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恋するしまうた 恨みのしまうた 仲宗根幸市(著/文) - ボーダーインク
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恋するしまうた 恨みのしまうた (コイスルシマウタ ウラミノシマウタ)

新書
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新書判
並製
定価 900円+税
ISBN
978-4-89982-162-5   COPY
ISBN 13
9784899821625   COPY
ISBN 10h
4-89982-162-X   COPY
ISBN 10
489982162X   COPY
出版者記号
89982   COPY
Cコード
C0273  
0:一般 2:新書 73:音楽・舞踊
出版社在庫情報
不明
初版年月日
2009年7月
書店発売日
登録日
2010年2月18日
最終更新日
2011年1月21日
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紹介

〈しまうた〉(民謡)の採集と解明は推理ドラマにも似ている。なぜなら、あるテーマを追いかけ、関連ある情報、資料、証言を集め、一つひとつ積み上げながら謎を解いていくからである。本書は、琉球弧のしまうた探求者である著者が、現地におもむき知り得た様々の謎の解明を名調子でまとめたものである。

目次

沖縄・離島編

旅する《国頭サバクイ》
  「なご山」の真実に出会う ヨンシー踊り 芸能は流転し変容する
   木やりのドラマ
恋する《ヨーテー節》
    歌マジムンの島  恋歌遊行  恋愛詩点景  浜辺のうたげ
緊張感漂う《むんじゅる節》 粟国島
     粟がなしの島 歌がたり  海を渡った名歌
壮大な島直し《シマノーシ》    渡名喜島
      渡名喜紀行  壮大な神々のドラマ
ラスト・チョンダラーの行方  さすらいの芸能
    最後のチョンダラー芸人・クガニヤマー 首里からやんばるへ
    クガニヤマー翁と豊年祭 さすらいの芸人 チョンダラー考 

奄美編
恨みの断崖   《山と与路節》 与路島 
    流刑の島の記憶  間切分け 
世にも哀しい《かんつめ節》物語 奄美大島
    悲運のかんつめ 凄惨な死 歌と物語
怪談《いまじょう小》  奄美大島
    いま小伝説のタブー  呪いと逆さ竹  閉ざされたシマ
悲歌《うらとみ》、あるいは《むちゃ加那》物語  奄美大島
    さまざまな伝承  歌が先か、物語が先か  骨格はいかにつくられたか
漂泊感溢れる島じまへの旅
     《与論小唄》「十九の春」のルーツ  《犬田布嶺節》 沖永良部島
     
