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地層と化石が語る琉球列島三億年史 神谷厚昭(著) - ボーダーインク
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地層と化石が語る琉球列島三億年史

新書判
200ページ
並製
定価 1,000円+税
ISBN
978-4-89982-277-6
Cコード
C0245
一般 新書 生物学
出版社在庫情報
不明
初版年月日
2015年4月
書店発売日
登録日
2015年4月7日
最終更新日
2015年4月7日
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紹介

琉球列島の地質学のもっとも最適な入門書、待望の新書化。最新の研究成果を加えています。三億年前の深い海の底から大陸の時代、半島の時代をへて、サンゴ礁の島じまへ。琉球列島の生い立ちがわかる。

目次

はじめに― 文化財の石たちとの語らい 
     ■沖縄の地質層序表 琉球列島の大地形
第一章 青い海・白い砂浜 ーサンゴ礁の島じま    
■空から見た島じまのすがた  ■砂浜の砂はなぜ白い?■サンゴ礁の海がエメラルドグリーンに見えるわけ ■サンゴ礁ができるには ■人びとの暮らしとサンゴ礁 ■津波から人びとを救ったサンゴ礁■サンゴ礁は海の中の熱帯雨林●コラム〈最近の研究からわかってきた沖縄付近の大津波〉
第二章 サンゴ礁の海から陸へ   
■むかしの渚の証言者 ビーチロック ■離水ノッチと離水サンゴ礁 ■陸に上がった昔のサンゴ礁〈琉球石灰岩の種類〉■港川人発見!■港川人が見た島じま●コラム 〈ハイドロアイソスタシーの海水準変化におよぼす効果〉 ●コラム 〈断層と褶曲〉 
第三章 人びとの暮らしと石ー琉球石灰岩について   
■赤瓦と石垣の風景 ■暮らしの水 .地下水■地下ダム ■鍾乳洞■グスクと琉球石灰岩  ■先史時代の遺跡と琉球石灰岩■高島と低島ー  観光地の景観
第四章 赤土は語る   
■赤土に眠る動物たちー動物化石は語る ■花粉化石は語る ■赤土の謎ーどこからやってきたか ■マンガンノジュールのつぶやき■琉球石灰岩にできた不思議な穴■ハブのいる島いない島 
第五章 琉球石灰岩とウルマ変動   
■岡波岩のクジラ化石■大陸の半島となった南琉球・大きな島となった中琉球■琉球サンゴ海の誕生  ■琉球石灰岩の種類■中城湾沿いは地すべりが多い■陥没してできた中城湾■琉球サンゴ海の隆起ーウルマ変動  ■海底の琉球石灰岩
第六章 島尻海の時代    
■照間海岸の化石たち■沖縄に高い山があった話ースギ化石と有孔虫化石の謎■クチャの正体 ■ニービは語る■浅い海からはじまった「島尻海」■与那原層の凝灰岩が語るもの■「島尻海」に起こった海底地すべり ■動物たちがやってきた■ハブの話 
第七章 沖縄の火山活動    
■粟国島への船旅■火山岩がつくる黒い海岸■白亜の崖ー白色凝灰岩がつくる断崖■むかし粟国島には湖があった■奥武島の畳石■立神岩■緑色の火山岩ーグリーンタフ ■久米島の金鉱■ガーネットがある渡名喜島 ■沖縄で火山が活動した時代  ■現在の火山活動ー硫黄鳥島
第八章 沖縄の石炭時代     
■地下の鳴動ー於茂登花こう岩の形成■島じまの移動と回転■南に動いた琉球列島 139 ■ジャングルの島、西表島をつくる地層ー八重山層 142 ■沖縄に石炭ができた時代 ■砂岩の中の鉱物は語る
第九章 琉球列島の「動」と「静」    
■高島をつくる地層ー嘉陽層■深い海の底だった沖縄島ー嘉陽層が語ること■プレートの動きの記録ー嘉陽層■ヌンムリテス(貨幣石)の海ーピラミッドをつくる石■古いグリーンタフー野底層  ●コラム 〈付加体について〉   
第十章 大東島の大移動     
■無人島だった大東諸島■大東島に深い穴を掘るー大東島の生い立ちを求めて ■大東島の地形ー隆起環礁 ■プレートの速さを測る ■大東諸島の生い立ちー赤道近くで生まれた話 
第十一章 恐竜時代の沖縄ープレートがつくった島の土台ー   
■恐竜発見!■恐竜天国の大陸  ■無酸素状態の海ー名護層■海底の火山活動があった■ゴチャゴチャになった地層ー本部石灰岩・与那嶺層■伊江島タッチューの不思議  ■石垣島の古い岩石 ■ヒマラヤに続いていた今帰仁層の海■今帰仁城跡の石垣■熱帯カルストをつくる岩石■最古の岩石を求めて■最古の岩石を求めて■三億年の歴史を駆け抜ける
   付録・図解 琉球列島の生い立ち 

