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シャープ再建   鴻海流スピード経営と 日本型リーダーシップ 中田行彦(著/文) - 啓文社書房
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シャープ再建   鴻海流スピード経営と 日本型リーダーシップ

発行:啓文社書房
四六判
296ページ
並製
価格 1,800円+税
ISBN
978-4-89992-061-8
Cコード
C0030
一般 単行本 社会科学総記
出版社在庫情報
在庫あり
初版年月日
2019年4月15日
書店発売日
登録日
2019年2月21日
最終更新日
2019年3月29日
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紹介

激変するアジアの「ものづくりネットワーク」
日本企業は、どのように生き延び、そして発展していくのか?

周知の通り「シャープ」は、債務超過に陥り、台湾の鴻海精密工業の傘下となった。液晶の勝ち組であったシャープが、巨大構想により液晶の堺工場を建設したことをきっかけとして一気に債務超過にまで至ってしまったのだ。
日本の大手電機メーカーが、外資系企業に買収されるのはこれが初めてのことであった。
それから2年の時を経て、鴻海の傘下でシャープは驚異の復活を遂げた。なぜ鴻海の傘下でシャープは復活することができたのか――。
これが、この本の主題である。

目次

はじめに
第一部 シャープの救世主:戴社長の「日本型リーダーシップ」

第1章 戴正呉社長からの依頼で面談
戴社長からの依頼で面談
戴社長のシャープ社長就任と黒字化への自信
「テレビ1000万台」の野心的計画達成へ
ビジネスモデルを変える!!!
社員寮に住む「清貧」な人柄
創業者早川徳次氏への傾倒

第2章 「社長メッセージ」から見る戴社長の人柄と戦略
「社長メッセージ」の提供を受ける
誠意と創意”ある仕事と「借力使力」(2018年6月25日)
真の再生に向け。今一度、経営基本方針に立ち返ろう(2018年4月6日)
自分の信条を明らかにする(2016年8月22日)
“One SHARP”と「有言実行」(2016年9月21日)
「創業の精神」を取り戻そう(2016年11月1日)
調達コストダウンの交渉力(2016年11 月22日)
成長への転換点、反転攻勢に向けて競争力を高めよう(2017年1月
23日)
“トランスフォーメーション(転換)”(2017年3月31日)
中期経営計画の必達(2017年6月9日)
株主様との約束、東証一部への早期復帰(2017年7月7日)
社員意識調査(2017年8月10日,2018年4月6日)
「狼性」を持つこと(2017年12月27日)

第3章 戴社長の鴻海流「日本型リーダーシップ」
「強欲」日産ゴーン元会長と「清貧」シャープ戴社長
日産ゴーン元会長の功罪と高額報酬
日本型と西洋型「役員報酬制度」の違い
そもそも「リーダーシップ」とは何なのか?
戴社長とゴーン元会長の「リーダーシップ」の比較
戴社長の鴻海流「日本型リーダーシップ」が復活の原動力

第4章 株主総会で脱液晶を宣言
「もう液晶の会社ではない。ブランドの会社になる」
鴻海流「経費削減」と合理化精神
あっという間の「事業報告」と「議案説明」
社員寮暮らしの戴社長
株主と握手して回る戴社長
株主総会で8Kとスマホの新戦略商品を展示

第5章 そもそも何故シャープは鴻海の傘下になったのか?
世界の「亀山モデル」の誕生
亀山工場の強さの根源「すり合わせ」
堺工場の過大投資による凋落

第2部 郭董事長の「規範破壊経営」とシャープへの恋

第6章 郭董事長の「規範破壊経営」とシャープへの恋
郭董事長の「経営理念」が決める鴻海の「組織文化」
郭台銘氏の創業と「鴻海精密工業」への発展
中川威雄氏が語る郭台銘氏と鴻海発展過程
郭董事長のシャープへの片思い:「シャープは先生だ」
郭董事長が産業革新機構に勝ち、シャープ投資へ
郭董事長が「偶発債務」で見せた「資産精査」と「交渉術」
郭董事長が4年越しの恋を成就:シャープへの「投資」
郭董事長の「プライベート・ジェット」と「吉野家」

第3部 シャープ・鴻海連合の復活戦略と死活問題

第7章 シャープと東芝を分けた四つの経営判断から学ぶ
シャープの東芝PC事業買収の衝撃
プレッシャーから見たシャープと東芝の「企業統治不全」の違い
「忖度」する東芝と「忖度」しないシャープ
日本電産永守社長が挙げるM&A成功の三条件
永守三条件から見たシャープと東芝の「グローバル提携」の違い
シャープと東芝の「官民ファンド」との付き合い方
戴社長は「パソコン事業は黒字化できる」と自信
東芝メモリは「日米韓連合」で再建へ
新生東芝「豪華会見」とシャープ「本社総会」