糸満売りの真実   与論島
     「誠打ちじゃしょり」 イチマンウイ(糸満売り) エーマウイされた同級生

前書きなど

しまうた(民謡)の採集と解明は推理ドラマにも似ている。なぜなら、あるテーマを追いかけ、関連ある情報、資料、証言を集め、一つひとつ積み上げながら謎を解いていくからである。琉球弧のしまうたは多彩である。くらしの中で展開する歓びと悲しみの歌たちは、まさしく庶民の生活真意を反映している。
 私は〈しまうたの探求者〉として、長年しまうたが連なる島々、琉球弧の島々に渡り、数々のしまうたの謎を追い続けてきた。
 例えば――
「国頭サバクイ」は万人を奮い起こす沖縄の代表的木やり歌であり、踊りを伴う民俗芸能である。発祥は、国頭村奥間。ところが、首里王府へ献上する木材の伐採地が「なごー(なご)山」と発音することから、この歌や芸能の発祥地を「名護」とする主張が、沖縄芸能界では長く支持されていたのである。当然奥間の人々や同地と交流してきた人たちからも疑問の声が挙がっていたのである。私は、奥間を訪れ、「国頭サバクイ」の謎の解明を目指した。そしてこの芸能が山原に留まらず、海を越えて大きな広がりを見せていることを知ったのである。
 またある時は――
 およそ四〇〇年前、日本(ヤマト)からやってきたチョンダラー(京太郎)なる遊行芸人たちは、社会の底辺で呻吟しながら差別や侮蔑に耐え、念仏を唱え、現世の苦しみを浄化させてきた。彼らは首里城下のアンニャムラ(現首里久場川町の一角)を拠点とし島々を行脚したという。私は、「最後のチョンダラー芸人」と言われた〝クガニヤマー〟の遺族を捜し出し、聞き取り調査をした。その話から非凡なクガニマヤーの活躍が浮かび上がってきた。
 他にも沖縄島北部の羽地内海で花開いた恋の歌「ヨーテー節」、粟国島がルーツの舞踊としても有名な「むんじゅる節」、渡名喜島の一大行事「シマノーシ」で歌われる壮大な神歌……。沖縄の島々には数多くのしまうたとそれにまつわる謎がある。
 私のしまうた探求は、奄美諸島にも及んだ。
 道の島・奄美は、物語歌が圧倒的に多い。物語歌とは叙情歌と物語が一体となって歌われるものである。抒情歌といっても自分自身の悲しみや哀れさを歌っているのではなく、同じ社会の、ある人物の悲しみや哀れさを歌っている。だから半叙情歌と呼んだ方がいいだろう。悲運の死を遂げた女性を歌った「かんつめ節」でも、「かんつめ姉ぐゎが言うしゃる事や(かんつめ姉が言うことには)」と、客観的叙述で表現している。この歌は夜は歌わないのが習わし。奄美の夜は魔物に襲われそうで怖い。しかし闇夜は想像力を豊かにする。ましてや陰惨なかんつめの歌や「いまじょう小」の「呪いと逆さ竹」のような怪談ものは、身の毛がよだつほどである。
 本書は、しまうたを探求するなかで現地におもむき知りえた様々の謎の解明をまとめたものである。しまうたは、黒潮の流れにのり、島々を旅をするかのように伝播する。したがって、しまうた探求者もまた旅を続けるのである。

版元から一言

 【ボーダー新書の発行について】 
このたびボーダーインクでは、新書判シリーズ「ボーダー新書」を発行いたします。2009年7月に第一弾として、過去に好評をいただいた書籍の復刻版『名護親方・程順則の〈琉球いろは歌〉』(安田和男著)、しまうたの謎を解明するために旅をする『恋するしまうた 恨みのしまうた』(仲宗根幸市著)を発行いたします。

【本シリーズの特徴】
 歴史・文化・社会・言語など、沖縄に関する幅広いテーマについて、専門的な内容を、誰でもわかりやすく楽しめるように企画しました。多彩な執筆者をラインナップし、手軽に読めるコンパクトなサイズ、手に取りやすい価格を設定しています。また、過去に小社から発行された書籍で好評だった書籍の復刻・再版も予定しています。
 シリーズ統一となるジャケットのデザインは「ゴーヤー」をイメージした柄で、デザインは「琉球ぴらす」によるものです。

【第Ⅰ期】
『名護親方・程順則の〈琉球いろは歌〉』(安田和男)★
『恋するしまうた 恨みのしまうた』(仲宗根幸市)★
『沖縄のヤギ〈ヒージャー〉文化誌』(平川宗隆)
『これからの沖縄自治』(島袋純)
『しまうた名盤・珍盤物語』(小浜司)
『うちなー疾風怒濤人物伝』(ボーダーインク編)
『ニュー沖縄シネマパラダイス』(當間早志)
『沖縄本礼賛』(平山鉄太郎)
『壺屋焼入門』(倉成多朗)
 〈以下続刊予定〉★印は既刊、タイトルは仮題含む

著者プロフィール

仲宗根幸市  (ナカソネコウイチ)  (著/文

1941年ラサ島(現沖大東島)に生まれる。今帰仁村育ち。沖縄大学法学科中退後、出版編集記者を経てフリーランスになる。沖縄の本土復帰(1972年)ごろ、琉球弧の「しまうた」(民謡)と祭り、民俗芸能の調査研究を志し、1974年「しまうた同好会」を結成。以後、しまうた調査研究執筆活動、ラジオのパーソナリティ、琉球弧規模のしまうた祭典などを数多くてがける。現在は、琉球弧歌謡文化の会主宰。

上記内容は本書刊行時のものです。