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子どもが守られる社会に 後藤啓二(著/文) - エピック
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子どもが守られる社会に (コドモガマモラレルシャカイニ)

社会一般
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発行:エピック
A5判
縦210mm 横148mm 厚さ13mm
重さ 330g
200ページ
定価 1,500円+税
ISBN
978-4-89985-202-5   COPY
ISBN 13
9784899852025   COPY
ISBN 10h
4-89985-202-9   COPY
ISBN 10
4899852029   COPY
出版者記号
89985   COPY
Cコード
C0036  
0:一般 0:単行本 36:社会
出版社在庫情報
不明
初版年月日
2019年2月
書店発売日
登録日
2019年1月28日
最終更新日
2019年1月28日
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紹介

毎日のように、子どもが家庭では親に殺され、傷つけられ、学校ではいじめや体罰、事故に遭い、通学路やインターネット上では性犯罪や凶悪犯罪の被害者になるという事件、事故が起こっています。1年間に子どもは何人死んでいるでしょうか。病気は除きます。「不慮の事故」という死因がありますが、15歳未満の子どもは291人とされています(2016年)。子どもは、家庭、学校、地域社会、ネット上で様々な危険にさらされ、被害に遭っているのです。
家庭が楽しければ子どもは家出や深夜徘徊するわけはありません。家にいると虐待されるから、あるいは離婚した父親が女を家に連れ込み、母親が男を家に連れ込み、到底家にいることが耐えられないから家出や深夜徘徊をするのです。本来は助けられるべき被害者なのですが、家出や深夜徘徊をする子どもたちは問題児などといわれ、警察は保護すると真の事情も調べず、虐待される家に戻してしまいます。
警察と児童相談所が情報共有し連携して対応していれば、警察官が深夜徘徊や家出をした少年を保護した際に、虐待を受けている子どもだと分かり、そのまま家に戻すのではなく、児童相談所と一緒に家庭訪問し、親に指導することができました。そして、その後も継続的に子どもとかかわることにより、虐待の抑止が図られ、子どもが家出や深夜徘徊をしなくなり、犯罪に巻き込まれることも防げたと思います。
子どもは生活する様々な場で複合的に、多重的に被害に遭うことが多いことから、子どもを保護する機関である警察、学校、児童相談所等は、自らが担当する狭い範囲でのみ子どもを見ていては子どもを助けることはできません。家庭、学校、地域、あるいはネット上の子どもの置かれている状況をトータルで見る必要があるのですが、わが国ではそれが徹底的に欠けています。これらの機関は、強固な縦割り意識のままで、虐待やいじめ、不登校の情報の共有も十分にはせず、連携しての活動もせず、案件を抱え込むだけで、何ら有効な対策を講じません。特に児童相談所は閉鎖的な体質が顕著で、私どもが児童相談所と警察の情報共有と連携しての活動を求める要望を4年以上にわたり続けても、東京都等多くの児童相談所はかたくなに拒否し、いつまでも案件を抱え込み、救えるはずの子どもの命を救えない事件を繰り返しています。
救えるはずの子どもの命が守られる社会に、ベストを尽くす社会にする。これが大人の最大の責務です。しかし、わが国ではベストを尽くすどころか、特に子ども虐待事案については、児童相談所の閉鎖的体質が改善されず、いつまでも再発防止策がとられていません。学校でも生徒間のいじめや暴力事案、不登校事案などについて、関係機関と連携せず悪化させるという同様の問題が見られます。スポーツ事故の再発防止の取組みも不十分です。子どもを襲う小児性虐待者や児童ポルノ対策も不十分です。このような対応を抜本的に改めない限り、いつまでも救えるはずの子どもの命を救うことができないのです。

