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雑誌とその時代
沖縄の声 戦前・戦中期編
- 初版年月日
- 2015年4月
- 書店発売日
- 2015年5月1日
- 登録日
- 2015年6月2日
- 最終更新日
- 2015年6月2日
紹介
戦前及び戦中期に発刊された沖縄の雑誌の執筆者や内容、その社会的背景に迫る。
「南洋情報」が必要されていた時代、そして『月刊文化沖縄』が発刊された昭和15年には「新刊行が一切不許可」になり、本雑誌の発刊は「滑り込みセーフ的な事態」だったという。創刊号の表紙を飾った金城安太郎の美人画も内容もそれ以降は変わっていくこととなる。雑誌を通して見える時代と文学活動。
「短歌雑誌とその時代」では1926年~1945年の約20年の間、本土の短歌雑誌『アララギ』『水瓶』『心の花』『日本文学』『短歌研究』などに登場した沖縄の歌人と歌を丹念に見て行くことにより沖縄の昭和歌壇史が見えてくる。
目次
Ⅰ『南洋情報』とその時代
1『南洋情報ダバオ特輯号』
2『南洋情報マニラ特輯号』
3『台湾・英領ボルネオ・比律賓特輯号』
4『南洋情報南洋群島特輯号』
Ⅱ『月刊文化沖縄』とその時代
1『月刊文化沖縄』の創刊
2 文芸運動の推進
3「新体制」の推進
4 大政翼賛運動の推進
5 芸能分野の改善
6 啓蒙運動の展開
7 編集発行兼印刷人の交代
8 愛国百人一首の掲載
9 国民的自覚の強調
10 生活の改善
11 「琉球芸術展望号」と「生活の科学化号」
12 文化の動向
Ⅲ 短歌雑誌とその時代
沖縄出身歌人の二〇年(一九二六年~一九四五年)
はじめに
1 『アララギ』の歌人たち
2 『水瓶』の歌人たち
3 『心の花』の歌人たち
4 『日本文学』の歌人たち
5 『短歌研究』の歌人たち
6 短歌雑誌と沖縄の歌人たち
おわりに
あとがき
前書きなど
あとがき
本書に収録した三編の初出は次の通りである。
「『南洋情報』とその時代」『日本東洋文化論集』第八号 二〇〇二年三月
「短歌雑誌とその時代――沖縄出身歌人の20年(一九二六年~一九四五年)――」(初出題「昭和戦前・戦中期(一九二六年~一九四五年)の短歌――沖縄出身歌人の20年」平成9年~11年度文部省科学研究費補助金『近代沖縄文学の比較ジャンル論に関する基礎的研究』研究成果報告書 二〇〇〇年三月)
「『月刊文化沖縄』とその時代」『日本東洋文化論集』第七号 二〇〇一年三月
二〇〇〇年三月「短歌雑誌とその時代――沖縄出身歌人の20年(一九二六年~一九四五年)――」を発表した前月の二月には、「『八重山文化』とその時代」(『沖縄八重山の研究』所収 相模書房)を発表していて、二〇〇〇年前後の私は、雑誌に関心が向いていたことがよくわかる。
沖縄の表現者たちの作品を探すために、「短歌雑誌とその時代――沖縄出身歌人の20年(一九二六年~一九四五年)――」に見られるように、雑誌を片っ端からめくっていくといったことが一段落して、一つの雑誌をまとめて扱ってみたいという気持ちが出てきていたのである。
今回、一つの雑誌に焦点を絞って書き継いできたものを「雑誌とその時代」として一冊にまとめておく必要があると思ったのは、『月刊文化沖縄』について、びっくりした、というより嬉しかったといったほうがいい言葉を戴いたことにある。
私は、「『月刊文化沖縄』とその時代」のなかで、次のように書いていた。
(1)『月刊文化沖縄』の第三年目、第三巻は、第一号から第五号まで欠。現在見ることの出来るのは、八月号第三巻第六号からである。八月号が第六号であることから、雑誌が二度休刊したことはわかる。それがどの月であったかについての判別は難しいが、少なくとも七月でなかったことだけは明らかである。
(2)昭和十八年第四巻第一号は、所在不明。
そのように書いていたことも忘れて久しかったのだが、久し振りにあった方に、それらの巻・号が所在することを教えられたのである。
さっそく教えられた通りそれらの巻・号のあることを確認したあとで、私は、何故、(1)(2)に見られる通り、それらを見落としてしまっていたのか、考えざるをえなかった。
長い間、雑誌と取り組んできてわかったことの一つに、しっかりした発行所の雑誌は別として、全巻揃っている雑誌は、そう多くあるものではない、ということがあった。明治から昭和戦前期にかけて発刊された雑誌になると特にそうだし、沖縄で発刊されていた雑誌ということになると、さらに、その揃いを手に取ることは困難になっていくことを身に染みて知らされていた。
たぶん、そのようなことで、私は、当時、欠号のあることを、仕方がないものとして、処理してしまったに違いないのである。
私が欠号だとしていたのがあったということは嬉しかった。久し振りに、欠号だとして一蹴していた雑誌に対面したことで、その部分についての書き直し、あるいは補筆をする必要があると思い、初出に手を入れようとしたのだが、思い直して止めることにした。理由は、いろいろあるが、一つには、所在しないということを、信じてはいけないという証拠を示すものとして。同じ事だが、所在しないと思っていたものが、数年後には出てくることもあることから、その確認をおこたってはいけないといったことを、ふりかえらせてくれるものとして、といったことになろう。
本書は、大切な指摘を受けてまとめたものである。本書に収めた他の二編に関しても、雑誌の所在等その他について、当時は欠号だったもので、今では揃って、別の資料が見られるといったように、幾つかの改訂を必要とする箇所がありそうだが、今回は、文章を適切なかたちに改めるだけにして、ほぼ初出のままにした。
尚、戦前・戦中期の表現には、適切ではない言葉遣いが見られるが、それも、大切な資料の一つだということで、そのまま使用した。
二〇一四年一二月
版元から一言
本書の表紙画は昭和15年創刊の『月刊文化沖縄』創刊号の表紙画で金城安太郎画の「琉球の姫」。
上記内容は本書刊行時のものです。