第8章 「テレビ1000万台」達成の後遺症から「自力開拓」へ
鴻海頼みの「テレビ1000万台」達成
「テレビ1000万台」達成の後遺症
「量から質へ」中国市場を「自力開拓」へ
ブランド・工場買戻し欧州テレビ市場への再参入
海信集団からブランド買戻し北米テレビ市場への再参入へ
新興国・途上国展開への課題

第9章 シャープ・鴻海連合が直面する死活問題
増資中止で「有言実行」できない戴社長
外国人労働者3000人雇い止めで亀山工場危機
鴻海中国工場で「過重労働」から炎上
2010年頃の鴻海の連続自殺事件の衝撃
「iPhoneショック」で鴻海、10万人削減
「iPhoneショック」は何故起こったのか

第4部 大転換するアジアの「ものづくり」

第10章 鴻海・シャープ連合で三兎を追う「規範破壊経営」
米中で三兎を追う3兆円工場投資計画
「中国製造2025」で「製造強国」へ
「中国製造2025」で激突する米中「ハイテク戦争」
鴻海・シャープ連合が中国で世界最大液晶工場
トランプ大統領に食い込む米国液晶工場
郭董事長、ぶれる米戦略は「想定内」
鴻海が営業利益4割減、中国で巨額調達

鴻海・シャープ連合が中国「自前半導体」工場は可能か

11章 シャープが有機ELスマホで仕掛ける日韓戦争
国際競争が激化する液晶・有機ELとはなにか?
3年ぶり、シャープの「液晶・有機EL二兎戦略」
シャープ「液晶の次も液晶」撤回し、世界最軽量有機ELスマホ
ソニーが有機ELテレビへ「再参入」する理由
韓国LGが有機ELテレビで覇権を目指す
驚愕のLG「巻取り式有機ELテレビ」
サムスン「有機EL折り畳みスマホ」量産へ
JOLED「印刷方式有機EL」を世界初出荷
九大安達千波矢教授とKyulux:有機EL材料への挑戦
シャープ液晶のライバルJDIの瀬戸際

第12章 「すり合わせ国際経営」と「共創」
戴社長に説明した「すり合わせ国際経営」の意義
日本の強み:「組織的知識創造」と「すり合わせ」
「すり合わせ」の国際化:「すり合わせ国際経営」
鴻海・シャープ連合の「すり合わせ国際経営」
さらに「国際垂直統合」から「共創」へ
佐々木正シャープ元副社長から「共創」の指南
鴻海とシャープから「共創」の萌芽
鴻海傘下になり生まれるベンチャー精神
「グローバル人材」を育成するAPU
日本とアジアの「共創」バリュー・チェーンへ

前書きなど

シャープの戴正呉(たいせいご)社長との面談から、本書は生まれた。
 シャープの復活劇から学ぶ「国際経営」と「リーダーシップ」の入門書である。
 周知の通りシャープは、債務超過に陥り、台湾の鴻海精密工業の傘下となった。
 液晶の勝ち組であったシャープが、巨大構想により液晶の堺工場を建設したことをきっかけとして一気に債務超過にまで至ってしまったのだ。
 日本の大手電機メーカーが、外資系企業に買収されるのはこれが初めてのことであった。
 それから2年の時を経て、鴻海の傘下でシャープは驚異の復活を遂げた。
 なぜ鴻海の傘下でシャープは復活することができたのか――。
 これが、この本の主題である。
 
 初対面の人間と一対一では、まず話をしない戴正呉社と直接会って話ができたのは千載一隅の機会であったと言えよう。
 戴社長からの依頼により、私の「すり合わせ国際経営」と「共創」の考え方について説明する機会を得たのだ。
 約束当日、シャープ本社に赴いた私の話にじっと耳を傾けた後、戴社長は次のように言われた。
「2016年8月27日に正式に社長に就任しました。鴻海からシャープの組織に入るのは私一人としました」
「社長に正式就任する前でしたが、回復には信を持っていました。前の経営者がなぜ黒字にできなかったのか? それは今でもわかりません」
  自信に満ち溢れた言葉である。
 社長就任後の戴氏の報酬は、最初の株主総会までゼロであり、日本での住まいもシャープの社員寮であったという。そんな戴社長の人柄を一言で表すなら「清貧」であり、その根幹にあるのは鴻海流「日本型リーダーシップ」と言える。
 海外から日本企業にきて、コストカットで会社を立て直すという点から見れば、戴社長と日産のカルロス・ゴーン氏は似ている。しかし、ゴーン氏の破格の高額報酬を得る「西洋型リーダーシップ」と戴氏のリーダーシップはまったく異なる様相を呈している。
 