目次

目次

はじめに 3
第1章 家庭で虐待に遭う
1 子ども虐待の現状と制度・運用上の問題点 12
情報共有しないため救えるはずの子どもを救えない 15
けががあっても子どもが訴えても親が否定すれば「虐待でない」 20
「虐待でない」「緊急性は低い」と判断した案件で虐待死が多発 24
面会拒否の事案すら警察に連絡せず、子どもを見殺しにする 29
【コラム】児童相談所に必要なのは「専門性」でなく一般人並みの子どもを守る思い・ 31
指導の効果がないことが明らかでも案件を抱え込み、見殺しにする 33
警察と連携せず虐待死に至る事件がどれだけ続いても連携しない 33
政府も再発防止に効果のない「緊急対策」を策定 35
「子どもは警察に助けられなくていい」とでもいうのか 39
【コラム】子どもにとって悪夢のミラクルワード 41
情報共有すれば警察から新たな情報を得られるのにそれを拒否 42
全件共有により子どもを守る取組みが格段にできるようになる 44
児童相談所への一極集中 そして何もできない 45
【コラム】「介入」と「支援」の双方を担わされている問題の改善 47
「警察との全件共有は親との信頼関係を損ねる」は全く根拠がない 48
これを機会に虐待をやめようとする親も多いはず 50
情報共有で子どもを救えるメリットを無にするな 51
【コラム】「親との信頼関係」の強調は子どもを危険にさらす 52
暴力・いじめでも学校と警察の情報共有が必要 54
不登校事案でも凄惨な虐待・監禁が行われていることも少なくない 55
所在不明・未就学・未受診児の放置 56
住民票を残して転居したら早速分からなくなる、全国データベースの整備が必要 58
危険な状態にありながら一時保護をしない、一時保護しながら危険な家庭に戻してしまう・ 61
法律で一時保護及びその解除の基準の策定が必要 63
他の専門職種を排除する閉鎖的体質が根本の原因 64
子どもを守るためでなく親のための「福祉的対応」 66
2 子ども虐待死ゼロを目指す法改正を求める活動について 69
求めている法改正案の概要 71
取組み状況とこれまでの成果 74
都道府県・政令指定市への要望活動 75
【コラム】役人の側に立つか、子どもの側に立つか政治家の見識の問題 78
【コラム】他国の取組み 80
子ども虐待の経済的・社会的損失 81
「Working Together 関係機関が連携してがんばろう」ガイドライン 82
効果的で業務負担もない共通データベースの整備 88
全国データベースの整備へ 91
私どもの求める法改正の効果とその他の課題 91

第2章 学校で被害に遭う
1 学校で遭う被害の現状 98
多発するいじめや暴力行為から救われない 98
虐待に気づいても通報しない、通報してもほったらかし 100
教師による体罰・わいせつ行為に遭う 102
柔道や水泳、組体操等の授業・課外活動中に事故に遭う 103
学校や教師の不適切極まりない言動によりさらに被害が深刻に 104
2 原因と背景 106
児童相談所と共通する学校の「他機関排除」体質 106
被害児童よりも加害児童の側に立つ 109
いじめ・体罰を容認、軽視する社会風潮、裁判所の判断 111
【コラム】いじめられている子どもたちの心理―専門家の方の著作から 112
3 対策 114
警察を含めた関係機関との多機関連携 114
いじめ・暴力行為を「なかったこと」にしない 115
体罰教師に対する厳格な対応 116
エビデンスに基づく児童生徒の死傷事故の再発防止 118

