門分野で子どもたちの支援に当たっておられるみなさん、そして小中学生の子をもつお父さんやお母さんにとって、少しでもお役に立つことができれば幸いです。

著者プロフィール

原田 浩司  (ハラダ コウジ)  (

宇都宮大学大学院教育学研究科教育実践高度化専攻(教職大学院)准教授。
1953年、栃木県生まれ。同志社大学商学部、宇都宮大学教育学部を卒業。1980年から栃木県の小中学校で教える。2008年度から6年間校長を務めた鹿沼市立みなみ小学校は、特別支援教育を中核とする学校改革で全国的に注目を集めた。2014年、同校を定年退職。
現在、教師志望の学生や現役教師を指導するかたわら、学校改革や特別支援教育に関するアドバイス、講演などで全国を奔走している。また、地元小中学校のスクールカウンセラーとして、子どもたちや教師の支援も続けている。
特別支援教育士スーパーバイザー(日本LD学会)、学校心理士(日本学校心理士会)、学校カウンセラー・スーパーバイザー(日本学校教育相談学会)。
趣味は音楽鑑賞。中学時代はオーケストラ部でクラリネットを演奏。教員時代はブラスバンド部顧問、地域ではマーチングバンド&バトントワリングの団長も務める。

上記内容は本書刊行時のものです。