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琉球怪談作家、マジムン・パラダイスを行く
- 初版年月日
- 2016年8月
- 書店発売日
- 2016年8月4日
- 登録日
- 2016年7月27日
- 最終更新日
- 2016年8月3日
紹介
沖縄は、怖い話、妖怪のパラダイスだ!
沖縄の怪談実話、現代の百物語である『琉球怪談』シリーズでおなじみの著者が、怪談取材の裏話、書けなかった自らの体験談、マジムン伝承を検証した論考などをまとめた実話怪談風エッセイ。
「琉球怪談」それは〈過去から現在に渡って綿々と続く人々と神々とマジムンの交わりを見ていくことに他ならない〉。
目次
はじめに 私が琉球怪談作家になったわけ
第一部 〝琉球怪談〟の裏ばなし
バタフライはフリー
私が録音機材を使わない理由
怪談編集者に、黒魔術の原稿を送ってみた
ハナモーの岬でハナモーと叫ぶ
赤を嫌うギーザ
家に幽霊が出た話
ユタのKさんと一緒に、日本兵の幽霊と対峙する
ゴースト・ソルジャー・イン・ザ・クローゼット
取材して欲しくない
石を持ってきて欲しくない
ユタしく、ユタしく
琉球ユタ免状を授けます
「So It Goes.」と安須森の上で考えてみる
第二部 マジムン・パラダイス考
◆マジムン・パラダイスへ繰り出そう 那覇「わかさ妖怪さんぽ」
沖縄の公民館の奇妙な仕事/マジムン・パラダイスなのです!/潮渡橋の中心で「仲西ヘーイ!」と叫ぶ/ミートゥジーの間をぬって/ユーチヌサチの残念な物語/唐守森とマーロン・ブランド/辻の開祖/龍界寺の坊主、神になる
◆怪獣「ガーナームイ」と人柱「ナナイロムーティー」 漫湖界隈
怪獣か? クジラか? ガーナームイの謎/怪獣を封じるシーサー、もしくはシーシ/七色の髪飾りの女を探したら/怒れる神、人柱の子孫たち
◆マジカル「耳グスグス!」ツアー 若狭、奥武山、そして首里へ
耳切坊主の子守唄/護道院はどこにあったのか? /なぜ「耳グスグス」したのか?/大村御殿ぬ角なかい/ハブとでーじ仲の良かった心海上人/ 公民館にやってきたオバアから、教えてもらったこと
◆ウニ! ウニ! ホーハイ! 鬼がいっぱい! 首里、大里、八重山
大里鬼にまつわる、大変卑猥な話/ホーハイ、ホーハイ!/ハダカヌユー それはキング・オブ・琉球妖怪/悪露が滴り落ちてウンになって/サチーダウニ/
◆ムン
前書きなど
はじめに 私が琉球怪談作家になったわけ 抜粋
私はもともと取材して記事を書くカメラマンの仕事をしており、最初に『琉球怪談 闇と癒しの百物語』という本をボーダーインクで発表したのは、二〇一一年のことである。このことについてはのちに詳しく書くので、ここでは「私が怪談を書く理由」について少し触れてみたいと思う。
沖縄は日本のなかでも、特に異質な文化のある場所である。伝統的なシャーマンであるユタが、ショッピングセンターで主婦に混じってピーマンやスイカを買っており、そのショッピングセンターがもしお墓を壊して建てられた場所ならば、その主婦が死者にかかられておかしくなるという事態が普通に発生する。
もしその場でユタがピーマンを買っていたとすると、野菜を放り出してまで彼女らが駆けつけて「あんた、大丈夫ね、かかられたね」といいながら、その場でお祓いをはじめる。ところがそれを見るほかの買い物客たちは「ああ、かかられたんだね。大変だね」で、その場が丸く収まる世界なのである。
しかし沖縄の人々は、日々の生活のなかで、神様にかかられた話や、マジムン(妖怪)に襲われた話をし、それらはとりたてて本にまとめられなくても、当たり前の事であった。
なので、私が『琉球怪談』を書いたときも、話のネタはすさまじい勢いで集まってきた。何冊か読んでいただいた読者の方はすでに承知かもしれないが、沖縄の怪談は本土の怪談と比べても、異質である。都市伝説系の話は少なくて、沖縄の伝承やユタ、ウタキ、そして沖縄戦といったものと結びついている話が多い。おそらくそれらをまとめて書き記す者がいなかっただけなのだ。私は偶然その場所にいて、それらを仕事として書き記すことができた。ただそれだけのことに過ぎない。
この本の第一部「〝琉球怪談〟の裏ばなし」は、そんな取材する過程で起きたことをまとめてみた。中には私がかかられた話も載っている。化け物の出る家にも住んだし、聖なる山に登って消えてしまうカラスも見た。ユタさんと一緒に旧日本兵の幽霊をお祓いにも行った。本土ではすでに絶えてしまった自然の細部に宿る神々や、マジムンや、ユーリー(幽霊)などが、このシマにはまだまだ沢山いる。第二部「マジムン・パラダイス考」では、日頃から特に気になっていたマジムンの伝承を具体的に考察、妄想してみた。怪談イラストでお世話になっているミキ三木シズ静画伯が若狭公民館の「広報わかさ」掲載していた四コママンガ「ミミチリボーイくん」も、おもしろいので特別に一部収録させてもらった。
版元から一言
琉球怪談シリーズ、今回はボーダー新書で書き下ろしエッセイです!
上記内容は本書刊行時のものです。