『清貧・シャープ載社長 対 強欲・日産ゴーン元会長』同じ海外からの「日本企業再建請負人」であっても人柄は正反対と言っていいだろう。
 面談を通して戴社長の人柄に触れたことが、私にこの本を書く気にさせた。いや、戴社長の人柄とリーダーシップについて技術経営の視点から書けるのは自分しかない。むしろ私に課せられた義務であるとさえ思った。
 また鴻海の代表取締役に当たる郭台銘董事長(かく たいめい とうじちょう)をよく知る二人の関係者に面談し、鴻海の発展過程を聞いた。この面談を基に、私は、郭董事長の経営の特長を、「規範破壊経営」という呼び方で言い表した。

本書の主題である、「シャープは、なぜ鴻海の傘下で復活できたのか?」の答えと、そしてそこから得られるヒントを先取りして予告しておく。
 一つ目の復活を可能にした決定的要因は、先にも述べた、戴社長の鴻海流「日本型リーダーシップ」にあると確信した。郭董事長の「規範破壊経営」もまた、シャープへの投資に踏み切った理由を考えるうえで重要な経営理念と言える。
 前述の通り、シャープは、日本の電機メーカーで初めて外資系企業の傘下に入った企業である。つまり、文化の異なる経営者と従業員という関係を通して、より一般的な「リーダーシップ」の在り方、経営学的に言えば「組織行動論」のヒントが得られるだろう。
二つ目の決定的要因は、これまでに私が主張してきた、「すり合わせ国際経営」である。これはシャープと鴻海の補完関係を活用した「国際垂直分業」と、両社の強みから新しい価値を創造する「共創」である。これはシャープ元副社長でソフトバンクの孫正義氏を支援した佐々木正氏が提唱された「共創」の理念と一致する。
 現在「米中ハイテク戦争」が進行している最中において、わが国の企業がアジアの企業とどう付き合うか、つまりアジアにおける「ものづくり国際経営」へのヒントが得られるものと考えている。
 また、本書はシャープと相前後して経営危機に陥った東芝。シャープは東芝からPC事業を買収した。売った側と買った側――両者の違いは一体どこから生じたのか。
『シャープの経営戦略 対 東芝の経営戦略』
 この経営戦略の違いを、「企業統治」、「グローバル経営」、「官民ファンド」、「経費削減」の視点から掘り下げる。
日本のものづくり復活を主題にする理由。それは他でもない私が長く日本のものづくりに関
わってきたからだ。
 ここで筆者とシャープとの関わりについて簡単に紹介させていただく。私は1971年、神戸大学大学院を卒業すると同時にシャープに入社、技術者として33年間勤務した。太陽電池の研究開発に約18年間、液晶の研究開発と生産技術に約12年間携わった。
この間、米国のシャープ・アメリカ研究所の研究部長などを約3年間務め、国際チームの研究管理とシリコンバレー等での「目利き」と技術移転を行った。日本に帰国後は液晶研究所の技師長を務めた。
 2004年からシャープの技術者から大学の研究者へと転身。立命館アジア太平洋大学の教授として「技術経営」の研究と教育を続けてきた。2017年4月からは、同校の名誉教授・客員教授として、日本のものづくりの研究と教育を続けてきている。
 著書に関して述べれば、2015年に『シャープ「液晶敗戦」の教訓』(実務教育出版)、2016年に『シャープ「企業敗戦」の深層』(イースト・プレス)を出版。その両方の著書の中で、シャープと鴻海の提携が補完関係にあり良い組み合わせであることを指摘。2015年に提案した「すり合わせ国際経営」モデルが、手前味噌ながらシャープ復活に必要な二つ目の決定的要因となるであろうことを予言していたことになる。
 さて、最新の著書となる本書の大きな特長は、筆者が次の三者の視点から、一次情報を分析したことである。
シャープで液晶の研究開発に係わった「当事者」として
 大学で「技術経営」を専門とする経営学者である「分析者」として
 そして、戴社長等多くの人と面談し一次情報を得る「インタビュアー」としての視点である。
 幸いにも戴社長を始め、数多くのシャープ関係者から貴重な証言や情報を得ることができたことに感謝したい。また、米国、韓国、中国、日本の展示会・講演会・学会にも参加したことで、多くの一次情報を入手できた。これらを「当事者」としての知識・経験を踏まえ、「分析者」として経営学の視点で分析したのが本書である。

著者プロフィール

中田行彦  (ナカタユキヒコ)  (著/文

1946年、京都生まれ。1971年神戸大学大学院卒業後、シャープ株式会社に入社。以降、33年間勤務。液晶の研究開発に約12年、太陽電池の研究開発に約18年。その間、3年米国のシャープアメリカ研究所等米国勤務。
2004年から立命館アジア太平洋大学の教授として「技術経営」を教育・研究。
2017年4月から立命館アジア太平洋大学 名誉教授・客員教授。京都在住。
2009年10月から2010年3月まで、米国スタンフォード大学客員教授。
2015年7月から2018年6月まで、日本MOT学会企画委員長。
工学博士(大阪大学)、博士(技術経営:立命館大学)。

上記内容は本書刊行時のものです。