前書きなど

はじめに ―文化財の石たちとの語らい


 
 赤い屋根瓦と白い石垣、その上の青い空、龍潭から見た首里城は美しい。以前、私は当時、龍潭の向かいにあった沖縄県立博物館で勤めていました。そして、毎日首里城を見上げ、その美しさに見とれていたわけです。ときどき昼休みには龍潭や首里城のまわりを散策しました。そのころです、首里の町には「石でできた文化財」が多いのにあらためて気が付いたのは。首里城の石垣はもちろん、園比屋武御嶽、円覚寺の放生橋、玉陵、金城町の石畳など、数え上げたら切りがありません。また、当時の博物館の庭にも石敢當、中城御殿の石灯籠、円覚寺の礎石などが、そして館内には安国山樹花木記碑、石棺、石臼などいろいろありました(現在は那覇市おもろまちの博物館・美術館にあります)。
 ある日、ふとこれらの石の古里を調べようと思い立ちました。調べてみると、石の古里は大きく三つの地域に分かれました。一つは私たちの住んでいる沖縄県の島じまで見られる石、二つ目は鹿児島県から持ち込まれた石、そして三つ目は遠く中国福建省の石であることがわかりました。中国の石は緑色がかっているのが特徴で、「」と呼ばれています。鹿児島から持ち込まれた石は火山に関係した石で、溶結凝灰岩と安山岩と呼ばれる黒っぽい石でした。沖縄県産の石は、琉球石灰岩と呼ばれる石がもっとも多く、次に多いのは方言で「ニービヌフニ」といわれる小禄砂岩でした。琉球石灰岩は沖縄県の代表的な石材です。これについては本文で詳しく紹介します。ここではよそから来た青石や溶結凝灰岩について述べてみます。
 青石製の文化財がいつ制作されたか調べてみると、安国山樹花木記碑が一四二七年、円覚寺の礎石一四九三年、国王頌徳碑一四九八年、円覚寺放生橋高欄一四九九年、玉陵の石獅子・石碑・扉一五○一年、首里城正殿基壇の高欄や龍柱一五○九年、守礼門礎石が一五二七年となっていました。一部安国山樹花木記碑のように尚巴志時代のものもありますが、その多く 尚真王時代の製作物です。尚真王は歴史上、琉球王国を確立した王として知られています。つまり、中国産の青石は、王の権力の象徴だったわけです。
 それに対し、溶結凝灰岩や安山岩製の文化財は、天界寺仁王像が一六四四年ごろ、弁財天堂の手水鉢が一八五九年ごろ、中城御殿の石灯籠が一八七○年となっています。つまり、かなり新しい時代の制作物ばかりです。このような違いはどうして起こったのでしょうか。これを解く鍵はどうも歴史上の事件の中にあるようです。
 一六○九年、慶長の役で琉球王国は薩摩に征服され属国になりました。鹿児島産の溶結凝灰岩や安山岩はそれを境に沖縄に入ってきたようです。弁財天堂の建立は一五○二年の尚真王時代ですが、慶長の役で一度焼失します。その後に持ち込まれたのが手水鉢ということになります。これと似たような例として、一四世紀に築城されたといわれる糸数城内に、一八二○年制作の石灯籠が設置されているというものがあります。また、今帰仁城跡にも凝灰岩製の香炉がありました。
 話は変わりますが、以前浦添教育委員会から依頼されて「浦添ようどれ」の石棺の石質を調べたことがあります。石棺は確かに中国産の石で、黒色の玄武岩でした。
 浦添ようどれは尚寧王時代の一六二○年に修復されました。さきに述べたように、中国産の石棺は時の国力を示しますが、尚寧王の時代は薩摩の属国になっていたとはいえ、まだいくらか国力を維持していたのでしょう。あるいは玄武岩製の石棺だけは尚真王時代の作なのかもしれません。
 こうして歴史時代の石造文化財を見ていくと、時代の移り変わりを石が語ってくれるように感じます。石が語る言葉「石語」をたくさん理解すれば、もっと多くの歴史を知ることができるかも知れません。さらに、文化財の石だけでなく、野山にある自然の石にも触れ、彼らが話す「石語」に耳を傾ければ、琉球列島に人びとが住み始めるよりもずっと以前の島の歴史(これを地史といいます)も紐解くことができるはずです。さあ、これから地層や化石が語る「琉球の島じまの地史」をみる旅へ出発しましょう。
 人間の歴史では新しい時代のものほど多くのことが残っています。「島の地史」も同じです。ですから、この「島の地史」をみる旅も、私たち人間の時代にもっとも近いところからはじめます。そして、しだいに古い時代へとさかのぼり、最後は島のもっとも古い時代の三億年前の沖縄へと旅をして行きたいと思います。つれづれなるままにお楽しみください。

著者プロフィール

神谷厚昭  (カミヤコウシヨウ)  (

沖縄県那覇市首里生まれ。
1967年広島大学大学院理学研究科地質鉱物学専攻修士課程修了
2003年県立真和志高校を最後に定年退職。現在、白保竿根田原洞穴遺跡調査指導委員会委員、新沖縄県史編集専門委員会委員
著書に『琉球列島ものがたり』(ボーダーインク)、『琉球列島の生いたち』、『島の生いたちをさぐる』、共著として『沖縄の自然―その生いたちを訪ねて―』『沖縄の島々をめぐって』、『おきなわの石ころと化石』。

上記内容は本書刊行時のものです。