第3章 家庭で、学校で、地域で、SNSで性虐待・性犯罪、児童ポルノ被害に遭う
1 現状 122
(1)家庭における性虐待・性犯罪 122
(2)学校、保育所、学童保育施設、シッター等による性犯罪 123
(3)通学路等での性犯罪 126
(4)子どもに対する商業的・性的搾取事案 128
「着エロ」といわれる幼い子どもの半裸の写真集等の販売 129
最近目立つJKビジネスによる子どもの性的搾取 129
(5)児童ポルノ被害事案 130
【コラム】児童ポルノはおぞましい性的虐待で犯罪そのもの 132
【コラム】児童ポルノの与えるすさまじい害悪 133
(6)SNSを利用した子どもの被害事案 135
2 原因と背景 136
(1)小児性虐待者の急増―インターネットによる児童ポルノの蔓延 136
(2)子どもを守るために有効な法整備が未整備 137
(3)子どもに対する性犯罪等を犯した者に対する甘い判決 138
(4)子どもを性の対象とすることを容認する社会風潮 139
【コラム】規制とも言えないほどの東京都条例をめぐり漫画家、弁護士会等が反対 140
【コラム】世界をいらだたせる日本の取組み 142
3 対策 143
(1)性的虐待を受けている子どもの早期発見の仕組みの整備 143
周りが気づき、動く 143
被害児童自身が助けを求めることができるように 144
(2)学校、保育所、学童保育施設、学校ボランティア、シッター等から小児性虐待者の排除・ 145
(3)通学路等での性犯罪被害防止のための取組み 147
(4)子どもの商業的・性的搾取を法律で禁止する 149
着エロを法律で禁止する 149
JKビジネスを法律で禁止する 152
(5)抜け穴だらけの児童ポルノ対策 153
写真・映像と同程度に写実的なCG、漫画も規制の対象に 153
低年齢の児童の保護の拡大 155
年齢確認できないこどもらしくみえるポルノの規制 155
(6)SNSの利用から子どもを守る対策 156
(7)常習的性犯罪者対策 157

第4章 子どもが守られる社会とするための総合的な施策の提言
1 各機関の閉鎖的体質を改め子どもを守るため連携してベストを尽くす 162
2 子どもを守るための法律を積極的に整備する 163
3 政治家、役人に子どもを守る施策を強く求める 164
子どもを守ろうとしない政治家を選ばない 164
怠慢な役人の責任追及の制度を整備する 165
4 子どもに冷たく、大人に甘い風潮、暴力や性の対象とする社会風潮を変える 167
(1)児童相談所に際立つ「子どもにつ冷たく、大人(親)に甘い」姿勢 169
(2)なぜ裁判所はそこまで子どもよりも大人の事情に配慮するのか 173
(3)根強い弱者より強者を優先する思想・法制度、声をあげれない子どもの立場を代弁しない ・175
(4)「大人の人権」を名目に児童ポルノ規制に反対で一致する一部政党・弁護士会と企業 ・177
5 社会風潮を変えるため子ども最優先の原則の樹立、考え方の確立 179
子どもの安全を優先することを国、自治体、企業等の原則とする 180

さいごに 提言―子ども安全基本法の制定を
1 子ども安全基本法の概要 183
2 子ども安全基本計画について 190
子ども安全基本計画に記載する施策 190
子ども安全基本計画の定め方 194
3 期待される効果 194
期待される企業による支援 194
法律の制定・解釈、対立する利益の調整に当たっては子どもの利益を優先させる 195
4 憲法に「子どもの虐待防止」を入れる 197

著者プロフィール

後藤啓二  (ゴトウ ケイジ)  (著/文

弁護士。NPO法人シンクキッズ―子ども虐待・性犯罪をなくす会代表理事。
昭和57年3月東京大学法学部卒業後、同年4月警察庁入庁。内閣法制局参事官補佐、警察庁生活安全局理事官、大阪府警察生活安全部長、愛知県警務部長、内閣参事官(安全保障・危機管理担当)等を歴任し、平成17年警察庁退職。
現在、後藤コンプライアンス法律事務所代表。国立大学法人東京医科歯科大学特命副学長(法務・コンプライアンス・地域貢献担当)、明石市、荒川区の児童相談所設立アドバイザーなどを務める。
著書として、「子ども虐待死ゼロを目指す法改正の実現に向けて」(エピック社)、「法律家が書いた子どもを虐待から守る本」(中央経済社)、「なぜ被害者より加害者を助けるのか」(産経出版社)、「日本の治安」(新潮新書)、「企業コンプライアンス」(文春新書)、「リスク要因からみた企業不祥事対応の実務」(中央経済社)、「企業・自治体・警察関係者のための暴力団排除条例入門」(東洋経済新報社)、「実践・病医院コンプライアンス」(中央経済社)等多数。

上記内容は本書刊行時のものです。